Coinbase 2024年Q3決算 取引手数料に依存しない収益源をめぐる試行錯誤
2024年11月03日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- Coinbase 2024年Q3決算の概要
- Coinbase 2024年Q3の収益状況
- 取引収益以外の収益源の成績と今後の見通し
- ステーブルコイン(USDC)関連収益
- ステーキング報酬収益
- 金利およびファイナンス収益
- カストディ手数料収益
- その他のサブスクリプションとサービス収益
- 総括
本レポートでは、10月に公開されたCoinbaseの2024年Q3決算から、暗号資産取引所のビジネスモデルの変化やその現状を概観します。
暗号資産取引所では、取引手数料やスプレッドからが主な収益源とされていますが、Coinbaseは2023年から収益源の多角化に取り組んできました。
ここでは、多角化した収益源の成績を振り返り、どのような取り組みに成果が出ているのかを分析します。
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決算資料 参考
Coinbase 2024年Q3決算の概要
全体サマリーは以下のとおりです。全体的な収益は黒字を維持していますが、前四半期から収益は減少しました。
前四半期以前からの決算の経過
Base TVL・Volume オンチェーンデータ
同社の決算報告から、収益に関連する主要な点を以下にまとめます。
Coinbase 2024年Q3の収益状況
- 2024年Q3の総収益は12億500万ドルとなり、前四半期の13億8000万ドルから17%の減少を示しました。この減少の要因は、特に暗号資産の市場全体の平均価格が10%ほど下落したことによる取引量の減少が大きいとされています。
- 第2四半期の取引量が2,260億ドルであったのに対し、2024年第3四半期のCoinbaseの取引量は1,850億ドルでした。これにより、前四半期比で約18%の減少となっています。
- 取引収益は57億3000万ドルで、前四半期の78億9000万ドルから27%減少しました。これは、米国のスポット市場での取引量が全体で18%減少し、特にCoinbaseでの取引量も18%減少して1850億ドルに留まったことが影響しています。
- 取引収益の内訳では、消費者向けは4億8300万ドルで27%の減少、機関投資家向けは5500万ドルで13%の減少が見られました。消費者取引に関しては、ステーブルコインの取引ペアの利用増加がありましたが、取引手数料がほぼ発生しないため、収益には大きく貢献していません。
- サブスクリプションとサービス収益は5億5600万ドルで、前四半期の5億9900万ドルから7%の減少を記録しました。この減少は、暗号資産の価格低下によってステーキング報酬収益が低下したことが要因とされています。
- サブスクリプションとサービス収益の内訳として、ステーブルコイン(USDC)の収益は2億4700万ドルと微増し、プラットフォーム上でのUSDCの平均残高も7%増加しています。一方で、ステーキング報酬は1億5500万ドルと16%減少し、特にETHやSOLの価格低下が影響しました。
- Baseのシーケンサー収益は、3400万ドルでした。DefiLamaによれば9月単月では400万ドルを超えており、最高値を記録した2024年5月から減少していた傾向が上昇に転換しました。TVLはレイヤー2でトップで過去最高値である25億ドルをに達し、デプロイされたコントラクト前四半期から2倍、Base内の合計取引量は過去最高の270億ドルを突破した。
- 純利益は7500万ドルで、調整後EBITDA(非GAAPベース)は4億4900万ドルで、7四半期連続でプラスを維持しています。
暗号資産の低ボラティリティのある中、取引を減少させている要因を考察すると、
- 競合の暗号資産取引所(CEX)にシェアを奪われている
- DEX(分散型取引所)にシェアが流れた
の2パターンが考えられますが、そのどちらも起きているのではないかと筆者は考えています。
決算資料では、Coinbaseでの取引収益が減少した主な要因は、以下のように説明されています。
- 暗号資産市場の低迷: 暗号資産全体の平均価格が約10%下落し、取引ボリュームが減少したことで市場全体のボラティリティが低下し、その結果消費者向け、機関投資家向けの取引量が減少した
- 消費者取引の手数料率低下: 消費者取引において、手数料がほとんど発生しないステーブルコインの取引ペアの利用が増加し、収益に大きく貢献しなかった
主な要因は市場下落による取引量減少を理由にしていますが、他の取引所に目を向けると下落相場であったにも関わらず、シェアを伸ばしている取引所も存在しています。
以下の図はCoinGecko APIの信頼性を示すTrust Score7以上の取引量と市場シェアを示すグラフです。最も大きいのがBinance、次いでBybitでありCrypto.com、Pionexなどが取引量の市場シェアを伸ばしました。
Coinbaseの取引量シェア(図中の緑)は2024年以降減少しており、このことから、市場下落の中でも取引量を伸ばしている取引所にシェアを奪われていることが分かります。この傾向は、現状の事業構造においては恐らく続くと思われます。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。