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電力系のコンソーシアムチェーン「Energy Web Chain」の概要

2019年10月24日

目次

  • 電力×ブロックチェーンの前提
  • Energy Web Foundationの概要
  • Energy Web Chainの概要
  • Energy Web Tokenの概要
  • 総論

電力×ブロックチェーンの前提

本レポートでは、電力系のコンソーシアムチェーン「Energy Web Chain」の概要を解説します。
マクロの流れとして「大手電力会社での発電→一般消費者への供給」から「生産消費者(プロシューマ)間での電力融通」や低炭素化のトレンドがあり、俯瞰的に見ると電力の一極集中制度から分散融通性への流れと見ることが可能です。ブロックチェーンの応用はまず第一に金融領域で発生し、次いでサプライチェーンや電力などのブロックチェーンと相性の良い分野での応用が模索されているため、後述するように電力×ブロックチェーンのプロジェクト数は比較的多く、電力会社とベンチャー企業の合同での実証実験も実施されています。
電力×ブロックチェーンの応用を考えたときに、「電力の余力をマイニングにまわして、Bitcoin等のマイニングを行うことで、電力を資産性のあるトークンに変換する」という手法も考えられますが、暗号通貨のマイニングは既に高度に産業化されており、ハードウェアの購入費やメンテナンスコストもかかるため一般消費者が片手間に手を出す類のものではありません。
故に、本レポートでは「ブロックチェーンとトークンを用いて、融通した電力量を記録する」仕組みを対象にします。この用途で主にブロックチェーンに期待されているのは、「中央集権的な組織による仲介を必要としない、ブロックチェーンベースのコミュニケーションが可能になること」や「矛盾を含むデータが併存せずに単一の台帳を保持できること」であり、「支払いコストやデバイス同士のコミュニケーションコストが削減できること」です。これは、電力会社のみならずプロシューマによっても電力が生産され、余剰電力が周辺世帯に供給される環境において、これらの機能が要求されるためです。
既に実施されているプロジェクトは電力の生産と供給の形が変わり、分散型エネルギー源の利用が実現することを見越しての実証実験(トークンでの電力生産の記録やP2Pでの売買の可能性)が多いです。
この分野におけるブロックチェーンの応用の期待度は高いものの、ブロックチェーンを導入すれば、即座に単一台帳の保管と更新やP2P取引が実現できるわけではなく、実用化においては、コンソーシアムチェーン形成時の協会の作り方やユーザービリティを損なわないUI/UXの導入など様々な点を検討する必要があります。また発電量や供給量のようなブロックチェーンの外側にあるデータをどのように改竄なしにチェーンの内部に持ってくるか、P2P取引の利点である電力の過不足のP2Pネットワークでの調整をいかに実現するか等は別途解決する必要があります。

Energy Web Foundationの概要

Energy Web Foundation(以下EWF)はエネルギーセクターにおいてブロックチェーンを活用することを狙いとした国際組織で、米国のエネルギー調査団体「Rocky Mountain InstituteWikipedia)」とオーストリア(本部はベルリン)の「Grid SingularityCrunchbase)」によって設立されました。ロッキーマウンテン研究所を設立したエイモリー・B・ロビンスはエネルギー効率や代替エネルギーの分野で長年精力的に活動している人物で、『新しい火の創造』、『Winning the Oil Endgame』、『Natural Capitalism』など多数の著書があります。環境保護とビジネスの両立、分散型エネルギーの推進などを行ってきた人物で、Energy Webの活動はその延長線にあるものでしょう。
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