【特集:GW選書】HashHubチームがこの2026年ゴールデンウィークに読んでいる、またはオススメの書籍

この記事を簡単にまとめると(AI要約)

はじめに

2026年も、すでに上半期の終盤に入りました。年初に立てた仮説や計画が、4か月のあいだに何度書き換えられたかを思い返すと、変化の速度は前年よりむしろ増しているように感じます。
クリプト市場では機関投資家の存在感がさらに大きくなり、ステーブルコインや国家・地政学とテクノロジーの関係も、これまでとは違う角度の論点を投げかけてきます。一方で、AIや働き方、お金との向き合い方など、もう少し個人の足場に近い話題も、あらためて整理し直したいタイミングかもしれません。
この特集では、HashHubメンバーがこの連休に実際に読んでいる、もしくはこのタイミングでもう一度読み直したいと考えた書籍を紹介します。年末年始の選書よりは少し肩の力を抜いて、「いま自分の関心の重心がどこにあるか」を確かめるための読書リストとして使ってもらえれば嬉しいです。

本特集の読み方

本特集では、書籍を以下の観点で紹介しています。
  1. キャリアと人生の設計を考える本
  2. 視点を広げる/肩の力を抜く本
  3. 国家・テクノロジー・主権を考える本
ジャンルや難易度は意図的に揃えていません。連休という時間に合わせ、読み手自身の関心やコンディションに応じて選んでもらうことを前提にしています。

【キャリアと人生の設計を考える本】

『好きなようにしてください―――たった一つの「仕事」の原則』楠木 建 著

推薦者:加藤 諒
人間は煩悩にまみれた存在です。
キャリアや仕事についても、「大企業かスタートアップか」「起業すべきか、もう少し修行すべきか」「30代になっても自分の適性がわからない」など、悩みは尽きません。
しかし、そうした悩みに対して、SNSや多くの自己啓発本が用意している答えは、煩悩をさらに増幅させるものか、結局は「頑張ろう」という根性論に回収されるものが少なくありません。
本書は、実際に著者の楠木建さんに寄せられた仕事やキャリアの悩みに対して、楠木建さんが痛快かつ本質的に回答していく一冊です。
例えば、
  • 人生はトレードオフであり、その本質は「何をやらないか」を決めること
  • 「最適な環境」など存在せず、環境選びに過度な意味を求めても仕方がないこと
  • 趣味と仕事は違い、仕事とは自分以外の誰かのためにやるものだということ
読み終えるころには、キャリアや仕事に対する余計な力みが抜け、物事の本質が少し見えやすくなるはずです。
キャリアに迷っている人、仕事の意味を考え直したい人、そして自分の中の煩悩に振り回されがちな人におすすめしたい一冊です。

『不運のすすめ』米長 邦雄著

推薦者:derio
将棋界の勝負師・米長邦雄さんによる「運」と「不運」の捉え方をまとめた1冊です。クリプト業界のように、相場、規制、技術トレンド、ナラティブが短期間で大きく変わる業界にいると、自分の努力だけではどうにもならない局面に何度も直面します。
ただ、本書を読むと、不運は単に避けるべきものではなく、次の一手を考えるための材料にもなり得るのだと感じます。形勢が悪い時にどう心を整えるか、目先の勝ち負けに振り回されず、長い勝負の中でどう粘るか。そうした問いに対して、将棋の勝負師ならではの現実的な視点を与えてくれる本です。
個人的には、不確実性の高い環境で事業開発、投資、プロダクトづくりに向き合っている人にこそ読んでほしい1冊です。連休中に読む本としても、「運が悪い時にどう考え、どう次の一手を打つか」を見つめ直すきっかけになると思います。

『アート・オブ・スペンディングマネー ― 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』


推薦者:Junya Hirano
お金の本というと、どう増やすか、どう守るかに寄りがちですが、「何のために使うのか」を扱っているのが本書です。
個人的には、資産形成の議論は日本でもかなり普及した一方で、資産の使い方の議論はまだ浅いと感じます。増やすのは手段であって、目的ではない。にもかかわらず、多くの人は「減ること」には敏感でも、「使わないことで失う人生」には鈍感です。本書はそれらを丁寧に言語化しています。
投資家ほど、資産額の最大化に意識が寄りやすいですが、本当に最適化すべきなのは人生全体の満足度のはずです。お金を貯める技術は知っている・生活に十分すぎるお金は既にあるけれど、それが目的化してしまっていると少しでも感じている人は読んでみて良い本だと思います。

