オンチェーン分析ツールNansenの概要
2022年02月24日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- Nansen全体の概要
- 各機能の説明
- 総括
前提
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本レポートではオンチェーン分析ツールを提供するNansenの概要と機能、具体的な用途について説明します。透明性を重視しているクリプトの世界では、ソースコード、トランザクションなど様々なデータが公開されています。そのためにオンチェーンデータを分析するサービスが複数登場しています。Chain Analysis、Glassnode、Dune Analyticsが挙げられますが、それぞれ異なる特徴で差別化しています。
- Chain Analysis:ダークマーケット等の犯罪者のアドレスをラベリングし、政府機関、金融機関、取引所などに使われています。The DAOの追跡でも話題になりました。
- Glassnode:各暗号資産のアドレスの通貨保有数、取引所のFR(Funding rate: 新規調達率)、マイナーの動向などをまとめています。無料でも使えますが、有料プランのランクごとに閲覧できる指標が異なります。
- Dune Analytics:各クリプトプロジェクトの情報を提供する、APIとグラフ化ツールのサービスです。上記2つと異なるのはDune Analyticsはフリーで、誰でもダッシュボードを作成できます。
これらに対してNansenは、アドレスにVCやクジラと呼ばれる大口保有者の情報をラベリングしています。またNFTの情報にも特化しており、VCや大口の動向をウォッチして通知を出し、個人の投機に便利なサービスです。このNansenの概要だけでなく、投機への使用例も含めて説明します。
Nansen全体の概要
Nansen社について
Nansen社は2020年に設立されたまだ新しい会社です。2021年6月に1,200万ドル、12月に7,500万ドルの調達を行っています。名前の由来はNansen社のバリュー(透明性、勇気、好奇心、スピード)を体現している、ノルウェーの冒険家であるフリチョフ・ナンセン氏から取られています。
Nansenの強みは様々なアドレスにVCやクジラのラベル付けを行っている事です。このラベル付けですが、独自のアルゴリズムとスマートコントラクトの解析、またインセンティブを設けて一般からの報告で行っています。
DAO的なコミュニティの活用
またNansenはスカウトやアンバサダープログラム等を活用してプロダクトを強化しながら、なおかつ強固なコミュニティを作成しています。Nansenはツールとしては少し複雑で、各ツールの使い方はわかっても有効な活用法を考えるのが難しいです。またアイコンや名称も多いために指標の理解も難しい部分があります。これらの外部の協力者がDAOの貢献者の様にユーザーをサポートしています。彼らはその見返りとしてNansenを無料で使えたり、他にもWalletの紐づけを手伝う事で給与を得たりしています。
料金プラン
Nansenのツールは有料で、料金プランはStandardプランが1か月$149、3か月$399、年間$1,400となっています。もう一つ上にVIPプランがあり1か月$1,490と高価ですが、Hot Contract等を使う事ができ、注目されているトークンセールや流動性プールを見つける事ができます。またStandardプランの体験版を9ドルで1週間使う事ができます。
各機能の説明
Nansenの特徴は大口ウォレットのラベリングです。ラベリングは裏付けが取れているものはAlameda ResearchやParadigm Capital等のVCや、Justin Sun氏などの個人にSmart moneyという名称でカテゴライズされます。
またラベルが特定されていない場合は、Flash botを使って利益を稼ぐFlash Boy、DEXに流動性を提供している大口のLP、NFTで利益を稼ぐNFT Traderに大きく分類されています。(他にも細かい分類はありますが割愛します。)
これらのラベリングを使った4つのダッシュボードで大口の動向をウォッチできます。その詳細を説明します。
Smart Money
Smart moneyでは、3つのダッシュボードが含まれており、ラベルされたウォレットの全体像をウォッチできます。まずToken Holdingでは各関係者の保有しているトークンの金額を把握できます。
DEX Tradesはラベル付けされたウォレットのDEXでの取引がリアルタイムに表示され、Transactionでは全てのTxが表示されています。これらの動作をSmart Alertという機能で条件を設定する事で、Telegram / Discord / Slackで通知を出す事ができます。
他にもVCのステーブルコイン保有量の推移を今後の相場の指標にするなど、様々な使い方ができます。
Token God Mode
Token God Modeでは、特定の通貨に関する動向をウォッチできます。中にはExchanges、Notable Wallets、Hodlers、Tradesの項目があります。
例えばExchangesではそのトークンの取引がCEXとDEXも含めた主要な取引所の取引量を、時系列でグラフを使って比較できます。これによりトークンの動きをより詳しく知る事が可能です。
Notable WalletsではラベリングされたWalletで、保有量やその変化でソートする事ができます。Looks Rareの$LOOKSを例にとると、ローンチ後にAlameda Researchの保有量が大幅に増加していた事が分かりました。そこでAlamedaのウォレットの$LOOKSの移動にAlertを付けて自分も$LOOKSを保有し、彼らの動向をウォッチしながら売買タイミングの決定ができます。
NFT Paradise
上記の機能をNFTに適用したのがNFT Paradiseです。ここではMarket Overview、Mint Master、Nansem Bluechip Index、NFT Smart Moneyの4つのダッシュボードを見る事ができます。
ここでは2022年2月7日にPublic Saleがあった、CensoredとPixelmonを見てみましょう。Mint Masterのダッシュボードを見ると、NFTのMintに関する情報が並んでいます。ここでは直近24時間のMinting Volume(ガス代を含む)を見るとPixelmonが最も高く、Smart Mintersを見るとCensoredが高くなっています。
SensoredはPak氏によるNFTで、制限時間まで誰でも何個でもMintする事ができます。それに比べてMinting Volumeの高いPixelmonは、Mint時にガス代が高騰してVolumeも高くなっている可能性があります。ここでPixelmonをクリックして詳細を見てみましょう。
まずSmart Money Buyingを見ると、ラベリングされているNFTのクジラたちがPixelmonをどのように購入しているかが時系列で分かります。すると2月7日の21時までに集中的に1ETH以上で購入されている事が分かります。
次にTop 5 Addresses Buyingを見てみましょう。するとLegendary NFT Collectorが数多く購入している事が分かります。このLegendary NFT Collectorは、ERC721のTransactionで上位0.1%に含まれるWalletです。
次にこのLegendary NFT Collectorをクリックして詳細を見てみましょう。するとCloneXやAzukiを中心に、今までにNFTの売買で150ETHの収入を得ている事が分かりました。このウォレットはPixelmonを50体保有しており、値上がりを期待している可能性があります。彼の動向を真似てPixelmonを購入するかの検討材料とする事ができます。
総括
本レポートではオンチェーンデータを利用して様々な分析に利用できる、Nansenの概要を説明しました。Nansenは様々な分析材料を提供してくれますが、そのデータをどうやって活用するかは利用者次第です。オンチェーンデータに興味がある、またはデータ分析が好きな人には向いているツールです。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。