リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2025年10月31日号
2025年10月31日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- 今週1週間分のニュースを紹介
- ▍1kxレポート|オンチェーン収益が200億ドル規模に拡大、DeFiとアプリケーションが牽引
- ▍AIエージェント決済・協調プロトコル競争の夜明け
- ▍エアドロップポイントの金融化:ポイント市場の台頭
- ▍Virtuals、ブロックチェーン、AI、ロボティクスを統合し「aGDP」経済圏を構築
- ▍MetaDAO、Futarchyを活用した「脱ラグプル」型資金調達モデル
- ▍EthenaのUSDe、市場ストレスに耐える合成ドルのメカニクス
- ▍クリプト・ネオバンキングが主流化、自己管理型金融の台頭
- ▍DeFiの進化:トークン、プール、ヴォルトによる資本効率の最大化
- ▍Mastercardの裏側で進む金融革命:ステーブルコインがカード決済の基盤に
- ▍RWA市場が320億ドルを突破、DeFiとの統合が加速
前提
本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。
また、本シリーズは今週1週間分のニュースをまとめたものになります。リアルタイムで情報をキャッチアップしたい方は、「HashHub Research ニュース」をご利用ください。
今週1週間分のニュースを紹介
▍1kxレポート|オンチェーン収益が200億ドル規模に拡大、DeFiとアプリケーションが牽引
概要
2025年のオンチェーン経済は「手数料=売上」を軸に成熟局面へ入り、年間手数料は1.98兆円規模(約198億ドル、Q3時点年換算)に拡大しています。起点は価格上昇だけではなく、基盤技術の効率化で取引コストが大幅に下がり、アプリケーション層の収益化が本格化したことにあります。分散型金融が主役に返り咲き、トークン保有者への価値分配も過去最高を更新しています。
2025年のオンチェーン手数料規模
2025年は前年比で約35%増の約198億ドルに達し、2021年ピーク比ではまだ18%低いものの、上半期だけで97億ドルと過去最高の上半期になりました。2020年比で10倍超の伸びとなり、年平均成長率は約60%です。時価総額と出来高の回復に加え、手数料低下が利用拡大を強く後押ししています。
なぜユーザー支払手数料が重要か
手数料は「ユーザーが繰り返し支払う価値」を示す最も明確な指標で、投資可能なアセットクラスとしてのトークンを見極める基礎情報になります。規制整備が進むほど、継続的に手数料を稼ぎ分配できるプロトコルが選別されます。現在はオンチェーン手数料の8割超をトークン化プロトコルが稼ぎ、グローバルで許可不要の投資アクセスを提供しています。
セクター構図の転換
2025年H1の手数料97億ドルのうち、約63%をDeFi/金融アプリが占め、ブロックチェーン基盤は22%、ウォレット8%、コンシューマ6%、DePINとミドルウェアが各1%という構図です。2021年に56%だった基盤側の比率は2割未満へ低下し、アプリ層が過去最高の手数料を更新しています。
技術効率化がアプリ成長を解放
平均トランザクション費用は2021年後半比で約86%低下し、特にイーサリアムのスケーリングとL2普及が寄与しています。これによりL1/L2合算の1日トランザクションは約2.7倍に増加し、月次アクティブウォレットは約5.3倍の2.73億に拡大しました。手数料を稼ぐプロトコル数は2021年の125から2025年H1には969へ増え、新規の中ではDePINやコンシューマ系の収益化が目立っています。
トークン保有者への価値分配
買い戻しやバーンなどのネット分配は直近3四半期連続で過去最高圏となり、2025年Q3は約19億ドルに達しています。2021年当時はインセンティブ支払いが重く純分配は伸び悩みましたが、2025年は報酬過多を是正したアプリが分配の大半を牽引しています。
手数料のドライバー
価格水準との相関は依然大きい一方で、因果の様相はセクターごとに異なります。DeFi/金融は2022年以降、手数料の変化が時価総額に先行する傾向が強まり、基盤側はコスト低下の影響が増しています。パーペチュアルやDEXは競争でテイクリートが圧縮され、レンディングは利用率とレート設計が決定要因になります。実体サービスを提供するDePINは価格感応度が相対的に低い傾向です。
代表的な構造変化の例
イーサリアムは2021年後半に63億ドルの手数料を記録しましたが、2025年上半期は価格と出来高が近い水準でも平均手数料が約95%低下し、ドル建て収入が大幅に減少しました。その一方でバリデータ報酬は約90%縮小し、トークン供給は安定しています。DEXではユニスワップのドル建て手数料が前年同期比で18%減少し、低料率プールへのボリューム移行が主因です。他方、ソラナ上のメテオラやレイディウム、BNB側のパンケーキスワップはボリューム増で成長しました。
首位集中と入れ替わりの速さ
上位20プロトコルが手数料の約7割を占める一方で、四半期ごとに最大4分の1が入れ替わります。ソラナ系DEXや新興のパーペチュアル、ローンチパッド、トレーダー向けインターフェースが短期間で億ドル規模に到達する一方、老舗でもシェアを落とすなどダイナミックな循環が続いています。
バリュエーションと手数料の乖離
評価は依然として基盤側に偏り、分析対象の時価総額1.2兆ドルの9割超をブロックチェーンが占めています。結果として、完全希薄化時価総額を年率手数料で割ったP/F倍率はL1中央値で約7,300倍、アプリ層は十〜数十倍台が中心という大きな乖離が常態化しています。手数料成長が著しいDeFiに対し、評価は相対的に抑制的です。
次の成長波
トークナイズドRWAは規模こそ小さいもののAUMが倍増し、Q3のオンチェーン手数料は前年同月比で約50倍に拡大しています。DePINはGPU計算や分散インフラの商用化が進み、年率で約5倍の伸びを記録しています。ウォレットやUIはスワップ手数料で収益化し、ファントムやコインベースウォレットが台頭しています。コンシューマ領域ではローンチパッドが高収益で、Pump.funが象徴的存在です。
2026年の見通し
規制の追い風を前提としたベースケースでは、2026年のオンチェーン手数料は320億ドル超で前年比約60%増となる見込みです。伸びの大半はアプリ層が担い、基盤側は効率化による単価低下が継続する一方、ボリューム増と相殺され横ばいが想定されます。ウォレット、コンシューマ、RWA、DePINなど新顔の収益寄与が拡大し、分配もアプリ主導で進む見通しです。
統制の整う規制環境
欧州のMiCAや米国の法案・ルールメイキング志向などにより、価値分配やトークナイズド商品の扱いが明確化しつつあります。トークン化ファンドやトークン化株式、清算機関のトークン化構想、DAT企業の台頭などを通じ、伝統金融の大口フローがオンチェーンへ接続し始めています。
結論
2025年の手数料データは、オンチェーン収益の重心が「基盤からアプリへ」移り、投資可能性と透明性が両立する成熟段階に入ったことを示しています。手数料と分配は実体価値の核心であり、とりわけDeFiでは手数料が評価に先行する局面が強まっています。2026年に向けては、アプリ層のスケールと規制整備が収益と分配をさらに押し上げると考えられます。投資家の皆さまは価格だけでなく、手数料と分配のファンダメンタル指標に一段と注目すべき局面だといえます。
▍AIエージェント決済・協調プロトコル競争の夜明け
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