『香山哲のプロジェクト発酵記』香山哲 著

推薦者:masao i
岡潔の『春宵十話』(1963年)に、こんな一節があります。「数学教育の目的は決して計算にあるのではない。かたく閉じた心の窓を力強く押し開いて清涼の気がよく入るようにするのにあるのだ。……計算が早い、遅いなどというのは問題ではない。私たちは計算の機械を作っているのではないのである」と。岡潔は別の箇所で、これをもう少し具体的に書いています。「計算能力だけのお先まっくらな目では、起ったことを批判できるだけであって、未知に向かって見ることはできない」。「閉じた心の窓を押し開く」とは、すでに起こったことの整理ではなく、未知に向かって見る目を持つこと——そう読めます。
コンピュータ普及以前に書かれたこの言葉が、論理展開もこなす「計算の機械」を手にした2026年に妙に刺さる。AIを否定したいわけではない——機械にできることは機械に任せればいい。それでも、私たちはAIを使っているのか、使わされているのか。気づけば深夜、忙しくしていないと不安だとでもいうように、目と耳をコンテンツで埋め続けたあとのような受動的な疲労感を覚えることが増えた。「計算が早い」処理で1日が埋まり、「未知に向かって見る」目は失われ、既知の「っぽいもの」が量産される。
香山哲『プロジェクト発酵記』は、漫画家本人が次の連載を立ち上げるまでの計画過程をそのまま漫画化した本です。アイデアを「散らかし」て「片付け」、「気が済む」まで自分にインタビューし、煮詰めて時間をかけて形にする過程が、試行錯誤を残したまま描かれている。AIが瞬時に出すアウトプットにはそもそも発酵時間がない——あるとしても、それは「わたし」の悶々ではない。AIに振り回されている自覚があるとき、開いて読み返したくなる一冊です。

【視点を広げる/肩の力を抜く本】

『フェルマーの最終定理』サイモン・シン著、青木薫訳

推薦者:Xuanrui Qi
数学は、基礎科学の中でも異質な学問です。重力や細胞のように実際に存在する「もの」を扱う他の自然科学とは異なり、数学が研究対象とするのはあくまでも抽象的な概念です。そのため、数学の営みは世の中にはなかなか理解されにくく、「数学者は何をしているのか」というのは多くの人にとって謎のままではないでしょうか。
本書は、「フェルマーの最終定理」という350年以上にわたって未解決だった難問と、その証明に挑んだ数学者たちの物語を軸に、数学的発見の本質と数学者の役割をわかりやすく描き出しています。中学〜高1レベルの数学知識しか求められていないので、「数学はちょっと苦手」という方にもお勧めできる一冊です。
現代は、数学がかつてないほど重要な時代になっています。「abc予想」の証明をめぐる話題がニュースに取り上げられ、暗号技術・機械学習といった先端技術もが数学を土台としています。だからこそ、数学と数学者を再認識することには大きな意味があります。「数学」という言葉に少しでも興味や好奇心を感じる方は読んでみて良い本だと思います。

『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む 〜走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚〜』


推薦者:野良の物理学徒
HashHubには似つかわしくないが、敬愛するオモコロから1冊紹介したい。
タイトルからもわかる通り、これまで本を読んだことがない男の変化を捉えたドキュメンタリー、あるいは単にエンタメである。
ただ、私には様々な感想が思い浮かんだ。
今回はその思いの1つを紹介文として提示させていただく。
この本内で最も深い読書をしているのは、最も読めていない人間である。みくのしんの読書は誤読や脱線に満ちているが、そのたびに確実に感情が動き、立ち止まり、考えている。流し読みで理解したつもりになる私たちより、むしろ深く読み、強く楽しんでいるように見える。他人の言葉ではなく自分の経験を重んじたミシェル・ド・モンテーニュの態度に照らせば、この読書は未熟ではなく純粋である。ただし体験だけでは足りない。読書とは、それを自分の言葉で再構成する営みである。

『「風の谷」という希望 ― 残すに値する未来をつくる』安宅和人 著


推薦者:Hiroki Morita
「働きたくないでござる」、「旅行先でリラックスしたい」、「引退したら田舎でゆっくり暮らしたい」、都市で暮らす中で、このような不満や欲求が生まれることは度々あるでしょう。それで都市に住む人は増え続けている。地方創生ってどういうことか、本気で考えたことありますか?
本書は、人類が生活する新たな空間デザイン構想「風の谷」を説明し、実現のための課題を明文化した本です。著者は、社会人のバイブル「イシューから始めよ」の著者である安宅和人さん。約7年以上かけてまとめあげた約1,000ページ弱の辞書本ですが、読んでいくうちに「風の谷」のイメージがどんどん浮かんできて、様々な課題の捉え方やファクトとなるデータに知的好奇心をくすぐられるので、連休中の一気読み推奨です。
ストレスなく楽しく生きたい。そして、子どもにとって暮らしやすい未来を創造したい。そのために自分にできる事は何なのか、考えさせられる一冊です。
私のコメントは言葉が拙いので、こちらの書評もご参考ください。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/94389

