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NFTマーケットプレイスを比較し成功と失敗の要因を探る

2022年04月03日

目次

  • 前提
  • 海外NFTマーケットプレイスの比較分析
  • 国内NFTマーケットプレイスの比較分析

前提

本レポートでは、海外と国内のNFTマーケットプレイスの比較表をもとに、NFTマーケットプレイスの考察を行います。
目的としては、比較検討することでNFTマーケットプレイスの成功と失敗の要素を把握し、国内のNFTマーケットプレイスでどのような打ち手が考えられるかを結論とします。
NFTマーケットプレイスは海外でも国内でも多く出てきています。海外国内ともにOpenSeaの独占市場となっており、そこに独自トークンを使いOpenSeaの流動性ともいえるNFTを引き入れるヴァンパイアアタックをLooksRareX2Y2が行いました。またFoundationSuperRareは独自のブランドをアーティスト向けに構築しています。TofuNFTを見るとEVM系チェーンの数多くの対応と、多言語対応を行うことで新興国向けの需要に答え、差別化に成功しています。
国内を見ると、暗号資産取引所、大手IT系企業、その他のプレイヤーと大きく3つに分かれます。本レポートでは前者2つに焦点を当て解説します。
【Executive Summary】
  • OpenSeaに対するLooksRareやX2Y2のヴァンパイアアタックを見ると、プロジェクトのミッションだけでは不十分で、適切なインセンティブ設計が重要。
  • NFTマーケットプレイスは乱立しており、SupreRare、Foundation、tofuNFTのように適切な差別化戦略が重要。
  • 国内NFTマーケットプレイスは既に飽和しており、コンテンツの消費でなくコンテンツホルダーやクリプトネイティブな企業との協業が必要と思われる。
音声コンテンツはこちら

海外NFTマーケットプレイスの比較分析

NFTマーケットプレイスの比較表はGoogle SpreadSheetとしてこちらに保存しています。

OpenSeaと競合の競争

まず取引量を見ると、依然としてOpenSeaの牙城は崩れていません。OpenSeaの独占状況を打破しようと、LooksRareとX2Y2がOpenSeaへのヴァンパイアアタックを行いましたが、LooksRareとX2Y2で明暗が分かれている状況です。
LooksRareはOpenSeaの株式発行の発表をきっかけに、OpenSeaのWeb2.0的な点への批判を含めて立ち上げられました。OpenSeaで過去半年で3ETH以上の取引を行ったユーザーに対してLOOKSトークンのエアドロップを行い、エアドロップを受け取るためにLooksRareへのNFTのリストを条件にしています。またトークンの特徴としては、LOOKSをStakingすることで150%以上の高いAPYを受け取ることができる点、また手数料の2%をLOOKSトークンという形で返却するトレードマイニングが挙げられます。
一見高い取引量に見えますが、トレードマイニングにより通常の売買ではないマイニング目的の取引量を発生させています。2%の手数料をLOOKSで受け取るため、これは購入額の2%のETHでLOOKSを交換するのと同じ行為です。そのため購入者が長期的にLOOKSの成功に期待していれば、取引量を増価させLOOKSを成功させる利害が一致します。
このように課題はありますが、手数料が2.0%とOpenSeaよりも0.5%低い点、また手数料もLOOKSトークンでの返却がある点から、トレードマイニングの取引量を除いたとしても取引量ではOpenSeaに続く2番手になっており、立ち上げには成功しているといえそうです。ただトレードマイニングでの配布は無限に行える訳ではないため、持続的な第2案が必要と思われます。
またNansenによると、LOOKSトークンの保有アドレスは、配布直後をピークに減少した後、緩やかに増加しています。LooksRareをNFTマーケットプレイスとして利用してトレードマイニングで手にするユーザーが多いとしたら、利用者も増加している可能性があります。
https://pro.nansen.ai/token-god-mode/segments?token_address=0xf4d2888d29d722226fafa5d9b24f9164c092421e

そのLooksRareの課題を解決しようとしているのがX2Y2で、ミッションとして「Community owned, 100% profit to token holders.」を掲げています。LooksRareの課題として、トレードマイニング、3.3%のVCの投資、エアドロップが一部の層に限られた点を挙げています。その解決としてX2Y2はトレードマイニングは行わず、プレセールはパブリックに行い全ての人に権利があり、エアドロップはOpenSeaを使った全てのユーザーに行いました。またプレセールスで得た1,500ETHはUniswap LPにした上で運営に戻せない形で放出する、チームへのX2Y2トークンの解放はローンチの180日後等と、ユーザーに対して誠実な対応を行っています。
このようにLooksRareよりも誠実な対応を行っているX2Y2ですが、取引量は伸びていません。そこでX2Y2は2022年4月からの1か月間、取引手数料を無料でガス代もX2Y2トークン還元するプロモーションを行い、NFTの流動性を高めることを狙っています。OpenSeaの先行者利益と流動性を奪うのは容易ではない点、またユーザー主義に見えるX2Y2もインセンティブ設計に工夫が無いとうまくいかない点が分かります。
また保有アドレス数はLooksRareと比較すると増加していません。4月のキャンペーン後に保有アドレス数がどれほど増加するかが注目されます。

https://pro.nansen.ai/token-god-mode/segments?token_address=0x1e4ede388cbc9f4b5c79681b7f94d36a11abebc9

