リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2025年10月19日号
2025年10月19日
リサーチメモ(derio)
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- 今週1週間分のニュースを紹介
- ▍DATsの錬金術:プレミアム発行で資産を増やす公開企業戦略
- ▍Visaのレポート、ステーブルコイン・レンディングの急成長を強調
- ▍2025年ICOの復活:設計された資金調達モデル
- ▍Pantera Capital、Web3インフラに戦略的投資を集中
- ▍2025年第3四半期、クリプト市場が4兆ドルに回復しDeFiが急成長 | CoinGecko
- ▍Polymarketの予測精度と市場参加者の分析
- ▍デジタル資産カストディ市場、機関投資家向けサービスで急成長
- ▍Collector Crypt、ポケモンカード市場のeBayキラーになれるか
- ▍ERC-Sによるロボティクス企業のトークン化とハイブリッドガバナンス
※免責事項:このレポートは部分的に生成AIで作成されており、査読は行われていますが必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。
前提
本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。
また、本シリーズは今週1週間分のニュースをまとめたものになります。リアルタイムで情報をキャッチアップしたい方は、「HashHub Research ニュース」をご利用ください。
今週1週間分のニュースを紹介
▍DATsの錬金術:プレミアム発行で資産を増やす公開企業戦略
概要
本稿は、デジタル・アセット・トレジャリー(DAT)の「錬金術」を、メカニクス(仕組み)、メトリクス(指標)、ミステイク(落とし穴)という視点で整理したものです。DATは暗号資産そのものを保有するのではなく、上場企業という“ラッパー”を通じて資産を抱え、資本市場の仕組みを活用して基礎資産以上の価値を創出しうる存在として急拡大しています。一方で、レバレッジ設計、負債通貨の選択、流動性とボラティリティの確保を誤ると、NAV割れや強制清算の連鎖につながるリスクも明確です。
DATとは何か
DATは自社のバランスシートでBTC、ETH、SOLなどの暗号資産を保有し、その保有純資産価値(NAV)に対して株式市場で取引されます。上場という形を取ることで、年金や保険、伝統的ファンドなど直接トークンを保有しづらい投資家にエクスポージャーを提供し、転換社債や優先株などの多様な調達手段も使える点がETFと異なる特徴です。
プレミアムと希薄化逆転の錬金術
基礎資産100のソラナを抱える会社が市場で2倍のmNAV(時価総額/NAV)で評価されているとき、会社は2倍の株価で新株を発行して現金を調達し、さらなるSOLを買い増せます。プレミアムが維持される限り、希薄化しても一株あたりの基礎資産はむしろ増え、既存株主の価値は上がります。いわば「プレミアムで調達→原資産を増やす→時価はプレミアム込みで拡大」という正のスパイラルがDATの本質です。
DATの資金調達メニュー
DATは通常の公募だけでなく、機動的に売出できるATM(At-the-Market)増資、極低クーポンで発行可能な転換社債、配当付きで希薄化を抑える優先株、シニア有担保債、PIPEのような私募といった多層の調達を使い分けます。特に転換社債は、株式の高いボラティリティを背景にコンバーティブル・アーブ資金がデルタヘッジで利ざやを抜けるため、発行体は超低金利での資金調達が可能になります。ボラティリティと出来高、上場オプション市場の厚みがここでは命綱になります。
なぜDATが求められるか
巨大な年金や保守的機関は口座制約や規制のためトークン現物に直接アクセスしづらい現実があります。上場ラッパーであればブローカー口座で保有でき、債券や優先株など投資家の嗜好に合わせた器も用意できます。さらに一部DATはステーキングやバリデータ運用でネットワーク安全性に寄与しつつ追加収益も狙います。
