話題性から実績・統制・収益構造へ|リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2026年7月20日号

2026年07月20日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 今週のインサイト
  • 今週1週間分のニュースを紹介
    • ▍1confirmation創業者Nick Tomaino|クリプト業界の長期ビルダーが直面する「誠実さ」と話題性のマーケティング葛藤
    • ▍発行後に利益が生まれるステーブルコイン5層構造
    • ▍株式と分岐したQ2クリプト市場の縮小と投機需要の偏在
    • ▍TradFiが求めるのはDeFiではなく制御可能なブロックチェーン基盤
    • ▍Open USDが迫るUSDC支配より発行体収益モデルの再編
    • ▍少数企業への大型集中が進むクリプトVC「支配の時代」
    • ▍投機ではなく消費を促すアーケードトークンの設計論
    • ▍オンチェーンデータを機関金融へ接続する3つの信頼条件
    • ▍Vitalik|AI加速派と慎重派をつなぐ事前合意型の一時停止案

前提

本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。

今週のインサイト

今週のトピックから見えてくるのは、クリプト市場の評価軸が、話題性や将来構想から、実利用、収益分配、規制適合性、運用の信頼性へ移っていることです。市場全体ではステーブルコイン供給や現物取引量が縮小する一方、Perpsや予測市場など、明確な取引動機を持つ領域に需要が偏在しました。こうした環境では、長期ビルダーにも誠実さだけでなく、利用者の欲望を理解して関心を獲得する力が求められます。同時に、ステーブルコインでは発行量よりも、オンランプ、送金、決済、運用のどこで収益を得るかが重要になり、準備金収益も発行体から取引所や決済事業者へ移り始めています。TradFiが求めるのもPermissionlessなDeFiそのものではなく、KYC、資産凍結、監査、訂正可能性を備えた制御可能なブロックチェーン基盤です。VC資金も多数の実験へ広く投じる形から、ライセンス、顧客接点、決済網、データ基盤を持つ少数企業を支配する方向へ集中しています。今週は、クリプトが「新しさを競う市場」から、「誰が資金・データ・流通・信頼を握るか」を競う産業へ移行していることを示す1週間だったといえます。

今週1週間分のニュースを紹介

▍1confirmation創業者Nick Tomaino|クリプト業界の長期ビルダーが直面する「誠実さ」と話題性のマーケティング葛藤

要約

本稿は、1confirmation創業者Nick Tomaino氏が、クリプト業界の長期的なビルダーが直面するマーケティング上の難しさを整理したものです。長期的な価値創造を信じる側は、誠実でありながらdegen層の関心も引きつけ、同時に「高尚ぶっている」「現場感覚がない」と見られないようにする必要があります。この3つを両立させることが、クリプトにおける長期志向のマーケティングの核心だとされています。
Tomaino氏自身も、若い頃には投機で損失を経験し、そこから学んできたため、短期的な利益を求めるdegenを見下してはいないと述べています。一方で、業界にはdegen層を内心では軽視しながら、その資金や関心だけを利用する搾取的なプレイヤーも多いと指摘します。必要なのは、19歳の若者が早く稼ぎたいと考える心理を理解しつつ、より成熟した参加者へ成長することを促し、同時に虚偽や誇張を批判する姿勢です。

重要ポイント

本稿は、クリプト業界のリーダーを大きく「True believers」と「Hype men」の2陣営に分けています。True believersにはEthereumやCoinbaseのリーダー層が含まれます。彼らは複数の市場サイクルを通じて新しいプロダクトを作り、短期的な注目や利益を最優先せず、比較的非搾取的な姿勢を取ってきました。そのため、業界内では広く尊敬され、長期的な信頼も獲得しています。
しかし、この陣営はマーケティングのゲームを十分にプレイしない傾向があります。MemecoinやPerpsのように、degen層が強く反応する用途を軽視したり、短期的な参加動機を理解しないまま否定したりすることがあります。その結果、思想や技術は本物でも、市場の注目や利用者を競合に奪われる場面が生まれます。
一方、Hype menにはAltcoinのリーダー、Digital Asset Treasury企業の幹部、多くのKOLが含まれます。彼らは話題作りやdegen層の獲得には優れていますが、まったく新しいものを作ることは少なく、短期的な資金と注目を優先し、搾取的になりやすいと批判されています。分散化やコミュニティといった業界用語を巧みに使っても、実際の行動がその理念と一致していない場合が多く、マーケティングは演技的です。

