Ethereum2.0のステーキングをより深く理解する 各種サービスの種類、投資家に有利なステーキング戦略など

目次

  • 前提
  • PoSのステーキングの参加要件・報酬の仕組み・スラッシュ
  • フェーズ0が開始されるまでの要件と現在のステータス
  • サードパーティーサービスの形態の種類
  • サードパーティーサービスの代表的事業者
  • 資産運用者の立場で注目のステーキング手法
  • 総論

前提

本レポートでは、Ethereum2.0のステーキングをより深く理解することを目的にステーキング要件や、各種サードパーティーサービスの種類、代表的事業者などを紹介します。
2020年11月にEthereumのブロックチェーン上にデポジットコントラクトが公開されました。ETHの保有者はすでにこのデポジットコントラクトを使ってステーキングをすることが可能です。ステーキング量が閾値まで達するとEthereum2.0の骨子となるBeacon Chainのブロック生成が始まります。
なお、本レポートを読む前提となるEthereum2.0の基本的情報は下記で解説しています。
関連レポート:Ethereum2.0 コンプリートガイド(2020年11月版)仕組み・ロードマップ・ステーキングの要件・マーケットへの影響
https://hashhub-research.com/articles/2019-08-01-ethereum2-overview
今回のレポートでは、実際にETHを保有するユーザー目線でEthereumのステーキングを深く理解することを試みます。

PoSのステーキングの参加要件・報酬の仕組み・スラッシュ

まず、ユーザーがステーキングをしてバリデーターとして参加する要件について解説します。後述するようにEthereum2.0のステーキングには様々なサードパーティーサービスがありますが、本節ではあくまでプロトコルとしてのステーキング参加要件や報酬の仕組みを解説します。

バリデーターになる要件

Ethereum 2.0は、なるべく多くのノードがバリデートに参加できることを優先してデザインされており、ラップトップPCやラズベリーパイのようなシングルボードコンピュータでも運用ができます。1ノード32ETHをステーキングして、ラップトップの場合3~10スロット、ラズベリーパイで最大3スロット程度のノード運用できるとされています。100スロット(3200ETHのステーキングなど)の場合は、専用サーバーなどの環境が推奨され、AWSなどで運用することになります。
Ethereumのステーキングへの参加は他のブロックチェーンと比較してシンプルですが、それでも一般の人が自宅で環境を整備することには一定のハードルがあると言えるでしょう。
また、フェーズ0でステーキングしたユーザーはしばらくの間そのETHを1.xチェーン(これまでのEthereumブロックチェーン)に引き出すことができません。引き出し可能になるのはおそらくフェーズ2のローンチまで時間がかかるはずで、つまり1年半−2年、あるいはそれ以上の長期にわたり、1.xチェーンにETHを戻せない可能性を考慮してステーキングに参加する必要があると言えます。

PoS参加に対するETHの報酬、インフレーションレート

PoSのステーキングに参加した場合どの程度の報酬を得られるかは下記の表のとおりです。
参照 https://github.com/ethereum/eth2.0-specs/pull/971
報酬は、ステーキングされているETHの総量とリワード率(≠インフレ率)が反比例します。ネットワーク全体でステークされるETHの数が増えれば増えるほど、1バリデーターノードへのリワード率は減っていく仕様になっています。ノードの数が少ない時には報酬率が高く、ノードの参加を促す仕組みになっています。逆に十分にバリデーターノードが稼働している場合は報酬を減らして、ネットワークの新規トークンのインフレーションを抑える仕組みになっています。

