米国規制の最新事情(2023年前期)
2023年06月14日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- ホワイトハウス(バイデン政権・民主党)
- 1)経済年次報告書にて、暗号資産が「社会的利益をもたらしていない」と批判(3月20日)
- 2)課税率30%のマイナーへの税制導入は否決されたが、バイデン政権は暗号資産に対する厳しい課税を目指す
- 3)バイデン政権、議会に対して暗号資産の規制不備に対処するよう要求(1月27日)
- 連邦規制当局の体制
- 連邦銀行監督当局
- 1)FRB、OCC、FDICの共同声明(1月3日):銀行の暗号資産関連業務への懸念と規制強化の方針を示す
- 2)FRB、連邦準備法の解釈を通じて、州法銀行も規制強化へ(1月27日)
- 3)FRBがCustodia Bankのマスターアカウント取得申請を却下(1月27日):暗号資産関連事業者の銀行セクター参入を阻止
- 4)FRB、OCC、FDICの共同声明(2月23日):銀行の暗号資産関連事業者向け業務を警戒
- 5)FDIC、破綻銀行に関する調査報告書を公表(3月28日):暗号資産市場の混乱が銀行に波及したと結論付け、本格的な規制強化を宣言
- 証券取引委員会(SEC)
- 1)暗号資産の多くは証券に該当するとして、証券法に基づいた規制を推進
- 2)2023年以降もSECによる訴訟件数は増加傾向、市場への影響が大きい訴訟案件も続出
- 3)現行規則の改正により規制強化を目指す
- 議会
- 1)ステーブルコイン規制:法案が両党から提出されるが、発行者の承認要件について一致せず。民主党はFRBによる厳格な規制適用を提案。
- 2)証券と商品を巡る議論:共和党は法案を提出、民主党は厳しい規制を求めSECを規制機関として推す
- 総括
- 1)無法地帯から規制整備下での健全な発展が求められるフェーズへ移行
- 2)国際協調の進展が米国の規制強化を後押し
- 出所・補足
前提
2022年は数多くの暗号資産事業会社が破綻し、さらに2023年には米国内で銀行の破綻が相次いで発生しました。こうした状況を受けて、バイデン政権や規制当局は暗号資産に対してより厳しい方針を採用し始めています。
証券取引委員会(SEC)は、2023年6月5日には世界最大規模の暗号資産取引所のBinanceを、さらに翌日の6日には米国最大規模のCoinbaseを連邦証券法の違反を理由に提訴しました。消費者保護の観点から規制強化の動きが加速しています。
しかし、米国の暗号資産規制の法整備に関しては、他国と比べて進展が遅れています。その結果、米国に本拠地を置く暗号資産事業会社からは海外への移転を示唆する発言がなされるなど、法整備を求める業界と議会との駆け引きが見受けられます。このような背景もあり、議会では法整備の緊急性を訴える議員たちによって協議が進行中です。
本レポートでは、2023年前半におけるホワイトハウス、連邦規制当局、議会の取り組みについて詳しく解説します。
[Executive Summary]
ホワイトハウスは、2023年の大統領経済報告書で暗号資産に対して否定的な姿勢を明確に示し、バイデン大統領自身も厳しい見解を述べている。新たな税制導入の提案や規制の厳格化など、暗号資産に関する政策方針を明らかにしている。
FRBなど連邦銀行監督当局は、今年に入ってから銀行の暗号資産活動をより厳重な監視対象としている。米国内の銀行破綻は、暗号資産への過度なエクスポージャーが一因とされ、監督・規制の強化に本格的に取り組む方針が示されている。
FTXの破綻を契機に、SECは監視と執行の強化に取り組んでいる。ステーキングからカストディ規則改正案まで、暗号資産事業会社への対策・執行措置が進展中。SECが連邦証券法の違反を理由に提起した訴訟件数は、2023年6月時点で前年度の半数を超えている。
下院議会では、法整備の緊急性を訴える議員たちの呼びかけにより協議が進行中。主なテーマはステーブルコイン規制と暗号資産の分類・管轄当局に関する規制。民主党は規制の強化と厳格な法整備を支持する傾向にあるが、共和党はより柔軟な法整備を支持しており、両党間で法整備に対する見解の差異が見られる。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。