BNBチェーン拡大 の背景を解剖する|PancakeSwap / FourMeme のUAW・Volume分析―アプリケーション勢力図から見るクリプト市場(2025年10月)

2025年11月05日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
本稿では、2025年10月時点におけるBNBチェーンの動向を、dAppsアクティビティの観点から検証します。
同月は多くの主要チェーンでユーザー数が減少する中、BNBチェーンだけが際立った拡大を示しました。その背景には、ミーム市場の再燃、主要dAppの機能進化、そしてオンチェーン活動を促すキャンペーン施策など、複数の要因が重なっています。
そこで本稿では、PancakeSwap V2/V3および FourMeme に着目し、BNBチェーン上におけるユーザーアクティビティ(UAW)と取引量(Volume)の推移を整理します。
こうした動きが短期的な熱量にとどまるのか、それとも基盤利用の定着を示す兆候なのかを見極めることは、BNBチェーンの今後の位置付けや持続性を考えるうえで示唆を与えるものと考えられます
図表1.dAppsトレンド30日:UAW[横軸]×dApps取引量($Volume[30d])[縦軸]×ΔUAW[バブルサイズ]
図表1は、2025年10月における主要チェーン(取引量1百万ドル超)のdApps利用動向を、UAW(ユニークアクティブウォレット数)×取引量×ΔUAWの三軸で可視化したものです。各チェーンにおけるユーザー活動と取引高の方向性を俯瞰し、アプリ利用ベースでの勢力変化を把握することを目的としています。
10月は多くのチェーンでアクティブユーザー数が減少した一方、BNBチェーンは前月比+200万アドレス増と際立った拡大を示しました。
これに対し、NEAR(−900万)、Solana(−500万)、Base(−200万)は軒並み減少し、アプリ利用ベースでの勢力図に明確な転換が生じています。
結果として、BNBチェーンは月間UAW約600万アドレスを記録。
NEAR(約4,300万)やSolana(約1,500万)、Sei(約1,400万)には及ばないものの、取引量ではBaseやSolanaを上回り、ユーザー活動と資金流動の両面で、BNBチェーンが2025年10月時点で最も勢いのあるアプリエコシステムとなったことが確認されます。
図表2.時価総額の比較(2025-10-01→2025-10-31,USD,logscale)
こうしたユーザー活動の拡大を背景に、BNBのネイティブトークン$BNBは史上最高値を更新。時価総額でXRPを抜き、BTC・ETHに次ぐ第3位へと浮上しました(図表2参照)。
図表3.UAWvsVolume四象限マップ:5チェーン比較(実数スケール)
図表3では、直近30日間にUAWの変動が大きかった主要5チェーン上のdAppを対象に、UAW(横軸)と出来高(縦軸)の推移を四象限で整理しています。多くのアプリが中央付近に集まり全体としては横ばい傾向ですが、一部では顕著な増減が見られました。
特に目立つのがBNBチェーン上のPancakeSwapV2/V3で、いずれもUAW・出来高ともに上昇。とくにV2は約100万アドレス増加と取引高の大幅拡大を記録しました。さらに、同チェーン上のミームコインローンチパッド「FourMeme」も50万アドレス超の増加を示し、ユーザー層の広がりが確認されます。
一方で、SolanaのPump.fun(−228万)およびRaydium(−140万)
BaseのUniswapv4SeiのDragonSwapなどはUAW・出来高ともに減少傾向にあります。
特にSolanaでは、Pump.funとRaydiumの2アプリだけで約268万アドレスの減少が生じ、これは図表1で示したSolana全体のUAW減少(−500万)の約半数に相当します。
こうしたデータから、2025年10月はアプリ単位で勢力再編が進んだ月であることが明らかであり、とりわけDEXやミーム系アプリを中心に、Base・Sei・SolanaからBNBチェーンへとユーザー活動の重心が移行しつつある様子が見て取れます。
次の節では、このBNBチェーン内で顕著な動きを示したPancakeSwapとFourMemeの2つのdAppを中心に、UAWと出来高の推移、および関連イベント要因を踏まえながら、この変化が一時的な盛り上がりなのか、それとも構造的な定着を示唆しているのかを検証していきます。

この変化は一時的な盛り上がりなのか?、それとも構造的な定着を示唆しているのか?

――BNBチェーン上の主要dAppにおけるユーザーアクティビティ(UAW)と取引量(Volume)の推移

前節で見たとおり、2025年10月のBNBチェーンは、他の主要チェーンがユーザー減少に転じる中で際立った拡大を示しました。
では、この成長は一時的なミーム市場の過熱によるものなのでしょうか。それとも、BNBチェーン上のアプリ利用が構造的に定着しつつある兆しなのでしょうか。
本節では、BNBチェーン上の主要dApp――特にPancakeSwapV2/V3およびFourMeme――に焦点を当て、ユーザーアクティビティ(UAW)と取引量(Volume)の推移からその実態を検証します。
分析の論点は大きく三つに整理できます。
  1. 短期的要因:ミーム市場による一時的なブーム
    10月のUAW急増は、FourMemeなどを中心とするミーム市場の再燃が主因と考えられます。この現象は、BNBチェーンへの短期的な資金流入やユーザー拡大をもたらした一方で、持続性には疑問が残ります。

  2. 中期的要因:プロトコル進化による利用定着
    同時期に、PancakeSwapV3では「Infinity」への移行が進み、取引効率や流動性提供の柔軟性が大幅に向上しました。こうした機能面での進化が、BNBチェーンの安定的な利用基盤の形成に寄与している可能性があります。

  3. 連鎖的効果:アクティビティ増加がネットワーク価値に波及
    UAWとVolumeの増加は手数料収入やトークンバーンを通じてBNBトークン価値に還元され、「アクティビティ→手数料→バーン→価格上昇」という好循環が生まれつつあるように見受けられます。
これらの観点から、以下ではBNBチェーンの主要dAppにおけるUAWと出来高の推移を詳しく見ていき、この変化が一過的な盛り上がりなのか、それともネットワークの構造的な成熟を示唆しているのかを検証していきます。
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