中国による暗号資産規制がマイニング業界に与えた影響

前提

5月下旬に中国当局はビットコインのマイニングおよび取引を取り締まる計画について議論を開始し、その後規制についての声明を発表しました。
ビットコインのマイニングシェアは中国にて推定50~70%が有しており、今回の中国当局の発表を受けてネットワークのハッシュパワーは5月3日頃に付けた最大値である191EH/sから、6月21日頃には88EH/sの水準まで下がりました。実に約53%のハッシュパワーが消えたことになります。
これらは中国のマイナーが一斉にASICマシンの電源を落としたことがこの要因になります。しかし、これらによる影響としてはビットコインネットワークのセキュリティが一時的に弱くなったことだけではありません。
その他の影響としては、マイニングプールのシェアが大きく変わり、中古市場へASICマシンが大量に供給されたことによるASIC価格の大幅な下落、カントリーリスクが僅少で安価な電気代を確保できる北米へマイナーが移転していることにより電力インフラの工事期間が延長しているなど、マイニングのエコシステムにも影響を与えています。
今まではASICマシンの製造が需要に追いつかないというセミコンダクターのボトルネックがマイナーにとっては追加投資を進めたくてもできないという環境でした。
しかし、現在は、ASICマシンを保有していても電力インフラが十分に整備されていないことから運用できないという電力インフラがボトルネックとなる環境へ中国規制以降は変化しています。
よって、シェアが半数以上を占めていた中国マイナーが他国へ移転するにはある程度の時間を要することから、減少したネットワークのハッシュパワーが回復するまでは相応の時間がかかるものと予測されています。
このレポートでは中国のマイニング規制がもたらしたマイニングエコシステムへの影響や将来のハッシュパワー推移の予測などについて解説をします。
機関投資家によるマイニング概要や北米におけるマイニングについては下記レポートをご参照ください。

中国におけるマイニング規制の流れ

5月21日、中国国務院金融安定化委員会は、劉鶴副首相が議長を務める会議で「ビットコインのマイニングと取引を取り締まる計画」について議論しました。当局がまだ仮想通貨マイニングに対する具体的な方針を発表していない段階で、中国の大手マイナーの一部は、北米にマイニング拠点を移す準備を行っていました。
出展:中国政府Webサイト(http://www.gov.cn/xinwen/2021-05/21/content_5610192.htm)
その後、マイニングプールの BTC.TOP と HashCow、取引所であるHuobiが提供しているマイニングプールのサービス Huobi Mall(火幣礦機商城)において、国務院の委員会の声明を受けて、中国での事業を停止すると発表しました。
5月18日には内モンゴル自治区の発展改革委員会が、一般人が仮想通貨マイニングをしている業者を見つけたら密告できるホットライン、電子メール、郵便のアドレスを設定したと発表。同地域政府は、電力使用量の削減を推進する中で、仮想通貨マイニングの全面禁止を検討と声明文では謳われていました。
同日、中国の金融業界3団体は、銀行や決済機関が仮想通貨関連サービスの提供を禁止する2017年の禁止令を改めて発表しました。この発表は国務院金融安定化委員会の会議の前に行われたことから、一部からはFUD扱いされていましたが、振替ってみると当局が事前に金融機関などへ情報を共有していたものと思われます。
その後、動きの速かったマイナーはUSDTやBTCをOTC市場で売却したことで、暗号通貨市場全体が下落に転じた切っ掛けとなったと言われています。
当初はこれらの発表は声明だけで実行はされないと楽観的な見方が多かったですが、マイニング施設への送電が突然停止されたり、ASICマシンの強制差し押さえなどが実際に起きたという噂が広まったりしました。
それらの噂により中国でマイニングをしていたマイナーはASICマシンを売却もしくは、他国へ移転するという動きを見せました。
他国への移転先としては米国(テキサス州)かカナダ(アルバータ州)がもっとも多くなっています。これは米国・カナダは法律が整備されていることやマイニングの為に必要な電力網が構築されていることが要因であり、カザフスタンなど電気代が安価な国への移転も実際にはありますが、中国のマイナー全てを受け入れるほどの電力インフラが整っていません。
テキサス州における電力コストはキロワット/時間(KwH)あたり$0.02~$0.03程度であり、これに$0.015~$0.03程度のホスティングフィーが上乗せされて、オールインコストで$0.035~$0.06程度となっています。
対して、中国の平均電力コストは$0.084 KwHであり、テキサス州の電力コストは見劣りする水準ではないことから、北米への移転が多くなっています。
(但し、中国においては雨季では水力発電所の電力コストは$0.01であったり、電力会社などとの癒着により安価な電力での調達が可能であったようです。)

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