【論考】Polymarketは「予測のSNS」になるのか|Zora元CEO加入から読む次の一手

2026年10月06日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • なぜJacob氏なのか|Zoraがやろうとしていたこと
  • Polymarketは、すでに「半分SNS」になっている
  • 予想①「市場」が「投稿」になる|PolymarketのSNS化
  • 予想②「ポジション」が「プロフィール」になる|予測が評判になる世界
  • 予想③ Polymarketは「アプリ」より「金融プリミティブ」になる
  • 考察&総括
  • 参考文献

前提

2026年9月18日、PolymarketのShayne Coplan氏(以下、Shayne氏)は、Zora元CEOのJacob Horne氏(以下、Jacob氏)がチームに加わったと発表しました。本発表によると、Jacob氏はShayne氏とともにプロダクト開発に携わり、なかでもDeFi側の改善を担うそうです。また、発表のなかでShayne氏は、事業規模が大きくなるにつれてオンチェーンプロダクトのパフォーマンスが落ち、長年のユーザーから「米国事業に軸足を移してしまったのではないか」という不満が出ていたことにも触れています。
出典:https://x.com/shayne_coplan/status/2100645757917266236
この発表だけを見れば、今回の人事はオンチェーンプロダクトを立て直すためのテコ入れ、と見ることもできます。ただ、Jacob氏がこれまで率いてきたZoraを考えると、個人的にはもう少し先まで想像したくなります。というのも、Zoraは投稿そのものを取引可能なCoinにし、さらにプロフィールにもCreator Coinを紐づけるなど、ソーシャルと市場を同じプロダクトの中で接続する実験を続けてきたからです。そうした経験を持つJacob氏がPolymarketのプロダクトに入るのであれば、単に注文しやすくなる、動作が速くなるといった改善だけでなく、予測を見つけ、語り、共有する体験そのものが変わる可能性も考えてみたくなります。
関連レポート:
筆者はこれまで、予測市場を単なる賭けの場としてではなく、メディアや言論、さらには未来に対して意思を表明する場として捉えてきました。そこで今回は少し趣向を変えて、予測市場について考えるのではなく、Polymarketというプロダクト自体の「次の一手」を予測してみたいと思います。もちろん、Jacob氏の採用意図や今後のロードマップが公表されているわけではないため、ここから先は事実と筆者の予想を分けて考えていきます。
そうしたことを踏まえて本稿では、Jacob氏がZoraで取り組んできた「ソーシャルと市場の接続」を手がかりに、Polymarketが今後どこへ向かうのかを三つの仮説から考えます。

なぜJacob氏なのか|Zoraがやろうとしていたこと

さて、今回の人事を考えるうえで注目したいのは、Jacob氏が「Zoraの元CEO」であること以上に、そこでどんなプロダクトを作ってきたかです。
というのも、もともとZoraはNFTマーケットプレイスから出発し、その後は投稿そのものをCoinとして売買できるようにし、プロフィールにもCreator Coinを紐づけました。さらに2026年2月には、話題やトレンドへの注目を取引する「Attention Markets」をSolana上で展開しています。
ここまでを一本の線で見ると、Zoraが試してきたのは「SNSに金融機能を足す」ことより、インターネット上の「注目」そのものに価格をつけることだったと捉えられます。
出典:Zora公式ドキュメント、The Blockをもとに筆者作成
そして面白いのは、ただ売買できるようにして終わりではない点です。Zoraでは2026年4月にP&L(Profit and Loss)機能が追加され、Creator Coinやトレンド、投稿について、いつ買い、いつ売り、結果としてどれだけ利益や損失が出たのかを振り返れるようになりました。
つまり、何に注目したかだけでなく、「いつ気づいたのか」まで取引履歴として残るわけです。注目を見つけ、そこに資金を置き、あとから結果を確かめる。Zoraはこの一連の行為を、一つのプロダクトの中に収めようとしてきたと言えます。
出典:https://mkt.zora.co/blog/profit-and-loss-on-zora
だからこそ、Jacob氏のPolymarket加入を単なるDeFiプロダクトのテコ入れ人事として片づけるのは、個人的には少しもったいない気がします。Zoraがこれまで扱ってきたのは「次に何が注目されるか」であり、Polymarketが扱うのは「次に何が起きるか」です。対象こそ違いますが、どちらも人々の見方や関心を市場価格に変えるという点ではよく似ています。
そのため、Jacob氏がPolymarketに持ち込めるものがあるとすれば、DeFiの知識そのものより、人々の関心や判断をどう市場としてプロダクトに落とし込むか、その試行錯誤の経験なのではないでしょうか。

Polymarketは、すでに「半分SNS」になっている

ここまでZoraについて見てきましたが、実はPolymarketもすでに、取引だけをする場所から少しずつはみ出し始めています。なかでも象徴的なのが、2026年1月のDow Jonesとの提携です。
出典:https://x.com/Polymarket/status/2008928601182277721
この提携によって、Polymarketのリアルタイム予測データは、The Wall Street JournalやBarron’s、MarketWatchなどで利用されることになりました。つまり、市場価格は「売買するための数字」だけでなく、「世の中はこの出来事をどう見ているのか」を読むための情報としても流通し始めていると言えます。このように、Polymarketは市場を提供するだけでなく、そこで生まれた確率そのものをコンテンツとして外に届けるようになっているわけです。
さらに9月8日には、米国版Polymarketに「Squads」が加わりました。これによって、友人同士で非公開のグループを作り、市場について話したり、お互いの予測やポジションを共有したりしながら、そのまま各自のアカウントで取引できるようになりました。
これまでXやグループチャットで行われていた「この試合どうなると思う?」「自分はこっちに賭けた」といった会話を、Polymarketの中へ持ち込む機能と考えると分かりやすいでしょう。このように、最近のPolymarketでは、「予測について話す場所」と「実際にポジションを取る場所」が、ひとつに近づき始めています。
出典:https://x.com/digitdustin/status/2098856176771358758
ここで大事なのは、こうした動きがJacob氏の加入より前から始まっていたことです。なので、「Jacob氏が入ったことでPolymarketがこれからSNSになる」と見るより、すでに始まっているソーシャル化を、ここからどこまで深めるのかと考えた方が自然です。
もしこの流れがさらに進むなら、Polymarketが目指す先は、単に取引機能の充実した予測市場ではないのかもしれません。市場が投稿のように流れ、誰かのポジションがその人を知る手掛かりになり、そこで生まれた市場自体が別のアプリにも組み込まれていく。そうなれば、Polymarketは「予測を売買する場所」から、「予測を通じて世界を見て、人を知り、意見を表明する場所」へ近づいていきます。
言い換えれば、筆者が今回考えてみたいのは、Polymarketが「予測市場」にSNSを足す未来ではなく、予測市場そのものがひとつのSNSになっていく未来です。その可能性を、ここから三つの方向から考えてみます。

予想①「市場」が「投稿」になる|PolymarketのSNS化

続きは有料会員限定です
  • 月額 9,990円〜で国内最大級のWeb3リサーチが読み放題
  • DeFi / NFT / DAOなど2,000本以上のレポートを網羅
  • 投資判断や事業検討に使える実務視点の分析
  • 基礎から最新動向までプロフェッショナルな情報にアクセス
すでにご登録済みの方は
無料会員登録は

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。