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Ethereumエコシステムのインターオペラビリティの現状は? Across Protocolを中心に(クロスチェーンインテント)

2025年03月06日
リサーチメモ(Lawrence)
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • Across Protocolの詳細
    • 技術的特徴: インテント駆動型アーキテクチャ
    • Across Protocolが解消する課題とソリューション
  • Across ProtocolとUniswapの関連性
    • UniswapによるAcrossの統合: クロスチェーンスワップへの第一歩
  • 主要なインターオペラビリティプロトコルの概要と比較
    • プロトコル比較まとめ
  • DeFiにおけるユースケースとユーザー価値
  • 総括
  • 参考文献

※免責事項:このレポートは生成AIで作成されており、査読は行われていますが必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。

ブロックチェーンVCのParadigmが主導するラウンドで、Across Protocolが4,100万ドルの資金調達をACXトークンで行いました。このラウンドには、Bein Capital、Coinbase Ventures、Multicoin Capital、エンジェル投資にSina Habinianが参加しています。
Across Protocolは、主にEthereum経済圏でのインターオペラビリティ、具体的にはインテントベースドな取引を実現するクロスチェーンプロトコルです。また、Uniswapとの提携により業界を技術的にサポートしています。
このプロトコルは、今後のDeFi経済圏にどのような影響を及ぼすのでしょうか?また、具体的な仕組みはどうなっているのでしょうか?
このレポートでは、それらの点について調査し、投資家(ユーザー)にとっての価値や、DeFiエコシステムへの影響について分析を行います。

Across Protocolの詳細

技術的特徴: インテント駆動型アーキテクチャ

Across Protocolは「クロスチェーン・インテント」と呼ばれる新しい設計概念を採用しています。ユーザーは複数チェーンにまたがる取引を行う際、実行手順ではなく望む最終結果(インテント)を指定するだけで済みます。

https://docs.across.to/introduction/what-is-across


具体的には、Acrossは以下の3層からなるモジュラー構造でインテントを処理します。

https://docs.across.to/introduction/what-is-across


  1. RFQ(Request for Quote)機構: ユーザーが達成したい結果をオーダーとして提示します
  2. 分散型リレーヤネットワーク: 複数のリレーヤ(中継者)がユーザーの注文に対し見積もり(Quote)を提示し、最速かつ低コストで注文を充足しようと競争します
  3. セトルメント(決済)層: リレーヤがユーザーの要求を正しく実行したことを後から検証し、預けられていたユーザー資金をリレーヤへ支払う決済機構です
こうした設計により、Acrossは従来のメッセージパッシング型ブリッジ(チェーン間で直接メッセージを送る方式)の課題を克服しています。一般にブリッジは「安さ・速さ・安全性」を同時に満たすことが難しいと言われますが、Acrossはリレーヤによる即時埋め合わせと遅延決済を組み合わせることでそれを実現しました。

https://docs.across.to/concepts/intents-architecture-in-across


技術面で特筆すべきは、Acrossがカノニカル資産(各チェーンにおける本来の資産)を重視している点です。ブリッジによっては、預かった資産に対する「IOUトークン(包装資産)」を発行し別チェーンで流通させるものもありますが、その方式は発行元のメッセージ安全性に依存しリスクが高まります。Acrossは流動性プールとリレーヤによる直接的な資金移動を採用し、可能な限り各チェーンのネイティブ資産をそのままユーザーに渡す設計です。

https://docs.across.to/concepts/canonical-asset-maximalism


例えばETHやUSDCであれば、Across経由で移動しても受取先では同じETHやUSDC(ネイティブ)となり、ラップされた独自トークンに変換されることはありません。これにより追加の信頼コストを発生させず、安全性と利便性を両立しています。

Across Protocolが解消する課題とソリューション

EVMチェーンは近年、イーサリアムL1に加えて多数のL2(Arbitrum、Optimismなど)や他のL1(Polygon、BNBなど)が乱立し、「マルチチェーン時代」を迎えています。
その反面、ユーザー体験はチェーンごとに断片化され、資産やアプリを跨いで利用する際に煩雑なブリッジ操作が必要となる課題が生じています。Across Protocolはこの流動性とユーザーエクスペリエンスの分断という課題に対し、インテントベースのアプローチで答えを出しています。
関連レポート:Ethereumのレイヤー2のインターオペラビリティ 流動性断片化は将来的にどのように解決されるか

https://www.theblock.co/data/decentralized-finance/dex-non-custodial/dex-to-cex-spot-trade-volume


