Rocket概要、NFTを担保に資金を借り入れるには何が必要か

目次

  • 前提
  • Rocketの概要とローン利用の手順
  • NFT担保ローンの課題
  • NFT担保と与信管理
  • 総論

前提

本レポートではNFT(Non-fungible token)を使ったローンを可能にするRockethttps://twitter.com/RocketNFT)を概観します。
現在のDeFiでは、流動性の高いBitcoinやEthereum等の暗号通貨を使って、USDやその他の暗号通貨を借り入れるものが一般的です。担保資産の価格が下落したときにすぐに清算できるように流動性の高いものが使われているわけですが、流動性の高いものを担保に、別の流動性の高いものを借り入れたいユースケースは限定的といえます。現在は暗号通貨は処分したくないが、法定通貨が必要な場合にBlockFiを使ってUSDを借り入れたり、アルトコインをショートするためにBATやZRXを借り入れるのが、レンディングプラットフォームを使って借り入れを行う主な理由です。
では、ブロックチェーン上でNFTを使って資産を借り入れることはできるでしょうか。結論から言えばできます。Rocketは新興のプロジェクトであり、現在はProof of Conceptレベルのプロダクトしかありませんが、本レポートではRocketを起点にNFT担保のローンについて思考実験していきます。

Rocketの概要とローン利用の手順

まずはRocketの概要を説明します。全体像はシンプルで手順は以下のとおりです。
  1. ユーザーはNFTをロックし、RocketにそのNFTを担保資産として使うことを申請
  2. ユーザーは何故ローンが必要か、なぜこのNFTには価値があるか、どのような収入があり返済予定かを説明
  3. Rocketはデューディリジェンスを行い、融資プールから資金を照会
    1. このプールはMolochと同様の仕組みで、資金提供者のETHが保管されている
    2. 担保資産の額に対して、何割の借り入れができるかは自動化されていない
  4. ユーザーからのプロポーザルに合理性があれば、プールからDAIが支払われる
  5. 担保資産の価格が下落し、一定の比率を下回った場合、NFT取引所のOpenSeaで売却される
様々な懸念がありますが、先に事例を紹介します。
Rocket上で行われた最初の融資は、Decentralandの$5000相当のLANDトークンを担保に2000DAIを借り入れるというものです。年利は14%、ローンの期間は6ヶ月で60日毎に返済が発生します。
ローンのオンチェーンデータ
借用書に相当するもの
DecentralandはVRのプロジェクトで、バーチャル空間上でアバターを使って遊んだり、自分が所有している土地を開発したりするゲームです。一時期流行っていたセカンドライフに似た世界観です。
空間内の土地は有限で、LANDとしてNFTで売買されます。DecentralandのネイティブトークンMANAはFungible tokenですが、それぞれの土地には座標が割り当てられているので識別可能でありNFTで表現されています。
土地の供給が制限されているため、Decentralandのアクティブユーザー数が増えると土地の需要は高まります。LAND自体は大きな流動性を持っているわけではありませんが、Decentralandのユーザー数や開発状況、今後の展望などを見越して、土地を買うことには一定の合理性があるためLANDには価値が付いています。

NFT担保ローンの課題

まず言うまでもなくNFTは流動性が低いものが多いです。それはゲームアイテムや絵画、ワインでも同じことで、市場が発達していないため、必要なときに必要な分を大きなロスなしに売り買いすることができません。

MakerDAOとSynthetixのケース

MakerDAOの場合、Etherを担保にしてDAIを発行しますが、Etherの流動性は十分に高いため、清算が発生したとしても現在の市場価格に近い価格で売りに出すことが可能です。しかし、例えば絵画NFTを売りに出そうとしても買いオーダーの厚さが不十分であれば直近価格を大幅に下回る価格で売却することになります。
このような事態が想定されるため、流動性の低い資産を使ったローンのLoan to Value(負債 ÷ 総資産価値)はかなり小さくしなければなりません。MakerDAOのLTVは67%で比較的大きく、100USD相当のEtherがあれば66DAIを借り入れることができます。
一方でEtherよりも圧倒的に流動性の低いSynthetixのSNXは、LTVが13.3%です(100sUSDの発行に750USD相当のSNXが必要)。SNXは時価総額が約100億円で、取引高は1億円程度です。SNXは直近1年で大きく成長しましたが、SNXに価値が十分に滞留する状態には程遠いです。そのようなトークンを担保にして、USDペッグのトークンを発行するのであればLTVを13%程度にしておく合理性が十分にあります。
(※参照
  1. https://cdp.makerdao.com/
  2. https://www.synthetix.io/products/mintr/
  3. https://www.coingecko.com/en/coins/synthetix-network-token

Rocket(NFT担保)のケース

NFTはBitcoinのようなFungible tokenよりも更に流動性が低いことが予想されます。これは性質上仕方ありません。現状、NFTは投機の対象にもなりづらいです。まとめると以下のようになります。
  1. NFT用の市場を創り、流動性を中程度まで上げる
  2. LTVを小さくし、流動性リスクに備える
  3. 理論価値が算出できるアセットをNFT化し、分割した上で流通させる
1と2は既に説明したとおりです。
3の場合を考えてみます。例えばアート作品の場合、アートは株式のように配当を生み出しませんが、展示を行えば集客に寄与しますから、擬似的なインカムゲインを算出することが可能です。このようにトークンの価値を純粋に市場参加者の嗜好に決定させるのではなく、資本的資産として取り扱うことで、価格の乱高下を防ぐことが可能です(インカムゲインが上下すると価値も上下します)。ただし、3番目のやり方は証券に該当する可能性が高いため実施の際には法制度の確認が必要です。

NFT担保と与信管理

ここまでは担保資産としてのNFTの性質や可能性のある利用方法を概観してきました。特に流動性の低いNFTに関しては、LTVを高く設定できず、資産の有効利用が難しかったり、市場創生の課題があったりすると述べました。
一方で、世の中には与信を使った資金提供があり、こちらは契約者の情報、契約内容、取引内容、金融事故の情報に基づいて行われます。多くの場合、どちらか片方ではなく、担保資産を提供した上で、与信に基づいた資金提供を受けるはずです。
ここからは数年先の未来の話になりますが、NFT単体で資金を借り入れることが難しい場合でも、足りない部分を与信でカバーできる可能性があります。ここでの与信は従来の与信管理によって行われるものとDeFiの文脈でDID(分散型ID)が使われるものがあります。後者については、今後の開発次第ではありますが、取引所のAPIを使ったアカウントの残高保証や、給与の一部をステーブルコインやデジタル通貨で受けることで可能になる資産証明が、与信管理の形を変えていく可能性は否定できません。

総論

本レポートではNFT担保のローンについて概観しました。RocketについてはProof of Conceptの段階ですらないため、詳しい仕様は不明ですが、アイディアとしては一度真剣に可能性を考えてみるべきものであり、オンチェーントークンとオフチェーンアセットを繋ぐブリッジが整備されていくに従って、NFTの利用方法は大きく広がっていくでしょう。