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論考・企業はパブリックブロックチェーンにどのように向き合うべきか

2020年06月10日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • ブロックチェーンの歴史
  • パブリックブロックチェーンが重要な役割を果たすと考えられる5つの要点
    • 1.コンソーシアムは10-30社とネットワークが接続されることに対して、パブリックでは無制限である
    • 2.スケーラビリティとプライバシー機能は進化し続ける
    • 3.イノベーションの交換が起こりやすい・連続的にイノベーションが起きるサイクルがある
    • 4.様々なプロトコルがモジュールとして(ネットワーク化された状態で)利用できる
    • 5.パブリックブロックチェーン上で流動的な金融マーケットが形成される
  • 企業はパブリックブロックチェーンにどのように向き合うべきか
  • 総論

前提

本レポートでは、企業はパブリックブロックチェーンにどのように向き合うべきか、について筆者の2020年時点での考えを述べます。
企業によるブロックチェーンの活用は、ワークフロー効率化・新しい金融サービスの開発・などの分野で進歩のスピードは早いです。
ブロックチェーンにはその類型として、コンソーシアムブロックチェーン(プライベートブロックチェーン)、パブリックブロックチェーンがありますが、企業利用の多くは前者を基盤とします。  
一方、パブリックブロックチェーンは、企業による利用は現時点では事例数は限定的でありながらも、個人開発やスタートアップの間では極めて活発で、分散型金融と呼ばれる分野では発展が目覚ましいです。分散型金融は、画期的な金融アプリケーションを多数生み出しており、既に数千億円程度の金額はトランザクションされていながらも、その利用は現状では暗号資産ユーザーやギーク層に留まります。
しかしながら、現状は基盤としての利用は限定的であるパブリックブロックチェーンも利用事例は既に存在しますし、今後その利用はますます増えるだろうと予測するEYのような企業も存在します。
関連レポート:多くの企業が将来はパブリックブロックチェーンを使用すると考えるEYの論考
https://hashhub-research.com/articles/2020-01-06-ey-public-chain
関連レポート:企業によるパブリックブロックチェーンの利用、またはコンソーシアムチェーンと互換をすることに向けた業界動向
https://hashhub-research.com/articles/2019-09-12-public-blockchain-usecase-by-enterprise
筆者もまた企業によるパブリックブロックチェーンの利用は増えるだろうと考えています。本レポートでは、その理由を述べます。

ブロックチェーンの歴史

最初のブロックチェーンは2009年に提案されたBitcoinです。そのホワイトペーパーにはブロックチェーンという名称はなかったものの、これが今ブロックチェーンと呼ばれるものの元となるアイデアです。
Bitcoinは送金をするネットワークでしたが、登場から数年で、対検閲性や非中央集権性を備えた特性は、登記システムや証書管理などにも有効であることは多くの人が気付いていました。Bitcoinのブロックチェーン上でそれらを実現する取り組みもあったものの、2020年現在、それらの多くは上手くいっていません。
Bitcoinのブロックチェーンはコインの支払いに特化したUTXOモデルであったことや、分散性を最大限に高めるためにブロックサイズが小さい特性などが理由で他の用途に使いづらい背景がありました。これらをより複雑なロジックも実行出来、プログラム自体もデプロイ出来るブロックチェーンというアイデアがEthereumとして2013年に提案され、最初の提案から2年をかけてローンチされました。このEthereumはパブリックブロックチェーンとして今も運用されています。
同時期の2015年に、これらブロックチェーンを誰でもアクセス出来るパブリックではなく、事前に許可された企業のプライベート環境で実行するための基盤として、Hyperledger FabricがLinux Foundationによって提案されます。このような基盤が求められた背景としては、パブリックブロックチェーンの基盤では、プライバシー・アイデンティティ管理・メッセージング・パフォーマンスなどの要件が満たせなかったことが挙げられます。また、当初のEthereumにおいては、その性能や開発環境が今より優れないことや、The DAOのハッキング事件によってブロックチェーンをロールバックした過去などがあり、これらがよりプライベート基盤の需要を促進しました。
Hyperledger Fabric以降も、JP MorganがパブリックブロックチェーンのEthereumをベースにして、それをプライベート基盤として公開したQuorumや、金融機関をはじめとした企業のニーズを組取り設計されたR3のCordaなどが存在します。これらHyperledger Fabric・Quorum・Cordaは企業のブロックチェーンプロジェクトの主要基盤として、様々なプロジェクトで利用されています。
一方でパブリック環境でのEthereumは、独自のエコシステムを築き拡大の一途を経ているものの、企業利用のニーズは今のところ満たしきれていません。

パブリックブロックチェーンが重要な役割を果たすと考えられる5つの要点

筆者は、将来、企業によるパブリックブロックチェーンの利用は増えるだろうと考えていますが、その理由を5つに整理します。
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※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。