search-icon
academy-icon

ステーブルコインUSDCとUSDTの構造比較:信頼性・規制対応・流動性の観点から|デジタルドルの選定とリスク評価に向けた実務ガイド

2025年03月26日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 1. 信用性:準備資産の透明性と償還リスクの比較
  • 2. 流動性:市場規模と取引量の比較
  • 3. 規制体制:発行体の所在地・ライセンスと各国規制
  • 4. 手数料構造:送金・償還コストや隠れたコスト
  • 5. エコシステムの比較:技術基盤・提携・展開戦略
  • まとめ:どちらを選ぶべきか?
暗号資産市場で主要なステーブルコインであるUSDC(USD Coin)とUSDT(Tether)は、いずれも米ドルと1対1で連動するデジタル資産です 。価格変動の激しい暗号資産取引において、ドルにペッグ(連動)したこれらのコインは安全な逃避先や決済手段として広く利用されています。現在、USDCとUSDTは暗号資産全体の時価総額ランキングでもトップクラス(トップ10以内)に位置し、市場における存在感は極めて大きいです。しかし、この二つのステーブルコインには信用性、流動性、規制体制、手数料構造、エコシステムといった観点で明確な違いがあります。本コラムでは、暗号資産取引所の投資家向けに、USDCとUSDTをこれら5つのポイントで比較し、それぞれの長所・短所や最新動向を分かりやすく解説します。

1. 信用性:準備資産の透明性と償還リスクの比較

準備資産の透明性(USDC):

USDCは裏付け資産の透明性において業界随一との評価を受けています。Circle社(USDCの発行体)は、USDCの発行高と同等の米ドル建て資産を100%現金および短期米国債で保有していることを公表しており、これら準備金は同社の運営資金とは明確に分離して管理されています。さらに、米国の四大会計事務所による月次の第三者証明(アテステーション)を実施し、発行済みUSDC総額以上の準備資産を保持していることを毎月確認しています。実際、USDCは「米ドル現金および短期国債によって100%担保されており、常に1USDC=1ドルで償還可能」であることが公言されており、Grant Thornton LLP(米国有数の会計事務所)やDeloitte & Touche LLPによる月次報告(例:2025年1月報告書)で裏付けが示されています 。こうした高い透明性により、USDCの保有者は準備金の中身や量を常に把握でき、信頼を得やすい状況にあります。

準備資産の透明性(USDT)

 一方のUSDTは、近年こそ透明性向上の取り組みを進めていますが、長らく準備資産の内訳開示が限定的であったため信頼性への懸念がつきまとってきました。テザー社(USDTの発行体)は「発行済みUSDTは常に100%準備金で裏付けられている」と主張していますが、その内訳には過去にリスクの高い資産も含まれていました。例えば2019年の法廷書類で、テザー社法務顧問が「USDTの準備金のうち現金および現金同等物は約74%に過ぎず、残りは流動性の低い資産だった」と明かしています2021年時点でもUSDT準備金の現金保有率は3.87%しかなく、多くがコマーシャルペーパーなどで占められていたことが報じられています 。このような経緯から、「大口償還が発生した際に本当に全額をドルに交換できるのか」という不安が市場で度々指摘されました。しかしその後、テザー社は準備資産の改善に乗り出し、コマーシャルペーパーの保有を削減して米国債の割合を増やす措置を取っています 。

出所:Stablecoin Stability Assessment Tether (USDT) Dec. 12, 2023
実際、2023年9月時点のUSDT準備報告では、発行済みUSDT約832億ドルに対し準備資産864億ドルを保有し、104%の過剰担保(超過準備)となっていることが第三者の検証で示されています 。現在、テザー社は四半期ごとに準備資産に関するレポートを公表しており、イタリアの監査法人BDOによるアテステーション(保証手続)を通じて透明性の向上に取り組んでいます。さらに、2025年3月時点では、財務準備資産に対する完全な監査を実施するため、米国の四大会計事務所の一つと協議を進めていると報じられています。

償還(交換)リスクの比較

ステーブルコインの信用性でもう一つ重要なのが償還リスク(発行体から米ドル現金に交換できるか)です。
このレポートは有料会員限定です。
HushHubリサーチの紹介 >
法人向けプラン >

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。