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分散型グリッドにおけるコミュニティスケール・バッテリーの可能性

2021年10月28日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • コミュニティスケール・バッテリーの概要
    • どのような課題があるか

前提

本レポートでは分散型グリッドにおけるコミュニティスケール・バッテリーの可能性について概説します。
コミュニティスケール・バッテリーとは最大5MWの電力容量をもつ蓄電池です。一般的な家庭用蓄電池(1世帯対応)の容量が5kW~10kw程度ですから、およそ50~100世帯に対応する地域単位で共有する蓄電池だと捉えると良いでしょう。
ブロックチェーンやIoTを活用した分散型グリッドの探索は我が国においても、政府による地球温暖化対策推進法の改正、グリーン成長戦略の策定を背景にしながら2050年の脱炭素化社会の実現を目標に進められています。
この分野での国内事例としてはKDDIグループによるP2P電力プラットフォームやTIS、関西電力による環境価値の移転管理システムの実証実験が挙げられます。例えば、KDDIグループのP2P電力プラットフォームでは環境価値トークンの発行・管理、TISと関西電力による環境価値の移転管理システムではEV(電気自動車)を介してエネルギーを移転させる実証が行われています。
これら国内の動向は卒FITの新たな需要創出、災害対策(地域エネルギーのレジリエンス向上)、脱炭素社会の実現という言葉を背後に据えた取り組みであり、2022年から始まる配電事業制度の実施を見据えたスキーム探索の事例とも捉えられます。
※1995年から続く電力システム自由化は「発電」に始まり、消費者へ販売する「小売」部門の自由化、2020年には「発送電分離(発電事業者による送配電事業及び小売事業の参入を原則禁止)」とつづき、2021年からは送配電網のうち「配電網」の運用ライセンスが新規参入事業者に与えられることになります。
※送電網は発電所から変電所まで、配電網は変電所から企業や家庭に電気を送るネットワークです。
この配電事業制度は「電力の安定供給」、言い換えると「災害対策」が主に期待されている点であり、停電時に配電網を切り離してマイクログリッドとして運用可能にすることを目的としています。ここが主な目的ではありますが、これは結果として地域における電力の地産地消の実現を意味し、それ故に地域のまちづくりとも関連する取り組みに発展する可能性もあります。
このようなマイクログリッドの構築を巡っては、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーが課題として抱えるダックカーブ現象(供給と需要される時間帯のギャップに起因)対策として蓄電池を用いてピークシフトさせることで電力供給と需要のギャップを抑えようという考え方があります。
その中で今後普及が見込まれるEVや家庭用蓄電池を蓄電池として用いることは一案としてありますが、それだけで十分な電力ストレージとなり得るのかは要検討する必要はあり、加えて太陽光パネルやエネルギーを貯蔵するためのEV、家庭用バッテリーを持たない、言い換えると「太陽光を持たざる者」がマイクログリットの恩恵を得難くなる懸念もあり、公共財としてグリッドを捉えるのであれば「太陽光を持つものと持たざる者」で不公平が生じないように全てのエネルギー利用者を対象するような分散型グリッドの仕組みを構築する必要があるのではないかと筆者は感じます。
今回のレポートではEVや家庭用バッテリーのような私有財ではなく、より公共財としての性格が強いコミュニティスケール・バッテリーを取り上げ、執筆時点で期待されていること、現状の課題について概説します。
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※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。