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論考・新型コロナウイルスの危機対応から見る中国のデジタル社会インフラ及びガバナンス

2020年04月20日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 問われる社会のデジタル化、感染拡大対策において問われる要件
    • 1. 非常事態においての情報共有
    • 2. 感染者の追跡
    • 3. 医療物資・資源の効率的な分配
    • 4. オフラインの業務を必要としない公共機関
    • 5. 政府の強いリーダーシップのもと官民が協力出来る体制
  • 新型コロナウイルス対策に有効を示した中国のデジタル化の10の事例
    • 1. 大手IT企業と政府自治体の連携による情報共有プラットフォーム
    • 2. 大手IT企業による感染者の追跡
    • 3. 医療資材の効率的な配布
    • 4. 高まる資金需要に対する銀行業務の効率化
    • 5. 非常事態下で威力を発揮する新しい金融サービス 
    • 6. 公共機関のデジタル化
    • 7. 自動配達ロボット
    • 8. オンライン診療・AI画像診断システム
    • 9. 新型コロナウイルス状況下においても顧客から利用をされるOMO小売店
    • 10. 教育のデジタル化
  • 中国が示すデジタル社会の効率性、そのコア技術としてのブロックチェーン・AI・ロボティクス
  • 新型コロナウイルス後の世界においてのデジタル社会インフラ及びガバナンス
  • 総論

前提

本レポートでは、COVID-19(以下新型コロナウイルス)の危機対応から見る中国のデジタル社会インフラ及びガバナンスについて概観および論評を行います。
新型コロナウイルスが猛威をふるい世界の主要先進国の経済が停止に追い込まれています。その中で社会のデジタル化やITを利用した感染症対策が注目されています。その観点において最も注目されるのは中国の取り組みであるということに異論がある読者はそう多くはないでしょう。感染者数の報告の真正性には疑問が投げかけられるものの、様々なIT技術を動員して、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んでいることはほとんど間違いないと思われ、2020年4月前半時点ではいくつかの省は経済活動を再開させています。国家主席の習近平は、ウイルス発生地の武漢を訪問して3月前半にも事態収束をアピールしています。
政府の隠蔽性質が指摘されることを差し引いても、中国の新型コロナウイルスに対する対処は目を見張るものがあるといえ、本稿ではその際に同国が動員したデジタルソリューションの一部を概観します。そして、新型コロナウイルス後の世界においてのデジタル社会インフラ及びガバナンスを考えるきっかけとすることを目的とします。

問われる社会のデジタル化、感染拡大対策において問われる要件

今回の新型コロナウイルス感染拡大後、オフラインの経済活動が制限されることによって、職場環境をデジタルに移行し、経済活動にデジタルを取り入れる動きが強まっています。日本においても在宅勤務や契約の判子文化などの見直しが進んでいます。
感染拡大対策において問われる主な要件はおおよそ以下になるでしょう。これら全てが社会のデジタル化に関わるものです。

1. 非常事態においての情報共有

まず非常事態においての国民の情報共有手段です。現在の感染者数やクラスターが発生している地域、利用出来る病床の数が公開される必要があります。

2. 感染者の追跡

感染者の経路追跡は、個人のプライバシーとして隣り合わせですが、新規感染者数を減らす手段として必要要件です。

3. 医療物資・資源の効率的な分配

医療物資や資源の効率的な分配が必要となります。医療崩壊を避けることは最優先事項であると言えます。

4. オフラインの業務を必要としない公共機関

感染拡大下において、役所に行くことや紙の書類をやり取りすること自体がリスクとなります。日本においても既に指摘されているように民間がデジタル化を進めても、役所の機能がアナログでは社会のボトルネックになってしまいます。

5. 政府の強いリーダーシップのもと官民が協力出来る体制

新型コロナウイルスの感染対策にIT技術が有効な場合があると認知していたとしても、政府単体でそれを実行することは現実的ではありません。政府の強いリーダーシップのもと官民が協力出来る体制が重要となります。
以上の特に重要な5要件を前提においた上で、中国が新型コロナウイルスに対してどのように対処しているか次章から事例を見ていきます。
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