「英国」と「香港」の規制整備の状況 |暗号資産分野の世界的なハブを目指す
2023年08月07日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- 英国の金融サービス国家としての取り組み
- 1)金融サービス業は、英国の基幹産業であり、国際金融センターとしての地位を確立している
- 2)英国はFinTech産業の振興を国策とし、多様な施策・環境整備を実施。ユニコーン企業も誕生し、世界でトップクラスのスタートアップ・エコシステムが形成されている。
- 3)EU離脱後、金融サービス業の優位性維持のため規制緩和や施策を打ち出す
- 英国の暗号資産分野に対する取り組み
- 1)ビジネス環境の改善・企業活動の円滑化のため、規制整備が進行中
- 2)健全な市場環境の構築を目指し、金融犯罪の防止対策の徹底と消費者保護の新規則が成立
- 香港の金融サービス国家としての取り組み
- 1)金融サービス業は、香港の基幹産業であり、国際金融センターとしての地位は依然として高い
- 2)香港政府はFinTech分野での発展により立て直しを図るが、国際的な評価は低迷
- 3)政治的リスクにより、国際金融センターとしての地位の低下が懸念される。人材流出への対策として、海外企業誘致のため大規模な予算を投入する。
- 香港の暗号資産分野に対する取り組み
- 1)政府主導の取り組みが本格化、暗号資産分野の発展を目指す
- 2)2023年、個人投資家向け販売を解禁へ
- 総括
- 出所・補足
前提
英国と香港は、これまで国際金融センターとしての地位を確立してきました。しかし、近年は英国はEUからの離脱、香港においては国家安全維持法の施行など、政治的な変化が起きています。こうした変化は、国際金融センターとしての地位を脅かし、両国は早急な対策を必要としています。
英国と香港は、新たな成長産業として暗号資産分野を重要視しています。2022年には、両国は暗号資産分野の発展を国家戦略と位置付け、世界的なハブになることを方針に掲げました。
本レポートでは、はじめに、英国と香港が暗号資産分野の発展を国策とした背景を探るため、両国の金融サービス国家としての取り組みと発展状況を確認します。次に、暗号資産分野に対する規制整備の内容について解説します。
[Executive Summary]
- 英国は金融サービス業が基幹産業であり、国際金融センターとしての地位を確立している。FinTech産業の振興を国策として10年以上が経ち、ユニコーン企業が誕生するなどFinTech産業は成長。EU離脱後は、金融サービス国家の優位性が脅かされ、銀行・証券・保険分野での大幅な規制緩和策を進める。また、FinTech分野の発展のために、暗号資産分野を重要な成長分野と位置付ける。
- 2022年4月、英国は暗号資産技術と投資の世界的なハブになることを国家戦略とした。現在、ビジネス環境の改善と健全な市場環境の構築を目指して、規制の法制化、マネロン規制の徹底、消費者保護の新規則の制定など、規制整備が進行中。
- 香港も金融サービス業が基幹産業であり、国際金融センターとしての地位は依然高い。政府はFinTech産業の発展を目指し環境整備を行ってきたが、国際的な評価は低迷。政治的な変容により外国企業や人材が大量に流出しており、政府は海外企業を誘致するために巨額資金の投入を決定した。
- 2022年10月、香港は暗号資産分野で世界的なハブになることを国家戦略とし、エコシステムの構築を目指す。現在、免許制度の導入など、規制整備が進行中。2023年6月、一定の制約条件を設けつつ、個人投資家向け販売を解禁させた。
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