上図ではCEX(中央集権取引所)とDEX(分散型取引所)の取引高の比率をしめします。増加傾向にありますが、およそ20%程度であることから、流動性の断片化による弊害の影響でCEXよりも取引量が伸びていない現状があると考えられます。
従来のブリッジは多くが「チェーンAからチェーンBへメッセージを送る」モデルでした。しかしその場合、各プロトコルごとに信頼の前提(監視者や検証者への信頼)が異なり、最終的な確定に各チェーンのブロック最終性時間を要するため高速化にも限界があります。
Acrossは発想を転換し、メッセージ自体ではなくユーザーが望む最終結果(インテント)に焦点を当て、ユーザーが「この資産を向こうのチェーンで受け取りたい」といった意図を示すと、第三者のリレーヤが即座に代理実行するため、ユーザーはブリッジの存在を意識しません。
例えばArbitrum上のUSDCをOptimism上のUSDCに移す場合でも、一度の操作で完了し、リレーヤが数秒~数十秒で埋め合わせてくれます(小額L2間転送なら3秒程度で完了するケースも想定されています。
このように、AcrossはUXの改善開発者側の実装容易性の両面でメリットを提供する独自ソリューションと言えます。

Across ProtocolとUniswapの関連性

UniswapによるAcrossの統合: クロスチェーンスワップへの第一歩

大手DEXであるUniswapも、マルチチェーン展開に伴ってユーザーのブリッジ需要に直面していました。2024年10月、Uniswap LabsはAcross Protocolを自社製品に統合し、Uniswapインターフェース内で直接ブリッジができる機能をリリースしました。
このアップデートにより、Uniswapユーザーは別サイトのブリッジを使うことなく、Uniswapの画面上で資産を9つの対応ネットワーク間で移動できるようになりました。

https://app.uniswap.org/


対応ネットワークにはEthereumメインネット、各種L2(Arbitrum、Optimism、Baseなど)、さらには新興チェーンのZoraやBlast、そしてUniswap独自の展開予定チェーンである「Unichain」まで含まれます。

https://app.uniswap.org/


関連レポート:Unichainの概要 DeFi取引の最適化とL2インターオペラビリティにおける役割

たとえばユーザーがUniswap Wallet上で「ArbitrumのETHをOptimismにブリッジ」という操作を行うと、裏ではAcrossのRFQ機構に注文が出され、リレーヤがこれを受け付けて実行、Optimism上でETH(ネイティブ)をユーザーに届けます。
つまりUniswapはAcrossをバックエンドのブリッジエンジンとして利用している形になります。経済面では、このブリッジ機能の利用に伴い発生する手数料収入や流動性需要がAcross側に発生します。Acrossのリレーヤや流動性提供者にとって、Uniswap経由のブリッジ需要増加は収益機会の拡大につながります。実際、Acrossの公式ダッシュボードによれば累計ブリッジ量は統合発表時点で約127億ドルに達しており、Duneによれば一日に2000万~4000万ドル規模の転送が行われています。

https://dune.com/risk_labs/across-protocol-stats


両プロジェクトはさらに協業を深め、クロスチェーン取引の業界標準化にも取り組んでいます。2024年4月、Uniswap LabsとAcrossは共同でERC-7683という新しい標準規格を提案しました。

https://www.erc7683.org/


これはインテントベースのクロスチェーン注文を共通フォーマットで記述し、異なるプロトコル間で統一的にリレーヤ(フィラー)ネットワークを共有できるようにするための標準規格です。
Acrossで培われた高速ブリッジ技術とUniswapXのような高度な注文集約機構が連携し、ユーザーはより低コストで良いレートのクロスチェーンサービスを享受できるようになります。
要するに、AcrossとUniswapは単なるサービス提供者と利用者の関係を超えて、クロスチェーン・インターオペラビリティ全体の発展に向け協力し合っている状況です。その影響として、両コミュニティの結びつき強化、新規ユーザーの誘引、そして他プロジェクトも巻き込んだインターオペラビリティのエコシステム拡大が期待できます。

