Raribleの概要 コミュニティでガバナンスするNFTマーケットプレイス

目次

  • 前提
  • NFTマーケットプレイスであるRaribleの基本概要
  • RaribleのガバナンストークンのRARIとその配布方式
  • DeFiに影響を受けた競争戦略やプロジェクトの立ち上げ方
  • 総論

前提

本レポートではRarible( https://rarible.com/ )の概要について解説します。RaribleはNFT(Non-Fungible Token)のマーケットプレイスです。
NFTとはゲームアイテムやグッズなどをトークン化する際によく用いられるトークンの形式です。Ethereum上では、具体的な規格としてはERC721という実装が多く用いられています。

Non-Fungibleとはトークンそれぞれに固有の色をつけられるということを意味し、具体的にはゲームを有利に進められる固有のパラメータや、ゲームの文脈以外でも利用できるかもしれないメタデータを各トークンに付与できます。だからこそ、Aという猫トークンと、Bという猫トークンはそれぞれ違うもので、あるレアな猫トークンは100万円で販売されるというような事象が発生することもあり得ます。

関連レポート:10分で分かるNFT(Non-fungible token)
https://hashhub-research.com/articles/2020-03-01-nft-in-10-minutes
関連レポート:注目のブロックチェーンゲーム、Gods Unchainedの概要と展望
https://hashhub-research.com/articles/2019-11-07-gods-unchained
これまでもNFTとしてトークン化されたゲームアイテムのマーケットプレイスは存在していましたが、Raribleが異なる点は、マーケットプレイスを分散化してコミュニティガバナンスしようとしている点です。今回は同プロジェクトの概要や内蔵されるガバナンストークンであるRARIトークン等について解説します。

NFTマーケットプレイスであるRaribleの基本概要

RaribleはユーザーがNFTトークンを売買出来るプラットフォームです。取引出来るNFTはゲームアイテムやデジタルアートなどが中心で、ETH建てで取引されます。
参照:https://app.rarible.com/
ユーザーはNFTを売買するだけでなく、自分のNFTを生成することも出来ます。画像や発行枚数、初期販売価格などを入力するだけで、コードいらずでEthereum上のNFTを生成できます。
出品者を含む各ユーザーにはプロフィールページがあり、自分が保有するNFTトークンをギャラリーのようにして公開することが出来ます。このユーザーのプロフィールページにはフォロー機能がついており、アーティストやデジタルアートの収集家同士でフォローが可能です。また、プロフィールページでは自分が過去に作ったNFTも公開されており、デジタルアートのアーティストにとっては過去作品を紹介するポートフォリオのような機能にもなっています。
Raribleの利用にはEthereumウォレットが必要で、NFTはユーザーがMetaMaskなどを通して自身の秘密鍵で管理しますが、ユーザーがEメールアドレスとパスワードだけで秘密鍵を生成出来る仕組みも用意されており、暗号資産に馴染みがないユーザーにも使いやすくなっています。これにはFortmaticというツールが導入されており、NFTの取引の実行自体はスマートコントラクトで実行されます。
このようなNFTマーケットプレイスの類似例としてはOpenSeaなどが存在します。Raribleがそれらと最も異なる点は、後述するコミュニティガバナンスの仕組みです。
関連レポート:NFTのマーケットで首位のOpenSeaの会社概要、戦略
https://hashhub-research.com/articles/2019-03-21-opensea-overview
Raribleのローンチは2020年1月で、クリプト特化ファンドのCoinFundからプレシードラウンドで資金調達をしています。なお調達金額は非公開です。

RaribleのガバナンストークンのRARIとその配布方式

Raribleのガバナンストークン:RARI

Raribleは少人数のチームによって創業され、ミュニティでガバナンスされる分散的なNFTマーケットプレイスになることを計画しています。これはEthereumの開発初期や、最近ではDeFiプロトコルなどと同様ですが、NFTマーケットプレイスでこのような構想を描く事例はRaribleが初です。
関連レポート:クリプト・暗号資産領域におけるプロジェクトの立ち上げ方 スタートアップとして創業して分散化に至るまでの道筋
https://hashhub-research.com/articles/2020-08-28-the-road-to-decentralization
プロダクトのアップデートやその方針などは独自のRARIと呼ばれるガバナンストークンによる投票で決定されます。ガバナンスで決定される要素は下記のようなものが想定されています。
  • 取引手数料の設定
  • 取引手数料をガバナンストークンホルダーに還元するか、それともコミュニティファンドに貯蓄するかの選択、またはその割合
  • プラットフォームのトップページに掲載するNFTの選定
  • 技術的なアップデートなど