SuperRare、Foundationのブランドとしての差別化

これらのOpenSeaに真正面から対抗するプラットフォームに対し、FoundationとSuperRareはアート系のブランドとして差別化しています。SuperRareは審査制になっており、審査を通過したアーティストだけが作品を出品することができます。対してFoundationは、出品しているアーティストが他のアーティストを招待することができ、SuperRareよりは敷居が低くなっています。
出品されている作品を見ると、SuperRareは美術的なアート作品が多くなっています。対してFoundationは日本のイラストレーターなどもう少しライトな作品も出品されており、この2つのプラットフォームも差別化されています。これらはブランドという意味でOpenSeaと差別化が成功している例と言えます。

tofuNFTの差別化と、Raribleの苦戦

またtofuNFTは多チェーン対応という点でOpenSeaと差別化ができています。レイヤー1のチェーンを比較すると、NFTの主流はEthereumで、そこにSolanaやAvalancheが追従する形です。しかし取引量はEthereumの一強で、そこをOpenSeaが独占している状況です。
tofuNFTはEthereum以外のEVM系のチェーンに素早く対応し、新興チェーンのNFTマーケットプレイスとして一定の取引量を獲得しています。新興チェーンで初期に生まれるNFTは、CryptoPunksのように初期のプレミアム感、またNFTの立ち上げを望む公式のサポートなどから高騰することが多く、それを狙ったアーリーアダプターの取引も多くなります。tofuNFTはこれら新興チェーンのニーズを狙った例と言えます。また利用ウォレット数はOpenSeaに次ぐ2位となっており、低価格のNFTが多くガス代も安いチェーンを導入し、新興国のニーズを取り込んでいるため事もウォレット数が多くなっている要因と思われます。
対して苦戦しているのがRaribleです。Raribleは100名以上のチームを抱えていますが、月間総低収益が1.5Mドル程度となっており、収益を十分に上げているとは言えない状況です。FlowやTezosの対応を行っていますが、これらのチェーンはネイティブのNFTマーケットプレイスも立ち上げており、Raribleを使う目的が薄いと思われます。取引量もLooksRareに負けている状況で、今後の対策が必要と思われます。
加えて、NFTマーケットプレイスだけでない機能を模索し、資金力のある団体がNFTアグリゲーターの買収を行っています。OpenSeaがアグリゲーターのGemを買収し、またNFTとは直接関係が無いUniswapがGenieを買収しました。アグリゲーターについては下記が詳しいです。

国内NFTマーケットプレイスの比較分析

国内NFTマーケットプレイスは海外とは状況が大きく異なります。種類を大別すると、Ethereum系のチェーンと独自チェーンの2つに分かれます。Ethereum系は海外のNFTを国内で販売することで、OpenSeaや独自マーケットのハードルを下げる役割と、GMOのように国内クリエイターのNFTをEthereum上に載せるものの2種類が存在します。
独自チェーンはLINE NFT、Rakuten NFTのように、自社で開発したチェーンのNFTを販売する場所をまず作るという役割があります。
国内のNFTマーケットプレイスは公開情報が少ないために、GMOのNFTマーケットプレイスであるAdamの販売データから情報を推定します。まずAdamの取引量を見るとTOP100クリエイターの販売数から推定した取引量が、立ち上げからの約7か月で1.3億円程度です。また手数料は決算説明会の議事録から10%を目標としており、多めに10%と見積もってもGMOの利益は1,300万円程度となります。坂本龍一など有名人を起用してこの取引量と利益ですので、他の国内マーケットプレイスも苦戦が予想されます。
また独自チェーンのマーケットプレイスを見ると、LINEは手数料を無料にしているのに対してRakuten NFTは14%と大きく異なります。この理由として、LINEは国内で8,900万人、全世界で約1億8,500万人以上のユーザーに対し、LINE NFTを普及させるために、手数料よりもユーザー数増加を目標にしているためと思われます。
参照レポート:LINE Blockchainの概要
それに対し、Rakuten NFTはNFTの手数料によるマネタイズが目的のため、高めの手数料を設定していると思われます。ただ先行して多額の投資をしているであろうAdamで1.3億円程度の売上のため、初期からマネタイズを目標にして広げるのは相当な工夫が必要と思われます。
また海外と国内のNFTマーケットプレイスの違いとして、海外はクリプトネイティブのユーザーに、国内は広く一般ユーザーをターゲットにしている点が挙げられます。NFT取引の多くを占めるのは過去にクリプトで多額の利益を得た層と思われ、彼らに対してリーチする事で多額の取引量と手数料を得る事ができます。(ただ一部多額取引はOTCで行われてはいます)
NikeやAdidasはこの点もあり、BAYCやRTFKTと協働していると思われます。これに対し一般層にリーチしても、取引所やLINEのように既存ユーザーを活かす手段がないとスケールが困難です。理由として、取引所やLINEは多くの一般ユーザーを既に抱えているために、そのユーザーを水平展開できます。そうでないその他のNFTマーケットプレイスは、まずユーザーの獲得から始める必要があります。
またNFTマーケットプレイスとして、何を差別化戦略とするのかを考える必要があります。tofuNFTではそれが多チェーン多言語でした。国内NFTマーケットプレイスは、大手コンテンツを使って差別化を図る事が多いですが、市場が国内に留まっているために、そのコンテンツを使ってNFT市場の小さいパイを多くのプレイヤーで奪い合っている状態です。
大手コンテンツのメリットを最大化するなら海外もターゲットに入れる、またコンテンツの切り売りだけでなく、どのような世界観の構築を行うか、それをDecentralandやSandbox等のメタバースでも使えるコンテンツとしても今度考えていくのか、コンテンツホルダーやクリプトネイティブな企業と共に世界観を考えていく必要があると思われます。
またHashHubリサーチでは、毎月NFTマーケットレポートを出しており、そちらも参考になると思います。

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。

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