イーサリアムは、暗号資産(仮想通貨)の世界でビットコインに次ぐ大きな経済圏を形成し、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)、DAO(分散型自律組織)といった革新的なアプリケーションの基盤となっています。しかし、この巨大なエコシステムを支える根幹技術、すなわちコアプロトコルや開発ツール、研究といった要素は、誰のものでもなく、誰もが利用できる「公共財」としての性質を持っています。この公共財の持続的な発展なくして、イーサリアムの未来はありません。本稿では、GitcoinのSejal Rekhan氏が提案した、この公共財への資金調達の持続可能性を高めるための段階的なロードマップ「A Roadmap for Funding Ethereum’s Open Source Infrastructure」について、その内容をわかりやすく解説し、イーサリアムが直面する課題と未来への展望を探ります。
イーサリアムの基盤技術が「公共財」であるという認識は、その開発と維持に対するアプローチを根本から問い直すものです。しかし、イーサリアムの共同創設者であるVitalik Buterin氏がブログ「We should talk less about public goods funding and more about open source funding」にて指摘するように、「公共財」という言葉は、しばしばその定義が曖昧なまま使われがちです。例えば、政府が提供するサービスがすべて公共財であるかのように誤解されることがあります。このような定義の曖昧さは、資金調達に関する議論を不必要に複雑にし、真に価値のあるオープンソースプロジェクトへの支援が適切に行われない一因となり得ます。Rekhan氏の提案は、この「公共財」の範囲をイーサリアムエコシステムにおいてより具体的に捉え、支援対象を明確化しようとする試みとしても重要な意味を持ちます。この公共財の概念を正しく理解することが、なぜRekhan氏のような新たな資金調達の仕組みが必要とされているのかを把握する上での出発点となります。