RARIのディストリビューション

RARIトークンがどのように配布されるか解説します。RARIは、30%がチーム・投資家、60%がマーケットプレイスマイニング、10%がエアドロップによって配布されます。
参照:https://medium.com/@rarible/introducing-rari-the-first-governance-token-in-the-nft-space-5dbcc55b6c43
まずマーケットプレイスマイニングですが、これはRaribleのNFTマーケットプレイスで売買をしたユーザーに対して特典として配られます。毎週の配布料は75,000RARIでRaribleのNFTマーケットプレイスの売り手に50%、買い手に50%が取引量に応じて分配されます。このマーケットプレイスマイニングは2020年7月から約4年間継続する予定です。
加えて、RARIの10%はエアドロップによって配布されます。このうち8%はEthereumのアドレス上で何かしらのNFTを保有しているユーザーに対して配られます。つまりEthereum上でゲームアイテムトークンやデジタルアートトークンなどを保有しているユーザーにRARIが配られました。残り2%のエアドロップはRaribleのプラットフォームの初期ユーザーに対してエアドロップされています。

DeFiに影響を受けた競争戦略やプロジェクトの立ち上げ方

Raribleはそのコンセプト自体やトークンの配布方式について、DeFiのアプリケーションやプロトコルなどが実施している施策に大きな影響を受けています。
まず、Raribleのマーケットプレイスマイニングは流動性マイニング(イールドファーミング)そのものです。流動性を呼び寄せNFTの取引所として取引を活発にするための施策です。取引所の利便性は流動性による点が非常に大きく、これをトークンの施策で高めようとすることはもはや定石の戦略です。また、ユーザーに大部分のトークンを配布することで、ユーザー主体でガバナンスするプロダクトになることも期待できます。
関連レポート:DeFiプロジェクトの流動性マイニングの構造を理解する
https://hashhub-research.com/articles/2020-07-31-the-structure-of-liquidity-mining-defi-project
また、RaribleはガバナンストークンRARIを、Raribleを使用したことがなくてもNFTを保有しているユーザーに対してエアドロップしています。新しいプロジェクトを知ってしてもらうために、潜在ユーザーになりえる類似プロジェクトのユーザーに対してトークンをエアドロップし認知を獲得する手法です。Raribleの場合は、NFTを保有しているユーザーであればこれまでブロックチェーンゲームやデジタルアートに触れている可能性が高く、その時点ではRaribleを知らなくても潜在ユーザーだと言えます。DeFiにおいてはSushiSwapが近しい配布戦略を実施しており、このケースではUniswapユーザーがガバナンストークンSUSHIの配布を受け取りました。
関連レポート:SushiSwapの概要 UniswapをフォークしたDeFiプロジェクト
https://hashhub-research.com/articles/2020-09-07-sushiswap
一方で、DeFiとは異なる特性がマーケットプレイスの成長の足かせとなったり、今後異なる成長戦略をとる必要が生じたりする可能性もあります。これは特に流動性の捉え方ですが、NFTは様々なものが存在し、種類が膨大です。アートなどは毎日数が増えます。この各NFTの全ての流動性を増やすというのは非現実的であり、DeFiにおいてETH<>USDCやETH<>WBTCなど限られたペアの流動性を高めようとするのとは異なる設計施策が必要なはずです。

総論

本レポートではRaribleの概要について解説しました。
Raribleは、あるプロダクトに紐づくガバナンストークンをユーザーに配布し、それを媒介にコミュニティでプロダクトをアップデートしていくというコンセプトをNFTマーケットプレイスに持ち込んだ初の事例です。
このようなコンセプトはDeFiなどでは一般化しつつありますが、将来的にはゲームやソーシャルネットワークサービスでも当たり前になるだろうとPolychain CapitalのCEO Olaf Carlson-Weeも述べており、今後もコンセプトの実験が多数行われるはずです。
(参照:https://www.youtube.com/watch?v=92Bx7otttNY&t=4s
Raribleの今後の展開に期待するとともに、それまでマーケットをリードしていたOpenSeaなどの他のプラットフォームがどのような動きを見せるかも注目です。