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次の10年はインフレ・高金利の時代 インフレが一過性ではない長いトレンドになるシナリオを考える

2022年09月20日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提 
  • インフレ・高金利が長いトレンドになる可能性を示す5つの理由  
  • 総括 

前提 

 本レポートでは、次の10年(2022年〜2030年前後)はインフレ・高金利の時代になり、現在のインフレが一過性ではない長いトレンドになるシナリオについて筆者の考えを解説します。 
2022年の暗号資産を含む金融市場のテーマは一環して「インフレとそれを抑えるための利上げ」でした。

しかしインフレは2022年に入って急に発生したものではありません。2021年の時点で新型コロナに対応した金融緩和や給付金によって既にインフレは起きていました。下記のチャートを見ればそれは明らかです。 
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-01-11/past-the-worst-why-u-s-inflation-could-fade-or-linger-in-2022
そして2021年に芽があったインフレはウクライナ戦争を景気にした資源高で加速して、アメリカに限らない西側諸国はここ半世紀で最も深刻なインフレを経験することになりました。中央銀行はゼロ金利から急速な利上げをしているのが今の現状です。

利上げをすることでわざわざ投資家はリスク資産を購入する動機が薄れるので金融市場にとって逆風ですが、そもそも利上げをすることでなぜインフレが収まると期待されるかのメカニズムについておさらいしましょう。以下のプロセスで利上げはインフレを抑える唯一の方法であると考えられています。

1.金利が上がり、お金の借り入れ条件が不利になる 
↓ 
2.企業/個人の借り入れが減る 
↓ 
3.投資/買い物に使えるお金が減る 
↓ 
4.雇用が減り、モノやサービスの売れ行きが鈍る 
↓ 
5.人材が余り、給与が上がりづらくなる 
↓ 
6.モノやサービスの価格が据え置かれる 
↓ 
7.値上がりが止まる(インフレ退治達成!) 
 
ちなみに7の過程まで行くと、物の値段と賃金が上がりにくい、つまり不況のような状態になることがあり、再び利下げをすることになります。金融緩和と金融引き締めはサイクルで、それを適切に行うことが中央銀行の役割であると期待されています。 
https://www.macrotrends.net/2015/fed-funds-rate-historical-chart
上記のグラフはFederal Funds Rateの過去60年の推移ですが、利上げをしても2%少々なので未だ歴史的に金利は低い水準でこれから上昇する余地を残していることが分かります。

ここ10年はほとんど一環してデフレと低金利の時代でした。しかしながら、これからの10年はインフレと高金利の時代になる可能性が高いというのが、本レポートのメインテーマです。  

9月13日に発表されたCPI(8月の消費者物価指数)の伸びが事前予想平均を上回り、NASDAQは5%の下落をしました。1日の下落率として2年で最も大きい数字です。 8月のCPIは前年同月比では8.3%上昇で、インフレはピークアウトしているという市場参加者の期待を裏切った形になります。
7-9月前半の金融市場は底値から反発をして底堅く、その買い手はインフレピークアウトを期待した市場参加者でしたが、その期待は今の所虚しい結果になっています。 

今回、筆者としては、インフレが一過性ではない長いトレンドになるシナリオについて考える必要を述べます。もっとも同年前月比8%超の記録的なインフレが今後10年ずっと続く可能性は低いですが、それでもある程度のインフレがそれなりに長い期間続くトレンドを織り込む必要があるのではないのかというのが、現在の基本スタンスです。 
5-10年の視野(ざっくりそのくらいのある程度長い期間、という程度のニュアンスで捉えて欲しい)でインフレが続く可能性があり、それはなぜか?という論点について述べていきます。暗号資産に投資をしている市場参加者は20-40代が多く、ほとんどが投資経験は長くて10年ちょっと、つまり金融緩和の時代しか経験していません。もしインフレと利上げが続くのであれば、市場に向き合うメンタルモデルも大きな変化が迫られるであろうとも考えています。  

次節ではインフレ・高金利が長いトレンドになる可能性を示す理由を5つに分けて解説します。

そもそもインフレとは「供給よりも需要の方が多い」状態を指します。物の供給を妨げる要素があれば物価は上がりますし、物を欲しがる需要家が強くなれば同じく物価は上がります。 
つまり供給と需要の両サイドから考える必要があり、5つの理由をそれぞれ供給と需要どちらの要因か整理して分かりやすく解説します。また可能な限りデータや文献のリンクも添付しています。 
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