【国家・テクノロジー・主権を考える本】

『Tokenized Finance(IMF Note NOTE/2026/001、2026年4月)』

推薦者:Lawrence
IMF金融資本市場局長 Tobias Adrianがトークン化を「金融インフラのアーキテクチャ転換」として描いた政策ドキュメント。興味深いのはフレームの整理力(プログラマビリティ/共有台帳/決済ファイナリティの3軸、マネー3類型、シナリオ3通り、政策5本柱)とストーリーテリング。一方で「リスクが金融機関からインフラへ移る」という表現には違和感が残る。実態は両者の積み増しに近い。誰のためにトークン化を進めるのか、受益者と負担者の非対称性を考える踏み台として読むと面白い。

『テクノロジカル・リパブリック ― 国家、軍事力、テクノロジーの未来』

推薦者:Junya Hirano
本書は、Palantir共同創業者アレクサンダー・C・カープによる、国家・軍事力・テクノロジーの再接続を論じた一冊です。日本語版タイトルからも明らかなように、テーマは「国家、軍事力、テクノロジーの未来」にあります。
本書の核は、テック企業が「中立的なコンシュマー製品をつくる会社」でいる時代は終わった、という問題提起です。どの国が優れたAIを持つか、どの国が防衛技術を社会実装できるか、どの国が優秀な技術者を国家戦略の側に引き寄せられるか。結局そこが、次の時代の国力を決める。
そのためにはSNSや広告事業を作るのではなく、シリコンバレーは官民連携をしなくてはいけず、そもそもアメリカの歴史を古く遡るとそうやって国家が発展してきた歴史と重要性を説明しています。
本書の日本語版が出版されたのは最近ですが、原著は2024年末です。また本人が執筆していた時期は恐らく2023年から2024年にかけてでしょうか。それから米国の産業界は、まさに本書の通りに進んでいると思います。日本でも安全保障や産業政策を語るとき、まだどこか他人事になりがちですが、本来は投資家も経営者も避けて通れない論点です。今のアメリカのテクノロジー産業のスタンスを知るという意味で重要な書籍と思います。

『The Sovereign Individual: Mastering the Transition to the Information Age』ジェームズ・デイル・デイヴィッドソン、ウィリアム・リーズ・モッグ著/Peter Thiel 序文(2020年版)

推薦者:masao i
ビットコインカルチャーの思想的下敷きとして読まれてきたものの、実際に通読した人は意外と少ないのではないでしょうか(※2026年現在も未邦訳)。1997年刊。暗号化された電子マネーが流通すれば中央銀行・課税・福祉システムは維持不能になり、政府は人々を「税の犠牲者」ではなく「顧客」として扱わざるを得なくなる——同時期のサイファーパンクの宣言文に、政治経済的な肉付けを与えた一冊です。ただし主役はリバタリアンの「個人」ではなく、書名の「Sovereign Individual(ソヴリン・インディヴィジュアル)」と呼ばれるエリート層。Peter Thielが2020年版に自ら序文を寄せ、テック・リバタリアンの思想的参照点となっている本でもあります。
では2026年、現実はその想定通りに動いているでしょうか。個人を国家から逃すはずだった暗号資産はブラックロックのETFや企業のバランスシートに吸収され、ステーブルコインの約98%はドル連動。BISは、新興国で為替(FX)ステーブルコインが取引・価格・賃金の設定通貨になれば通貨主権が脅かされうると警告しています。書名の「Sovereign(主権)」は、本書の想定とは違う形(個人・企業・国...etc)で奪い合いになっているようにも見えます。
著者の予測は、当たったとも外れたとも言いがたい。技術は予測通りに普及した一方で、誰がその恩恵を受けるかは射程の外にありました。「何が起きたか」より「何が起きなかったか」を考える素材として、今のタイミングで読み返してみる価値があると思います。

編集後記

連休に向けた選書、いかがでしたでしょうか。
3つのカテゴリを並べて改めて気づくのは、「自分の足場をどう保つか」と「世界の足場がどう変わっているか」は、結局のところ同じ問いの裏表だということです。お金の使い方を考えることも、国家とテクノロジーの関係を考えることも、出発点は「いま自分はどこに立っているか」を確かめることに尽きます。
GWは、そういう確かめ直しに向いた数日間だと思います。何冊か手に取って、連休明けにまた次の一手を考える材料にしていただければ嬉しいです。

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。

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