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製造小売業・物流企業がブロックチェーンに取り組むための段階的アプローチ

2020年08月03日

目次

  • 前提
  • 製造小売業や物流企業が戦略的にブロックチェーンに取り組むためのアプローチ
  • 最初のユースケースとしてのトレーサビリティ確保
  • 次の段階としてのサプライチェーンマネジメント
  • 大きなビジネスメリットをもたらすサプライチェーンファイナンス
  • プログラマブルマネーとビジネスプロセスの結合
  • 総論

前提

本レポートでは、製造小売業や物流企業が戦略的にブロックチェーンに取り組むためのアプローチについて論じます。本稿で論じる内容はブロックチェーンを用いた事業を段階的に構築するための戦略であるとも言い換えできます。
本レポートで主張する内容は、ブロックチェーンを用いたデジタルトランスフォーメーションを実現したい場合、業務フローに組み込む順序として、まずトレーサビリティ確保、次の段階でサプライチェーンマネジメント、そしてサプライチェーンファイナンス、さらに後半の段階としてプログラマブルマネーとビジネスプロセスの結合という段階的アプローチが有効である可能性です。これらそれぞれ個別のユースケースについては例えば下記のレポートが詳しいです。
関連レポート:小売・製造・流通業界でのブロックチェーンの利用事例
https://hashhub-research.com/articles/2020-04-09-commerce-industry
上記レポートのユースケースの有効性を前提としながら、本レポートでは事業を段階的に構築するための戦略例に焦点をあてます。何故、上記の順序での事業構築が有効であるかを主に論じます。

製造小売業や物流企業が戦略的にブロックチェーンに取り組むためのアプローチ

製造小売業や物流企業が、ブロックチェーンを用いて将来的に享受できる利点は多岐に渡ります。それには例えば、以下のようなものが挙げられます。
  • 出荷した製品が最終消費者やおよび中間業者の視点からトレーサビリティが確保されている
  • 複数社間やグループ会社間におけるビジネスプロセスの可視化
  • ビジネスプロセスが可視化されたことによる受発注の予測
  • 複数事業間による受発注が可視化されたことによる製品ディストリビューションの最適化
  • 伝票確認などのプロセスコストの削減、紙業務の圧縮
  • 在庫や売掛金を担保にしたサプライチェーンファイナンス
  • プログラマブルマネーによる支払い業務とビジネスプロセスの結合
これらが全て実現すると、現在の業務プロセスは大きく効率化され、プロセスコストが削減され、削減されたコストを付加価値増大に向けることが可能になります。逆説的には、これが実現出来なかった企業は、実現した企業と比較してプロセスコストを負担し続けるため、長期的に競争力を失う場合があると言えます。
しかし、上記全ての未来が一足飛びで実現されることは有り得ないでしょう。現在では法的要件や技術的成熟度など様々な課題があり、例えばそれはプログラマブルマネーなどもそれにあたります。業務プロセスに結合して自動化したデジタル通貨は技術的に可能ではありますが、それが日本国内において標準で扱うような規格は存在しないですし、それを取引先が受け取りしてくれるとは限らないことに加えて、支払いにおけるブロックチェーン上のプライバシーを確保することも課題です。
そういった背景から、筆者はブロックチェーンを用いたデジタルトランスフォーメーションを実現したい場合、業務フローに組み込む順序として、まずトレーサビリティ確保、次の段階でサプライチェーンマネジメント、そしてサプライチェーンファイナンス、さらに後半の段階としてプログラマブルマネーとビジネスプロセスの結合という段階的アプローチの有効性について主張します。
端的にはトレーサビリティ確保が技術的、ビジネス要件の側面から入り口としては着手がしやすく、後にそれ以上の大きな変革を実現するべきだというものです。次節からこの理由について詳しく述べます。
このレポートはPro会員限定です。
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※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。