フェーズ0が開始されるまでの要件と現在のステータス

Ethereum2.0のフェーズ0、つまりBeacon Chainのローンチは、Ethereum1.xのデポジットコントラクトにETHの最低ステーキング量が達成するまでは開始されません。
最低ステーキング量とは、524,288ETHのデポジットと16,384のバリデーターです。この要件を2020年11月24日までに満たしていた場合、2020年12月1日のPM12:00UTCにBeacon Chainがローンチをします。もし上記条件を達成できない場合はローンチは後ろ倒しになり、その場合、条件達成から7日後にBeacon Chainがローンチされます。
デポジットコントラクトにどれだけのETHがステーキングされているかは下記のサイトから閲覧できます。(参照:https://launchpad.ethereum.org/ ) 執筆している11月12日時点で57,729 ETHがステーキングされています。Ethereum創業者Vitalik Buterin氏もEthereum2.0のデポジットコントラクトに3200ETHをデポジットしています。(参照: https://www.coindesk.com/vitalik-buterin-sends-1-4m-of-ether-in-preparation-for-ethereum-2-0-staking
Beacon Chainがローンチする閾値に達成するにはあと10倍のETHがステーキングされる必要があり、要件クリアは簡単ではない状況です。
なお、要件をぎりぎり満たしてローンチした場合は、ネットワーク全体に対するETHのステーキング量が少ないことからステーキング報酬率は約20%と極めて高く推移するはずです。
一方で執筆時点でステーキングが集まらないのは、Ethereum2.0のデポジットコントラクトにいち早くステーキングをするインセンティブがないためであると考えられます。すでに述べた通り、そもそもEthereum2.0のステーキングはETH2のトランザクションが長期にわたって行えず、ETH保有者にとってリスクが高い構造になっています。
そして、フェーズ0開始前にいち早くステーキングしても、フェーズ0開始の閾値を達成するまでは無報酬であることもステーキングが集まらない理由でしょう。つまり閾値達成ギリギリにステーキングした人と早くステーキングした人の報酬に差がありません。こういった理由から11月12日現在ではステーキングが順調に集まっているとは言えない状況です。

サードパーティーサービスの形態の種類

Ethereum2.0でステーキングに参加する際は、自身のコンピューターやAWSにEthereum2.0のクライアントをダウンロードして、オフラインにならないように運用する必要があることはすでに述べた通りです。
このようなノード運用は多くのユーザーにとって簡単ではありません。32ETHを保有しておらず、より少ない数量でステーキングしたいという場合もあるでしょう。そういった課題を解決する様々なサードパーティーサービスが準備されています。サードパーティーサービスもいくつかの種類に分かれており、以下にその大まかな形態を整理します。

取引所・カストディ

まず、ステーキングに対応している取引所に預け入れして、ステーキング報酬を得るという方法です。BinanceやCoinbaseなどの大手取引所は、COSMOSやPolkadotなどの銘柄でステーキングサービスを提供しており、Ethereum2.0も対応する可能性が高いでしょう。
  • 利点:最も簡単な方法であり、ステーキングに参加しやすい
  • 欠点:ETHの秘密鍵を完全にサードパーティーに預け入れる必要があり、サードパーティーリスクがある
  • 事業者例:各種大手取引所

ステーキングプール

次の方法はステーキングプールを利用するというものです。もし32ETHを保有しておらず、また取引所などに預け入れしたくない場合、ステーキングプールは良い選択肢です。ステーキングプールはEthereum上のスマートコントラクトにETHをデポジットして、そのスマートコントラクトにデポジットされたETHをコントラクトがマッチングして32ETHにして自動でステーキングをします。
  • 利点:サードパーティーリスクがない、自身で秘密鍵を保管できる
  • 欠点:スマートコントラクトリスクがある
  • 事業者例:Rocket Poolなど

バリデータアズアサービス

3つ目の方法はバリデーターアズアサービスと呼ばれるものです。
32ETHを保有していて、自分でノード運営はしたくない、だが自身で秘密鍵を保有したいというユーザーはバリデーターアズアサービスが選択肢になりえます。自身で秘密鍵を保有して、ノード運用だけをバリデーターアズアサービス運営事業者に委託する方法です。この場合、サードパーティーリスクがなく、自身で秘密鍵を保管できます。
  • 利点:サードパーティーリスクがない、自身で秘密鍵を保管できる
  • 欠点:一般的に他の手法と比較して費用が高い
  • 事業者例:Staked
また、これ以外にB2Bで取引所向けにステーキングのインフラストラクチャーを提供する事業者も存在します。例えばConsenSysがその1つで、同社はEthereum2.0のステーキングインフラストラクチャーを開発し、既にBinance、Crypto.com、DARMA Capital、 Huobi Wallet、Matrixportらがこれを使用することを表明しています。(参照:https://consensys.net/blog/press-release/consensys-codefi-announces-ethereum-2-0-staking-pilot-program-with-six-members/