読みどころ

読みどころは、「誠実であること」と「マーケティングに強いこと」を対立関係として固定していない点です。True believersの問題は、誠実だから注目を集められないことではなく、利用者の欲望や行動原理を理解する努力が不足する場合があることです。長期的に価値のあるプロダクトであっても、人々が今なぜ使いたいのかを伝えられなければ、採用にはつながりません。
反対に、Hype menの強さは、degen層を理解し、彼らが反応する物語、速度感、利益機会を提示できることです。ただし、それが短期的な価格上昇や参加者からの価値抽出だけに終わるなら、持続的なエコシステムにはなりません。マーケティング能力そのものが悪いのではなく、その能力が正の総和を生むプロダクトに結びついているかが問題です。
また、Tomaino氏が自分自身の失敗や投機経験を明かしている点も重要です。長期志向の側がdegenを一方的に教育する構図ではなく、自らも同じ心理を経験した立場から、成長を促そうとしています。この自己認識がなければ、正しいことを語っていても、説教的で現実離れした印象を与えます。

示唆

本稿の示唆は、クリプト業界で長期ビルダーが勝つためには、技術や理念の正しさだけでなく、短期的な欲望を持つ参加者を健全な利用へ導くマーケティング能力が必要だということです。MemecoinやPerpsを全面的に否定するのではなく、なぜ人々がそこに惹かれるのかを理解し、その関心をより持続可能で正の総和を生むプロダクトへ接続する必要があります。
同時に、話題作りに強い側にも転換が求められます。短期的な注目を集める能力を、実際のプロダクト開発やユーザーへの価値提供へ結びつけられれば、単なるHypeから本物の事業へ移行できます。Tomaino氏は、最終的にはTrue believersがよりdegen的な感覚を取り込み、Hype menがより誠実で正の総和を目指す方向へ近づくと見ています。
最終的な争点は、どちらの陣営が先に相手の強みを取り込めるかです。長期ビルダーが利用者心理と注目獲得を学ぶのか、話題先行型のプレイヤーが本物の価値創造へ進むのかによって、次のクリプト市場で中心になるプレイヤーが決まります。

▍発行後に利益が生まれるステーブルコイン5層構造

要約

本稿は、ステーブルコイン市場の収益機会を、発行体の準備金収益だけでなく、発行後に資金が移動する5段階のバリューチェーンから分析しています。その5段階とは、発行、オンランプ、送金、決済、利回り運用です。発行市場ではTetherとCircleが約83%を占める寡占構造が定着している一方、その下流には多数の事業者が参入できる余地があり、手数料、為替スプレッド、ライセンス、決済インフラ、資金管理、運用報酬といった異なる収益源が存在します。
本稿の主張は、ステーブルコインを単独の商品として見るのではなく、既存金融インフラの効率を高める技術として捉えるべきだというものです。即時決済、24時間稼働、低コスト送金、プログラム可能な利回りといった機能を、銀行口座、カード網、給与管理、資産運用など既存の金融サービスへ組み込む方向が主流になっています。金利低下によって発行体の準備金収益が縮小するほど、市場の価値は実際の利用量が蓄積する決済・運用レイヤーへ移ると整理されています。

重要ポイント

発行市場は、信頼、流動性、規制対応、配布網による規模の経済が強く働きます。約$300Bの市場のほぼすべてをドル連動型が占め、TetherとCircleが先行者優位を確立しています。ただし、発行体の業務は実際には、ライセンス、準備資産の管理・保管、Mint・Burn、流通という機能に分解されています。CircleがCoinbaseに流通を依存し、TetherがCantor Fitzgeraldに準備資産の保管を委ねているように、発行事業そのものも専門企業の組み合わせで成立しています。
CircleとCoinbaseの収益分配は、発行より流通が重要であることを示す例です。Coinbase上のUSDCから生じる利息はCoinbaseが受け取り、Circle上のUSDC分はCircleが受け取ります。両社の外部で流通するUSDCの準備金収益は50対50で分けられます。Circleは利益の一部を流通パートナーへ渡すことで、USDCの利用範囲とネットワーク効果を拡大しています。
そのため、新規参入者がTetherやCircleと同じ準備金利息モデルを正面から追うのは難しく、Issuance-as-a-Service、地域通貨、カストディ、ライセンス、配布といった特定機能で不可欠なミドルウェアになる方が現実的です。今後の競争は、誰が最大量を発行するかだけでなく、ステーブルコインが動き、使われ、運用される過程のどこを支配するかで決まります。

