このレポートでは、The Merge後のEthereumにおけるMEVを前提に、MEV-Boostを利用する場合の利益獲得手段の現状解明と、集権化と検閲の解決策の方向性を執筆時点の懸念事項や展望をもとに解説します。MEV(Maximal Extractable Value)とは、保留中のトランザクションを分析し、バリデーター（またはボット）が最大化して抽出できる利益のことを指します。

MEVの概要については、以下のレポートで詳細に解説されています。前提として一読いただくことを推奨いたします。なお、レポートで解説されているMEVは”Miner” Extractable Valueであり、抽出できる価値を最大化することに着目しているものと抽出する主体に着目したものとで厳密には異なる概念ですが、同種の問題を扱っています。
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MEVによって抽出される利益の合計は着実にその規模を拡大しており、執筆時点では累計抽出金額は約6億8,900万ドル超であり、直近30日間ではおよそ200万ドルが抽出されています。

このように産業が拡大している背景には、The Merge以降、ブロック報酬が80％以上減少されることになった影響から、バリデーター収益全体の中でもMEVが大きな割合を占め始めていることがあります。

本レポートでは以下のような問いをもとに論を展開します。

以上の観点から、MEVにおける利益獲得手段の解明と集権化と検閲の解決策の方向性について解説します。

MEVにおける論点では様々な主体が登場し、文脈上で解説がなされると説明が冗長となり混乱しやすいため、あらかじめキーワードを6つ解説します。