NFTは終焉か、それとも再編か:NFTマーケットレポート【25年11月】

この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 【前編】11月のNFT市場を振り返る:市場全体の変化と牽引したプロジェクト群
    • NFTはもう終わった――
  • 【後編】NFTバブルの興亡と「NFTは終わった」論
    • NFTの再定義:投機商品から機能的トークンへ
    • TONとTelegramによるNFT 2.0の実利用
    • 「NFTは終わった」への反論:再定義が現実に進行中
  • 総括
2025年11月、NFT市場では何が起きていたのか。本レポートでは、市場データをもとに当月の主要な動向を整理し、出来高や取引構造の変化といった事実関係から、現在のNFT市場がどのような局面にあるのかを俯瞰的に確認することを目的としています。

なお本レポートでは、とくに「PFPやアート系NFTを中心とした投機市場」としてのNFTを主な分析対象としています。今回は、特定のプロジェクトごとの成功や失敗を個別に検証するものではなく、市場全体の数字や資金の流れが示している「構造の変化」に焦点を当てています。
タイトルは「NFTはもう終わったのか」としました。実際、PFPやアート系を中心とするNFT市場の出来高は、数字だけを見れば「終わった」と言いたくなるような水準まで縮小しているのも事実です。まずは前編で、そうした“終わっているように見える事実”を、あくまでデータベースで整理していきます。

【前編】11月のNFT市場を振り返る:市場全体の変化と牽引したプロジェクト群

[文責:masao i]
図表1.NFT市場 日次推移:出来高[上]・取引件数[下](2025年4月〜11月)
2025年11月のNFT市場は、出来高の面では引き続きEthereumが中心となりました。夏場には、Ethereum DAT(トレジャリー買い)とアルトコイン高騰による含み益マネーの波及を背景に市場はいったん大きく活発化しましたが、その後は沈静化。
10月に入って出来高が再び持ち直す動きも見られましたが、前回の調査で深掘りした通り、その実態は新規資金の流入による回復というよりも、注目が集まって板が厚くなったタイミングを利用した大口による「非流動資産の流動化」、すなわち在庫処分の動きが出来高を押し上げていた側面が強いものでした。こうした一時的な流動性の膨張も10月後半には一巡し、11月のNFT市場は再び低迷局面に入った、というのが実態に近い推移だったと整理できます。
図表2.NFT市場の月間変化(2025年9月→10月):出来高[左]・件数[右]
図表2では、出来高[左]と取引件数[右]について、10月から11月にかけて変化量が大きかった上位5つのチェーンを可視化しています。
今回の特徴は、全体として出来高・取引件数ともに前月比で減少基調にある点です。Ethereumをはじめ、主要チェーンの多くで出来高は大きく縮小し、取引件数についても同様に弱含む結果となりました。
そのなかでBNB Chainのみが、出来高・取引件数ともにわずかながら右肩上がり、もしくは横ばいに近い水準を維持しており、相対的に底堅さが目立つ形となっています。つまり、NFT市場全体が縮小する局面において、BNBだけが例外的に下げ止まっている構図が浮き彫りになったと言えます。では次に、こうした環境のなかで、EthereumとBNBそれぞれで、具体的にどのようなコレクションが取引をけん引していたのかを見ていきましょう。
図表3.NFT市場30日トレンド:出来高×平均価格×増加率
図表3は、2025年11月のEthereumおよびBase上の出来高上位コレクションを、「出来高(横軸)×取引件数(縦軸)×出来高変化量(バブルの大きさ)」で示したバブルチャートです。前回10月は、Ethereum・Baseともに突出した単一プロジェクトが市場全体の出来高を押し上げる構図が見られましたが、11月は様相が大きく異なります。11月は、ブルーチップNFTや従来型のアート・PFP系コレクションの出来高・取引件数が総じて縮小しており、投機目的での売買が成立しにくい市場環境へと明確に移行している様子が確認できます。出来高の減少は単なる価格下落ではなく、市場に供給されていた流動性そのものが細ってきていることを意味しており、短期的な回転売買が成立しづらい構造に移りつつあると整理するのが実態に近いでしょう。
一方で、相対的に存在感を示しているのが、UniswapやPancakeSwap系のLP(流動性)ポジションを表すNFTです。ただし、ここで注意が必要なのは、これらの出来高は「二次流通で頻繁に売買されている」というよりも、「ミント=ポジション取得」が出来高としてカウントされているケースが大半であり、実態としては“売買が活発化した”というより、“DeFi上で新たに流動性ポジションを取る動きが一定数あった”ことを示しているに過ぎない点です。同じNFTという形式でも、PFPやアートのような投機売買とは経済的性質がまったく異なる動きであることを、チャートの読み方として踏まえておく必要があります。
また、NFT市場全体の出来高の減少は、NFT市場の内部で資金が別ジャンルに大きく横移動したというよりも、暗号資産市場全体の出来高縮小や、ステーブルコインの需給環境、伝統資産側への資金流入といったマクロ環境の変化と同時進行で起きている点を踏まえると、資金の多くが市場の外――すなわちドル(ステーブルコインを含む)、債券、株式といった伝統資産側へ移動している可能性が高いと見るのが現時点では自然です。そのうえで、暗号資産市場の内部に残ったごく一部の資金だけが、「NFT → より流動性の高いトークン市場」へと移動し、さらにその周辺形として、DeFi上の流動性提供やポジション保有といった“権利・持分そのものを表す用途”にNFTが用いられる動きが観測されている、という構図が浮かび上がってきます。LPポジションNFTは、現時点では市場全体を押し上げるほどの規模には至っていないものの、「投機対象としてのNFT」とは明確に異なる役割にNFTが使われ始めていることを示す、数少ない具体例の一つとして位置づけることができそうです。

NFTはもう終わった――

そう見える数字が並びます。
少なくとも、PFPやアート系を中心とした“投機対象としてのNFT市場”が、明確に縮小局面に入ったことは事実です。ただし、ここで見えているのは「NFTの終わり」そのものというよりも、「これまで“NFT市場”と一括りにされてきたものの中身が、用途ごとに分解され始めている兆し」と捉えたほうが、実態に近いかもしれません。

出来高が消えたという単純な話だけでは、この市場が本当に終わったのかどうかは判断できず、「どこで、誰が、どんな目的で使っているのか」という問いに答えられない限り、現段階で拙速な結論を出すべき局面でもないでしょう。実際、総出来高は縮小している一方で、11月のデータには、これまでの「値動きを取りにいくNFT取引」とは明らかに性質の違う動きが、点在する形で観測され始めています。
続く【後編】では、数字の裏側で静かに残り始めている“これまでとは性質の異なる動き”を整理していきます。
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