読みどころ

オンランプでは、法定通貨をステーブルコインへ変換する際の手数料とスプレッドが主な収益源です。利用者が支払うコストは銀行振込で2〜4%、カードで4〜7%程度ですが、事業者が実際に得るTake Rateは約3%へ収れんしています。変換機能だけでは差別化しにくいため、MoonPayのように多数のWalletやアプリへ組み込むEmbedded型、TransakのようなB2B White Label型、複数サービスから最安経路を選ぶAggregator型へと事業モデルが分かれています。
送金では、オンチェーン上の資金移動自体はほぼ無料であるため、収益は両端の法定通貨変換と規制対応に集まります。米国のMoney Transmitter License取得には州ごとに12〜24か月かかるため、ライセンスをサービスとして提供するCompliance-as-Infrastructureが強い参入障壁になります。
給与サービスのRiseは、この構造を分かりやすく示しています。同社が販売しているのは単なるUSDC送金ではなく、KYC・AML、各国の契約書、税務書類、雇用関係の管理です。1人あたり月額$50または支払額の3%に加え、EORでは1人あたり月額$399を徴収します。さらに、給与支払い前後の待機資金をAaveで運用し、利息の1%を受け取ります。無料に近い送金機能の周囲に、継続課金、法的責任、資金運用という収益源を重ねています。

示唆

決済レイヤーでは、消費者向けカードブランドより、その裏側で発行、認証、清算、運転資金を管理するインフラに大きな収益機会があります。カードのInterchangeはネットワーク、発行銀行、Gatewayなどに分配されるため、表面のカード事業者が得られる利益は限定的です。一方、発行ライセンスや決済網との直接接続を持つ事業者は、Interchange、Program Management Fee、FX Spread、準備金利息を獲得できます。
Rainはその代表例で、WalletやNeobankが自社ブランドのカードを提供するためのバックエンドを担っています。決済は通常のVisa・Mastercard網で認証されますが、Rainはユーザーのオンチェーン残高を即時に反映し、カードネットワークとはUSDCで毎日決済します。銀行のCut-off Timeに縛られないT+0決済と、カード債権を担保としたオンチェーン借入によって、従来型発行体より担保要件を最大60%減らせるとされています。
利回りレイヤーでは、ステーブルコイン市場がオンチェーン資産運用業へ発展しています。AaveやMorphoが貸借の基盤を提供し、その上でSteakhouseやGauntletのようなRisk Curatorが担保選定、LTV、資金配分を設計し、管理報酬や成功報酬を得ます。Steakhouseは20人未満で約$1.7Bを管理しており、スマートコントラクトによって会計、決済、保管を共通基盤へ委ねることで、伝統的な資産運用会社より軽いコスト構造を実現しています。
最終的に本稿は、ステーブルコイン産業の重心が「下方」と「内側」へ移っていると結論づけています。下方とは、金利低下で発行収益の魅力が落ちる一方、利用が増えるほど価値が高まる決済・清算・運用基盤へ利益が移ることです。内側とは、ステーブルコインが伝統金融を置き換えるのではなく、その内部へ組み込まれていくことです。StripeによるBridgeの買収や、カードネットワークによる越境決済基盤への進出が示すように、勝者は既存金融の顧客基盤や規制ライセンスと、ステーブルコインの効率性を垂直統合できる企業になると考えられます。

▍株式と分岐したQ2クリプト市場の縮小と投機需要の偏在

要約

本稿は、2026年Q2のクリプト市場が3四半期連続の下落となり、時価総額、ステーブルコイン供給、現物取引量がそろって縮小した状況を整理しています。市場全体の時価総額は前四半期比12.6%減の$2.1Tとなり、2024年9月以来の低水準まで下落しました。2025年10月のピークからは約52%減少しています。
特に6月は、Federal Reserveのタカ派姿勢、米国とイランをめぐる緊張、ETFからの資金流出、Strategyによる象徴的なBitcoin売却が重なり、年間で最も厳しい下落局面となりました。Bitcoinは14.2%、Ethereumは25.4%下落した一方、米国株は回復しており、クリプトと伝統的なリスク資産の値動きが明確に分岐した四半期でもあります。
ただし、市場全体が冷え込む中でも、Prediction Market、Tokenized Collectibles、Perpetual Futures、HYPEなどには投機需要が残りました。つまり、Q2はクリプト全体から資金が一様に抜けたのではなく、主要資産や現物市場から、一部の高回転・イベント主導型市場へ関心が偏った局面として捉えられます。

