Suiエコシステムの現状 Move言語レイヤー1の特徴とその課題
2024年09月23日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 導入
- Suiの概要
- Suiの現状 2024年9月
- Suiエコシステムを取り巻く環境:価格とオンチェーンアクティビティに影響を与える要因
- 総括
導入
Suiは、2022年にMetaのDiemやNoviを率いていたチームのメンバーによってハイパフォーマンスなレイヤー1ブロックチェーンとして開発され、現在そのエコシステムを拡大しています。
DeFiLamaによれば、SuiのTVL(Total Value Locked)は、2024年8月より増加傾向に転換し、2024年5月の最高水準(約7.51億ドル)に迫る約7.36億ドルにまで成長しています。これに連動するかのように、ネイティブトークンのSUIの価格も上昇傾向にあります。
本レポートでは、なぜTVLや価格がプラスに転じているのかを分析し、Suiの現状理解を深める目的で、
- Suiの概要
- オンチェーンデータを参考にしたSuiの現状
- DeFi、ミームコインやビジネスケースなどを含むエコシステムの現状
にフォーカスして解説を行います。また、これらの現状を踏まえた今後の展望について、筆者の考察を行います。
結論からいえば、Suiの技術的優位性、助成金の動向を分析するに、特にGame分野が成長領域になると考えられますが、EVMなどとの相互運用性が課題だと考えています。
SuiPlay 0X1とのハードウェア連携や、UnityやUnreal Engine向けのSDK提供により、ゲーム開発者がSui上で容易に開発できる環境が整いつつあり、成長分野のひとつとなり得ます。
しかし、Suiはすでに大きなユーザーや開発者、資産を抱えるEVMチェーンやSolanaなどとの互換性がなく、開発者の参入には技術的なハードル、資産移動、流動性のハードルも存在します。筆者は、今後の成長を加速させるには、Suiの独自エコシステムの発展はもちろん、”相互運用性の強化”を通じた資産・開発者・ユーザーの誘致が重要だと考えてます。
読者は、Suiがどのようなブロックチェーンなのか、現状何が起きているのか、今後どのような成長余地が考えられるのかをこのレポート一つで理解を深めることができるはずです。
Sui基本情報リンク
- 公式サイト:https://sui.io/
- ドキュメント:https://docs.sui.io/
- Xアカウント:https://x.com/SuiNetwork
Suiの概要
Suiは、高いスケーラビリティと柔軟なユーザー体験を重視したハイパフォーマンスレイヤー1ブロックチェーンです。2023年5月にメインネットローンチされ、Suiの開発を主導するMysten Labsは、2022年に3.36億ドル、2023年に約5430万ドルの資金を調達しています。投資には、a16zcrypto、FTX Ventures、Binance Labs、Coinbase Venturesなどが参加しています。
Suiの技術的特徴について、主な点を簡潔に列挙します。
- 非EVM互換のブロックチェーン:アプリケーションの開発にはSuiに対応したMoveを用いる
- Sui Move:Metaが開発したプログラミング言語Moveを改良したSui Moveは資産をより安全に管理し、オブジェクト指向の考え方で効率的に資産を操作できるよう設計されている
- コンセンサスメカニズム:DPoS(Delefated Proof of Stake)ですが、NarwhalメモリプールとBullsharkプロトコルなどを活用してトランザクションの順序付けと承認を効率化している
- オブジェクト指向データモデル:資産や取引をオブジェクトとして扱い、並列処理を可能にすることで、より効率的にトランザクションを処理する仕組み
- Mysticeti:バリデーターのCPU負荷を軽減して理論上毎秒数万件の処理ができる
- ストレージファンド:オンチェーンデータの保存コストを補償するためのストレージファンドがあり、バリデーターの負担を軽減する仕組み
- zkLoginとスポンサー付きトランザクション:Googleアカウントなどでウォレット作成でき署名できる、ガス代をユーザーに負担させない仕組みもある
- Sui Kiosk:Sui上で商取引をサポートするシステムであり、ユーザーや開発者が商業取引を行うアプリケーションを展開しやすくするために設計
などの特性を持っているとされます。コンセンサスメカニズムなどの技術的詳細については、以下の関連レポートに詳しいです。
関連レポート:非同期で高速なL1チェーンを目指すSuiの概要
SUIトークンエコノミクス
SUIトークンは、Suiでのガス料金の支払い、ネットワークのセキュリティ確保、オンチェーン流動性の提供、ガバナンスなど、Suiにおいて重要な役割を果たすネイティブトークンです。
トークン供給量は、SUIトークンの総供給量は100億枚に固定されています。2023年5月3日のローンチ時には総供給量の約5%が市場に流通しました。残りのトークンは、計画的に徐々に市場に放出される予定です。
トークン供給量は、SUIトークンの総供給量は100億枚に固定されています。2023年5月3日のローンチ時には総供給量の約5%が市場に流通しました。残りのトークンは、計画的に徐々に市場に放出される予定です。
供給量の50%以上はCommunity Reserveとして確保されており、Sui Foundationによって管理されています。このリザーブは、Suiエコシステムの成長のために、開発者助成金プログラムやバリデーターの運営に必要な初期コストのカバーに活用されている、とのことです。
Suiの現状 2024年9月
Sui価格とデイリーアクティブアドレス
青色はSui価格、オレンジ色がデイリーアクティブアドレスを示しています。2024年6月から8月までは下落して底になり、8月下旬からは急激に価格上昇して1ドルで推移し、9月移行さらに上昇をはじめています。
一方、アクティブアドレスは、Suiの価格と従来まで相関がありませんでしたが、9月移行のSui価格上昇に合わせてアクティブアドレスが増加しています。
Sui価格の下落と上昇、アクティブアドレスの増加の要因には、複数の要素が考えられると思いますが、筆者の予測では、
- GrayscaleのSui Trust(投資信託)の発表→Sui価格に影響
- Suiでのミームコイントレーディングの流行→Sui価格、アクティブアドレスの上昇に影響
が背景にあるのではないかと考えています。上記2点の詳細については後述します。
TVL(Total Value Locked)と収益(Revenue)
緑色はSuiのTVL、赤色は収益(ユーザーが支払ったトランザクション手数料からプロトコルが得た額)の推移を示しています。8月以降の収益は日次で1,300-1,500ドルで安定しているように見えます。収益の下落から2週間後あたりでTVLが底を突いています。
以下の図はTVLとSui価格の推移を示しています。因果関係は今のところ不明ですが、少なくともこの3ヶ月間を見ると9月1日付近を除きTVLとSui価格の間には強い相関があることが分かります。
以下では、ここまで紹介したオンチェーンデータを裏付けるであろうイベントの詳細を解説します。
Suiエコシステムを取り巻く環境:価格とオンチェーンアクティビティに影響を与える要因
本節では、Sui価格やオンチェーンアクティビティに影響を与えているであろう環境を理解すべく、要因と現状の解説を行います。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。