サードパーティーサービスの代表的事業者

また、下記にサードパーティーサービスの代表的事業者をアルファベット順に一覧します。

資産運用者の立場で注目のステーキング手法


Ethereum2.0のステーキングは資産運用者の立場で見る場合、リスクが大きく、それは主に以下の2つの点に整理されます。
  • まず、ETHをETH2トークンに変換する場合一方向ペグ(1way-peg)であり、フェーズ2まではETHに戻すことができないというリスクがある
  • 次にETH2トークンは、フェーズ1でアカウントとシャードチェーンが実装されるまで送受信のトランザクションの実行ができない。つまりETH2トークンを売却することもできないというリスクがある
このリスクを軽減させたり、補完したりするサードパーティーのサービスも複数登場しています。本節では投資家の立場で注目のステーキング手法をいくつか概観します。

Lido:ステーキングしている証書をトークン化して売却可能にするサービス

Lidoはステーキングプールのサービスの1つです。Lidoはユーザーの資産をマッチングして32ETHに纏めてステーキングするプロジェクトを公開しています。
ユーザーは、LidoのスマートコントラクトにETHをデポジットすると、stETHというトークンを受け取ります。これがEthereum2.0のBeacon Chain上にステーキングされたETH残高を表し、Beacon Chain上でトランザクションが有効になると、ETHに交換できるようになります。そして、それまでの期間、stETHは現Ethereum上で取引や交換をすることが可能です。LidoはstETHを様々なDeFiプロジェクト上で取引可能にすることを目論んでいます。
これが実現するとユーザーがEthereum2.0にステーキングされた証書となるトークンが流動性を持ち、実質的に売却可能になります。また、CompoundのようなレンディングプロトコルがstETHに対応した場合、それを担保に資金を借り入れすることなどもできるようになるはずです。

Rocket Pool:自身でノードを運営して、かつステーキングプールでマッチングをしてより大きな報酬を得るサービス

もともと自身でEthereum2.0のノードを運営して報酬を得る予定だったユーザーは、Rocket Poolなどを利用してさらに大きな報酬を得ることも検討できます。
Rocket Poolは32ETHを保有していない小口ユーザーでもステーキングに参加できるステーキングプールです。その仕組みは16ETHを提供する大口ホルダーと、1ETH以上を保有する小口ホルダーをマッチングし、合同で32ETHの単位を作ることでより多くの人がステーキングに参加できるようにしています。この際、16ETHをプールに提供してノードを運用するバリデーターは小口ホルダーから手数料を徴収できます。つまり、自身のETHのステーキング報酬を得てさらにプール形成による手数料も得ることができます。なお、ノード運用者はプールを形成する際に、1ETHに対して一定比率のRPLトークンのロックが必要です。
関連レポート:ETHのステーキングプールを実現するRocket Pool概要とトークンモデルの分析
https://hashhub-research.com/articles/2020-05-10-rocket-pool-overview

LiquidStake  by DARMA Capital:ステーキングをしながらETHを担保にしてUSドルなどの資産を調達するサービス

暗号資産投資会社であるDARMA Capitalは、Ethereum2.0にステーキングされたETHを担保にしてUSDCを貸付するサービスLiquidStakeをローンチしました。このサービスでは、ユーザーはステーキング報酬を得ながら米ドルの資金調達ができます。運営会社はステーキング報酬の一部を受け取り、同時に貸付金利を得ます。
このように現在、様々なステーキング手法が登場しています。まだEthereum2.0のデポジットコントラクトがオープンになって間もないため、今後さらに多くのEthereum2.0のステーキング関連サービスがローンチするはずです。その中には、投資家にとって投資ストラテジーの幅を広げるものもあるはずです。

総論

本レポートでは、Ethereum2.0のステーキングをより深く理解することを目的にステーキング要件や、各種サードパーティーサービスの種類、代表的事業者などを紹介しました。
取り上げきれなかったサービスもありますが、代表的なものは網羅しているかと思います。レポート中で記した通り、今後さらに多くのEthereum2.0のステーキング関連サービスがローンチするはずで、投資ストラテジーの幅を広げるものもあるでしょう。
レンディングやDeFiのイールドファーミングの金利もこれらEthereum2.0の利回りに影響を受けるはずであり、そういった意味でもEthereum2.0は重要なトピックです。