重要ポイント

市場縮小を象徴するのが、ステーブルコイン時価総額の減少です。総額は前四半期比1.6%、$4.8B減の$305.1Bとなり、2023年Q3以来初めて縮小しました。価格下落だけでなく、待機資金として機能するステーブルコインそのものが減ったことは、クリプト市場から資本が純流出した可能性を示しています。
銘柄別では、USDCが$3.7B減の$73.5Bとなり、最大の流出を記録しました。一方、USDTはほぼ横ばいの$184.4Bを維持し、市場シェアを60%へ拡大しています。USDSは16.4%、USDeは24.4%減少しました。背景には利回りの低下があり、sUSDSやsUSDeの利回りがリスクフリーレートを下回ったことで、保有者がUnstakeしたと説明されています。
取引活動も大幅に鈍化しました。市場全体の1日平均取引量は前四半期比20.9%減の$93.1Bとなり、上位10のSpot CEXの取引量は27.9%減の$1.95Tまで落ち込みました。5月には月間$619Bと年間最低水準を記録しています。Binanceは38.7%のシェアを維持し、弱気相場でも支配力を拡大しましたが、MEXCは取引量が半分以下となり、順位も2位から7位へ低下しました。

読みどころ

読みどころは、現物市場が縮小する一方で、Perpetual FuturesやPrediction Marketのような短期売買型市場が比較的強さを保った点です。上位10のPerp CEXの取引量は前四半期比10%減の$12.7Tでしたが、Spot CEXより下落率が小さく、毎月$4Tを上回る取引量を維持しました。方向性の弱い相場でも、レバレッジを使って上昇・下落の双方を取引できるPerpsに需要が残ったことを示しています。
Prediction Marketの想定元本ベース取引量はQ2に$113.8Bへ達し、前四半期比48.7%増加しました。6月だけで$50.7Bとなり、過去5か月平均を91.9%上回る過去最高を記録しています。UEFA Champions League Final、NBA Finals、FIFA World Cup、Wimbledonなどの大型スポーツイベントが集中したことが主因です。
この成長は特にPolymarketの取引構成に表れており、Sports契約の比率は1月の40%から6月には81%へ上昇しました。ただし、シェアではKalshiがQ1の42.4%から58.9%へ拡大し、Polymarketは35.8%から30.2%へ低下しています。RobinhoodとSIGのJoint VentureであるRotheraも、5月の開始後すぐに6月の取引量が$2.1Bに達し、4位へ浮上しました。

示唆

本稿の示唆は、2026年Q2の弱気相場が、単なる価格調整ではなく、クリプト市場の資金構造そのものを変えた可能性があるということです。米国株がAI関連銘柄などを中心に回復する中、BitcoinやEthereumは下落を続けました。クリプトが株式市場と連動する一般的なリスク資産ではなく、固有の資金流出、ETF需給、レバレッジ解消、収益機会の不足によって売られたことを示しています。
一方で、すべての需要が消えたわけではありません。Prediction Market、Perps、RWA Perps、HYPE、Tokenized Collectiblesなど、明確なイベント、レバレッジ、ゲーム性、新しい流動性を持つ領域には資金が集まりました。Collector Cryptの月間取引量は1月の$97Mから6月には$406Mへ317%増加し、Tokenized Collectibles市場の62.8%を占めています。
ただし、Collector Cryptなどの取引量の98%以上が、二次流通ではなくランダムなNFTを購入する「Gacha」機能から生じています。これはTokenized Collectiblesが成熟した収集品市場として成長したというより、ランダム報酬を伴う高回転型の消費・投機商品として拡大した側面が強いことを意味します。
最終的にQ2は、主要資産、ステーブルコイン、現物取引が縮小する一方、短期的でゲーム性の高い市場へ取引が集中した四半期でした。市場回復を判断するには、BitcoinやEthereumの価格だけでなく、ステーブルコイン供給が再び増加するか、Spot取引量が戻るか、現在の投機的な需要が持続的なユーザー活動へつながるかを見る必要があります。なお、本文にはPrediction Marketの成長率と取引量、Spot取引量の下落率について一部表記の不一致がありますが、全体として現物市場よりデリバティブやイベント型市場が相対的に強かったという方向性は一貫しています。

▍TradFiが求めるのはDeFiではなく制御可能なブロックチェーン基盤

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