【論考】DeFi領域における最適化機能の重要性増加とその構造的限界

目次

  • 前提
  • DeFi運用が誰にとっても難しい理由
  • 年内の起こりそうな構造の変化
  • レイヤーのカニバリズムは起こるか
  • 総論

前提

本レポートでは近い将来DeFi領域の特にミドルレイヤーで起こるであろう構造や性質の変化と、それに伴って考えられる上下レイヤーへの影響の性質や有無に焦点をあてた論考を行います。従来の金融領域においてはサービス提供者に課せられる大きな責任とそれに伴う監査の要求、法令の遵守と態勢の報告等の必要(ということになっている)コストのために停滞しがちな領域においてもDeFiは脱法的と批判されても仕方のないような手法とそれが許容される場の空気によって様々な試行錯誤がなされています。
そのような領域において一時的に注目を集める刹那的な出来事についての固定的な記述をどれだけ読み込んでも全体像を掴むことはおろか、その出来事についてすら満足の行く理解は得られない懸念があります。そこで次節以降では2021年中に動きがありそうな流れを線で掴むための分業構造とカニバリズムの可能性についての論考を行います。

DeFi運用が誰にとっても難しい理由

現在のDeFiは一般人が触れる代物ではないだけでなく、金融リテラシーや技術リテラシーの高い人間にとっても触りづらいものであることに異論がある方はいないと思います。常日頃からDeFi領域を観察している人間にとっても、目的に応じた最適な利用は難しくなっているのが現状です。トークンの交換であれば1inch等のアグリゲーターを介することによって、最適な交換レートを実現するルーティングを判別することが可能です。しかし、これが流動性提供やファーミング、あるいは何らかのデータの実測ということになれば、より複雑性が高くなるためにトークン交換における1inchのようなアグリゲーターは容易には利用できません。
「容易には」と書いたのは、ファーミング領域にはYearn Financeのようなアグリゲーターが存在するためです。Yearnはユーザーがデポジットしたトークンをより良い利回りで運用できるサービスを展開しており、DeFi Pulseによれば4500億円以上の資産がデポジットされています。UniswapのTVLが6000億円、Curveが7500億円、Balancerが1000億円であることを考えると、この数字が如何に大きなものであるかが実感できます。
アグリゲーターを構成するスマートコントラクトはユーザーが預けた資産を運用するため、資産を動かす必要が出てきます。例えばCurveで効率的に運用するには、ユーザーからデポジットされたLPトークンとCRVトークンを一つのアカウントに集約させ、LPトークンとCRVをいわば”マッチング”させることでファーミング効率を高め、より多くのCRVを獲得できるようにします。高い技術力を持つとされるYearnの開発チームでさえ資金流出被害に遭った過去があることからも分かる通り、アグリゲーターの運営はセキュリティ的に非常に難しいものです。
資金運用のためにあるDeFiプラットフォームを使う場合、そのプラットフォームの挙動を熟知していなければなりませんし、バージョンが変わるごとに構造も変化していきます。Uniswapのような価格帯のレンジ指定ができるものは、コードのバグや資金流出の心配がなかったとしても、価格予想が外れるとImpermanent lossの形で損失を被ることになります。価格変動のリスクを回避するために将来定期にオプション市場が盛り上がることが期待されますが、仮にオプションに潤沢な流動性があったとしても、適切なオプション価格の計算を行った上で利用しなければ期待値がマイナスの運用を行ってしまいます。

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