主要なインターオペラビリティプロトコルの概要と比較

プロトコル比較まとめ

Across Protocol・LayerZero・Axelar・Wormholeはそれぞれ異なる手法でチェーン間の橋渡しを行っています。簡単にまとめると:
  • Across Protocol: 楽観的手法 + リレーヤネットワーク。ユーザーの希望する結果(インテント)をもとにリレーヤが即時に資金移動し、後からオラクルで検証・清算する。【特徴】最速・最安クラスのブリッジ体験【弱点】最終清算にUMAオラクルの正確性・経済インセンティブへの依存。
  • LayerZero: 軽量ノード + オラクル&リレーヤ方式。二者の独立した役割によるメッセージ検証で信頼コストを削減。【特徴】汎用性が高く多くのアプリで採用【弱点】オラクルとリレーヤの2者に万一共謀があれば脆弱、構成の複雑さ。
  • Axelar: 専用PoSチェーン方式。分散バリデータネットワークがハブチェーン上でクロスチェーン要求を処理。【特徴】幅広いチェーン接続と統合開発環境、Cosmos系含めカバー【弱点】ハブチェーンへの依存、処理速度はブロックチェーンの制約を受ける。
  • Wormhole: ガーディアン多重署名方式。19名の管理者ネットワークがイベントを監視し多数決署名で承認。【特徴】非EVMチェーンも含む業界最多クラスの接続性、比較的単純構造で高速【弱点】ガーディアン集団への信頼前提、過去にハッキング事例あり。
いずれのプロトコルもブロックチェーン間の壁を低くするという目的は共通しており、セキュリティ・分散性・速度のトレードオフの中で独自の解決策を追求しています。特筆すべきは、昨今これら異なるアプローチ間での協調や標準化の動きが出ていることです。
前述のERC-7683のようなインテント標準はその一例で、将来的には異なるブリッジプロジェクト同士が互換性を持ち、例えばLayerZero経由のメッセージをAcrossのリレーヤネットワークが充当する、といった組み合わせも可能になるかもしれません。

DeFiにおけるユースケースとユーザー価値

インターオペラビリティがもたらすDeFi市場への影響としては、アービトラージ(裁定取引)が促進され価格の平衡化が進むほか、各プロジェクトは他チェーンから資本を呼び込みやすくなり、全体として資本効率の改善に繋がることが考えられます。
また、ユーザー視点では「どのチェーンでどのサービスを使うか」を意識せずに済むようになるため、UXの大幅な向上が期待できます。まるでインターネットの異なるネットワークを意識せずアプリを使えるように、ブロックチェーンの種類を意識せずDeFiサービスを使える世界に近づきます。
しかし、技術的チャレンジやセキュリティ課題も伴います。クロスチェーン環境では、一つの不備が複数チェーンに被害を波及させるリスクがあるため、各プロジェクトはこれまで以上にコード品質や監査、安全装置(フォールバック機能など)に注力する必要があります。
具体的なユースケースについては、
  • クロスチェーン資産スワップ
  • クロスチェーンレンディング
  • マルチチェーン・ステーキング
  • クロスチェーンガバナンス
  • 流動性の統合と最適配置
このようなユースケースは既に動き始めていますが、今後さらに洗練された事例が増えるでしょう。たとえば、保険プロトコルがクロスチェーンで分散プールを構築し大規模リスクに備える、ゲームが異なるチェーン上のNFTやトークンを相互利用してメタバースを形成する、クロスチェーンDEXが伝統市場に匹敵する出来高を達成する、といったシナリオも考えられます。
重要なのは、ユーザー価値(低コスト・高速・高利便性)を高めることがDeFi普及の鍵であり、インターオペラビリティ技術はまさにそれを可能にするインフラだという点です。

総括

EVM経済圏では特に、イーサリアムL1と多数のL2・サイドチェーンを如何に統合するかが焦点となっており、今回取り上げたAcross Protocolはインテント駆動というユニークなアプローチで先陣を切っています。今後も各プロトコル間の協調や標準化が進めば、ユーザーはますますチェーンの存在を意識しなくなるでしょう。
インターオペラビリティの進化はDeFiエコシステム全体の流動性拡大・ユーザー体験向上・新サービス創出につながっており、その最前線に立つAcross Protocolを中心とした動向から目が離せません。

参考文献

各種プロジェクト公式ドキュメント・ホワイトペーパー、暗号資産メディア記事、Uniswap公式ブログなどをもとに作成。

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