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インシュアテック企業Lemonadeのビジネスモデル概観 保険販売の効率化

2020年07月13日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • Lemonade概観
    • 保険を初めて購入する35歳未満をターゲットに「賃貸人、住宅保有者向け保険」を販売
    • なぜ35歳未満の成人をターゲットにしているのか
    • トップラインの成長と事業拡大|LemonadeのClosed-loop-system
    • ボトムラインの変動リスク回避と資本効率向上|再保険 
  • 総論

前提

本レポートでは、インシュアテック企業Lemonade Inc.のビジネスモデルを2020年6月12日に提出されたS-1※を元に概観します。※1億ドルのIPO、ゴールドマンサックス主導でニューヨーク証券取引所にてティッカーLMNDで取引する計画
Lemonade Inc.はニューヨークを本社とし、2015年に設立された新興の保険会社です。同社は35歳未満の成人をターゲットにAI/MLを活用したモバイルファーストの保険サービスを米国、欧州で提供しており、独自の成長サイクルでユーザーエクスペリエンスを革新し続けながら事業を拡張しているインシュアテック企業です。
Lemonadeは2020年4月11日に、ソフトバンク主導の資金調達ラウンドで3億ドルを調達することを発表し、この時点で累計資金調達額は4億7,880万ドルに達しています。創業からわずか5年でユニコーン企業になった保険市場のスタートアップとして注目を集めました。ソフトバンクの出資は転換優先株で、執筆時点の株主構成は、ソフトバンク(27.3%)、セコイアキャピタル(10.3%)、Aleph(10.3%)、General Catalyst(7.3%)、XL Innovate Fund(5.2%)などです。上場時点で、経営者の持ち分は、CEO Daiel Schreiberは8.05%、COO Shai Winingerは8.93%をそれぞれ保有しており、早い成長と引き換えに創業者は持ち分を希薄化させていることが分かります。ソフトバンクは両創業者の合計以上の議決権を保有する筆頭株主です。
同社は、保険金請求に対する未払い等に対する社会的な不満が一定数存在している点に着目し、如何に透明性を確保して保険本来の役割である相互扶助の仕組みを成立させるかをゼロベースで再構築しています。ユーザーから受け取った保険料金のうち2割を手数料として徴収し、残りを保険金請求、未請求の場合はチャリティ団体への寄付に充てることを約束することで、ユーザーの悩みや不満を解消するとしています。
しかし、このような取り組み自体は社会的に素晴らしく、同社の現ビジネスモデルを支える一つの要素ではあるのですが、Lemonadeの本質的価値がそこにあるのかというと懐疑的な部分もあります。現時点でLemonadeの本質的価値を特定するのは難しいのですが、どちらかと言えば同社のAI/MLに支えられたデジタル基盤とそれをベースにした革新的なビジネスモデルにこそ、同社の価値があるように思えます。例えばAI/MLによる保険購入、保険金請求、問合せといったフロントオフィスとバックオフィスの自動化、そこから得られるデータ活用による迅速な改善サイクル、再保険によるボトムラインの変動リスク回避、及び資本効率の向上、保険業界の性質を見据えた戦略といったビジネスモデルは今後の保険業界や社会に与えるインパクトは大きいのではないかと想像します。
本レポートでは同社S-1を読み解きながら、同社のビジネスモデルを解説します。
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※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。