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ERPの歴史と役割からブロックチェーンを考察する 及び将来におけるERPとブロックチェーンの連携

2020年05月07日

目次

  • 前提
  • ERPの歴史と導入の目的
  • ERP最大手SAP
  • ERPとブロックチェーン
  • ERPにブロックチェーンの機能追加するような動き
  • 日本におけるERP、およびブロックチェーン
  • 総論

前提

本レポートではERP(Enterprise Resource Planning)の歴史とその役割からブロックチェーンを考察します。及び、将来におけるERPとブロックチェーンの連携を考えます。
企業の管理部門や決済業務においてブロックチェーンを適用することは、しばしばERPと比較されたり、ERPのアップデートとして語られることがあります。
例えば、監査法人・コンサルティング企業であるEYは、ブロックチェーンにおける同社のビジョンを「Blockchains will do for networks of enterprises and business ecosystems what enterprise resource planning (ERP) did for the single company.」(ブロックチェーンはERPが単一の会社で行っていたことを複数社間のビジネスエコシステムで実現する)と述べています。EYはこの言葉を2016年頃から使用しており、2020年現在でも大きいビジョンとして掲げ続けています。
本稿では、改めてERPを振り返り、その文脈からブロックチェーンを考えます。

ERPの歴史と導入の目的

ERPが果たしている役割を一言で表現すると、「現実の企業活動をコンピュータ内に忠実に再現し、あらゆる数値として記録することによって、経営資源を最適配置するためのデータを経営者に提供するシステム」であると言えます。
例えば製造業を例にするのであれば、原材料を調達し、加工、組み立てをして付加価値をつけて納品、またはそのままマーケティングまで行い販売するケースがあります。この際に、ある時点で製品の製造ライン第一段階にどれだけの製品が存在しているか、およびそこに人件費がどれだけかかっているか、また、原材料の仕入れ価格も時期によって変わるためそれを記録する等、ERPはその企業に必要なデータを記録します。
ERPは、部門・支社・支店などの組織構造を忠実に再現し、取扱製品・得意先・仕入先などをマスター化します。そして原材料の仕入れ・組み立て・倉庫からの在庫引当・出荷などを伝票として発生の都度まとめています。
ERPは今ほとんどのグローバル企業の基幹システムとして機能していますが、それが導入される1990年代以前に起こっていた問題は、部門別の管理システムがサイロ化しているという問題でした。ここでのサイロ化がどのようなものかというと、再び製造業の例では、ある組み立てラインにあるシステムが、原材料を調達する部門のシステムと切り離されており、非効率が発生するというものです。その当時は、調達部門、販売部門、製造部門などで社内の管理システムがそれぞれ別々に開発されていました。これを部門ごとに必要な情報も管理できながら、全体の数値はマスター化されるというのがERPでした。
ERPの導入を推進する企業がよく使用していたキャッチコピーは「ワンファクト、ワンプレース」という言葉です。事実は一つだけであり、各部門はそのデータを必要に応じて更新出来ながらも、一つの真となる事実は一箇所で記録されているというキーワードで今に至るまで20年以上用いられる概念です。
ERPは1990年代から広がり今も様々な機能が追加され、市場が伸び続けています。
かつて大企業向けにオンプレミスで構築された汎用大型システムだったERPも、近年は中小企業などのニーズの高まりから、各業種・各業務にフィットしたさまざまなタイプが登場しています。近年のインターネット環境の進化を受けて、SaaS型による提供なども始まっており、SaaSを使用したクラウド型ERPを導入する企業が増え続けています。
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