カーボンクレジット市場の現状とブロックチェーンベース取引の利点|シンガポールAirCarbonの事例

目次

  • 前提
  • カーボンクレジットとは
  • AirCarbon Pte.Ltd.の概要と取り組み内容
  • AirCarbonは自主的炭素市場にどのような価値提供をしているのか
  • 総論

前提

本レポートではカーボンクレジット市場の現状とブロックチェーンベースで展開されるクレジットカーボン取引プラットフォームを提供するAirCarbonを概観します。
まずそもそもカーボンクレジットとは何か、何のためにそのような制度が存在するのかという基本的な点から解説し、その後簡単にクレジットカーボン市場(自主的炭素市場を対象)の現状と課題、ブロックチェーンがどのような課題解消に用いられているのか、を順に解説していきます。

カーボンクレジットとは

カーボンクレジットとは、温室効果ガス(以下GHG:Green House Gas)の排出削減量を示す証明書であり、GHG排出削減量を証券のように価値化することで市場取引できるようにしたものです。
その必要性は端的に言えば、気候変動の進行を防ぐためにGHGの大気中濃度を抑制するためと言えます。この意味ではカーボンクレジットでなくとも、自動車に乗るのを減らすとか、節電して電力消費量を減らすなどの活動でも良いわけで、このような地道な活動の結果石油や天然ガスなどの化石燃料の消費量が減り、GHG排出量が抑制されることになります。しかし、そのような善行を広く一般に奨励するような方法を現在のソーシャルガバナンスの仕組みで実行することは難しく、主語を無駄に大きくすることはできません。なぜ難しいのかは善行を行なった主体を識別し、評価をして、その行為に対して褒賞を与えることが現状は困難だからです。ですので、識別可能な限られた主体に対して社会的に義務付ける方が現状の仕組みでは行動を規制しやすいと言えます。この点は以下のレポートで解説しています。
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ではカーボンクレジットは誰が利用するためにあるのかというとそれは主に企業や自治体などです。カーボンクレジットがどのように機能するのか、は一度横に置いておいて、なぜそれが今注目されているのかを先に説明します。
企業、自治体という限られた主体に対して社会的課題を解消する努力を社会的義務として課すことにより、GHG排出量を減らそうという動きは国内においても加速しています。一つのきっかけは2020年10月末の菅首相による「2050年までに、温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という発表でしょう。このような動向は米国、EU、中国、韓国など多くの国が同様の発表を行なっており国内外問わずに活発化しています。
出典:https://www.iif.com/Portals/1/Files/TSVCM_Report.pdf
上図表はTSVCM(Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets)のファイナルレポートから引用したものですが、ここに示されているように2020年時点での世界のCO2排出量は410億tCO2です。TSVCMが提案する削減目標は2030年に-230億tCO22050年にネットゼロを目指すというものです。
この流れを受けて活発化しているのがカーボンクレジット市場であり、McKinseyによると、カーボンクレジットの推定需要は2030年までに15倍以上増加する可能性があり、市場全体で500億ドル以上となる可能性があると予測しています。
参照:https://www.mckinsey.com/business-functions/sustainability/our-insights/a-blueprint-for-scaling-voluntary-carbon-markets-to-meet-the-climate-challenge#

カーボンクレジットはどのような役割を果たすのか

カーボンクレジットを利用する主な主体は企業や自治体であると前述しました。TSVCMが掲げるGHG排出量削減目標は全ての企業、自治体の都合に合わせて削減量を決めているというものではありませんので、どうしても目標よりも多くGHGを排出してしまう企業も出てきてしまいます。例えば航空事業や製造業、運送業のような事業形態ではどうしても避けられないGHG排出が存在するため、目標を達成することが比較的困難です。

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