ローカルな制度差が生む「需要」
日本では株式の譲渡益・配当が約20%課税(NISA枠は非課税)である一方、個人の暗号資産益は雑所得として高率になるため、上場ラッパー経由の需要が生まれます。香港でもETF導入前は、上場会社が直接暗号資産を保有することでローカル投資家が証券清算の配管でアクセスできる利便がありました。税と配管の現実が、DATの実需を形成します。
市場概観と到達点
DAT全体の保有資産は推計で1000億ドル超の規模に達し、その8割超はビットコインです。一部企業はATMで巨額の調達を継続し、ETHやSOLの大型トレジャリーも登場しています。もっとも、初期のアナウンス効果は剥落し、mNAVプレミアムは均される傾向が見られます。
価値創出の三本柱
価値創出の第一はプレミアム発行による資本増殖です。第二はステーキング収益で、ETHで年2.5〜3%、SOLで年7〜9%が目安となり、トレジャリーを「生む資産」に変えます。第三はSOLのようなプレマイン資産でのロック割引調達で、解禁とともに割引分が実現益化します。とりわけSOLの「割引+ステーキング」の複合は、BTCトレジャリーより構造的に収益力が高くなりえます。
レバレッジと通貨のリスク設計
レバレッジは下落局面の生存確率を左右します。たとえばBTCのボラに対して12%NAV相当の負債を上限20%に抑える設計は保守的ですが、よりボラの高いSOLでは一段と低レバレッジが望ましいはずです。さらに負債通貨も重要です。SOL建てインカインドの転換債なら価格が下がっても現物返済で済みますが、USD建てなら相場急落時にも元本額面で返済義務が残り、追い込まれて安値で原資産を売る連鎖を招きます。
mNAV割れが示すサインと打ち手
株価がNAVを下回るとプレミアム発行の錬金術が止まり、調達が難しくなります。選択肢は三つで、ETFのようなオープンエンド化で償還を可能にしてディスカウントを閉じる、自己株買いで株価をNAVに戻す、あるいはM&Aで資産規模と流動性を一気に拡大する方法です。実際、BTC保有企業の買収でプレミアムを取り込みにいく動きが出ています。
情報開示の盲点
大規模トークン配分の発表が、新規の買い圧ではなく既存保有者からの現物出し(インカインド)に過ぎないケースも見られます。名目調達額が大きくともネットの新規資金流入は限定的という事例は珍しくなく、価格設定やロック条件の開示精度が銘柄評価に直結します。
大半が失敗する理由と階層化
根本的に、DATの成否は基礎資産の生存と流動性に依存します。多くのアルトは数年で競争力を失いがちで、BTC、ETH、SOLのようなコア以外は長期戦で淘汰されやすい現実があります。さらに調達手段の「階層化」も進みます。上位DATは高ボラ・高出来高・厚いオプション市場を背景にゼロ金利近傍の転換社債とATMを回し、優位が自己強化されます。中位は数%クーポン、下位はエクイティのみと条件が厳しく、構造的に差が広がりやすい構図です。
投資家と創業者への示唆
投資家は基礎資産の質に加えて、mNAVの安定、出来高とオプション流動性、転換社債を低コストで回せるかという「市場装置の充足」を重視すべきです。創業者はレバレッジ上限の規律、負債通貨の整合(可能な限りインカインド)、NAV割れ時の選択肢設計、そして情報開示の一貫性を守る必要があります。プレミアムが資本政策の“エンジン”である以上、それを支えるボラティリティと流動性、信頼できる配当・ステーキング方針の三点セットを欠かしてはなりません。
結論
DATは「プレミアムで資本を呼び込み、資産を積み上げ、さらにプレミアムを強化する」という資本市場の幾何級数的な力を、暗号資産に接続する発明です。だからこそ設計の粗は拡大局面で見えにくく、逆風で一気に露呈します。勝者の条件は、良質な基礎資産、規律ある負債とレバレッジ、流動性とボラを惹きつける市場存在感、そしてNAVとの健全な張り付きです。錬金術は魔法ではありません。装置の作りと運転の巧拙が、プレミアムを価値に変えるか、幻に終わらせるかを決めます。