DOTは“インフレ通貨”から脱却できるのか?──Referendum 1710とPolkadotの新たな挑戦、投資家が押さえるべきポイント

2025年09月16日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
図表1.Referendum 1710、賛成票が全体の81%を占める(出典:https://polkadot.polkassembly.io/referenda/1710)
2025年9月、Polkadotのコミュニティで「Referendum 1710」という提案が可決されました。これは、DOTという通貨の発行量を最大21億枚までに制限するという考え方に「賛成しますか?」と問いかけたものです。実際の投票では81%が賛成を示し、多くの参加者がこの方向性を支持しました。(図表1)
ただし、この提案はすぐに仕組みを変えるものではありません。Polkadotのガバナンスには「Wish For Change/WFC」という“意思表示”用の投票枠があり、今回の可決は「将来こうしたルールに変えていく可能性が高い」ことを示す合図にあたります。
もしこの方針が実際に取り入れられれば、DOTはこれまでのように毎年決まった数を無限に発行する通貨から、一定の上限を持つ通貨へと性格が変わることになります。そうなると、長期的には「数が限られるから価値が下がりにくい」といった見方が広がる一方で、「報酬や開発の資金が減ってしまうのではないか」という懸念も出てきます。
本稿では、このReferendum 1710がどんな仕組みなのか、そして投資家としてどんな点に注意すべきなのかを、できるだけわかりやすく整理していきます。

DOTのこれまでの供給モデルと課題

Polkadot(DOT)は、これまで総供給上限を設けず、毎年1億2,000万DOTを新規発行するインフレ型の仕組みを採用してきました。新しく発行されたDOTのうち、約85%はステーキング報酬としてバリデータやノミネーターに配分され、残りはトレジャリー(公共基金)に回されます。これにより、ネットワーク維持のインセンティブと、エコシステム投資の財源が安定的に確保されてきました。
(参考:https://wiki.polkadot.com/learn/learn-dot/)
このような上限のないインフレ設計から、投資家の間では「成長を優先したモデル」と見なされることが多く、希少性の弱さや価格への下押し圧力が懸念されてきました。実際、DOTの価格は2021年に50ドルを超える場面があったものの、その後は長期低迷し、直近では4ドル台にとどまっています(図表2)。
図表2. DOT価格の推移(2020年8月以降・上)および主要アセットとのパフォーマンス比較(下)(出典:coingeckoをもとに筆者作成)
もっとも、Polkadotは無制限のインフレを続けてきたわけではありません。2024年10月にはWFCレファレンダム#1139が可決・実行され、「初年度インフレ8%、その後は段階的に低下させる」という方向性がシグナリングされました。これは年間固定発行1.2億DOTをベースに、長期的には主要PoSチェーン並みのインフレ率(3〜6%程度)を目指す動きと位置づけられます。
なお、このシグナルが出た直後には「インフレ抑制」が好感され、DOT価格は大きく跳ね上がりました。市場が供給制御を強く意識していることを示す動きでしたが、残念ながらその勢いは長続きせず、再び低迷局面へと戻っています。
つまり、単に発行量を抑えるだけでは十分ではなかった、ということです。
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