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数式なしで理解するBittensor(TAO)|LLMのスケーリング限界を超える、AIとブロックチェーンの未来

2024年10月16日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • AI開発における課題
  • Bittensorの仕組み
    • Bittensorのアーキテクチャ
  • TAOトークンによるインセンティブ設計
    • トークノミクス 
    • インセンティブ設計 
  • Bittensorを支える技術
    • Tensorの標準化
    • Conditional Computation(条件付き計算)
    • Knowledge Extraction(知識抽出)
  • 課題
  • 将来の展望・考察
    • ビットコインとの類似による期待
    • zkMLとは異なるアプローチ
    • 考察:スケーリング則を抜け出しつつあるLLMと、異なるモデルのコラボレーション
  • 総論

前提

Bittensorは、ブロックチェーン技術を基盤に、複数のAIプラットフォームを接続することで、コンピューティング、データ、ストレージ、予測、モデルなどのデジタルリソースを分散化することを目指すプロジェクトです。このプロジェクトは、AI技術とブロックチェーンを融合させ、従来の集中型モデルとは異なる新しい分散型AIエコシステムを提供しています。
Bittensorは近年注目を集めており、検索頻度の増加や長期的なトレンドが確認されています。特に、2024年9月における検索トレンドの中でも、注目される暗号資産の一つとして取り上げられています。
【参考レポート】
Bittensorの特徴は、機械学習モデルを公開することなく、それらのモデルが正しく動作し、期待される出力を提供していることを保証する仕組みを備えている点です。これを実現するために、Bittensorはブロックチェーン特有のインセンティブ設計を利用しています。本レポートでは、Bittensorがどのようなインセンティブ構造を用いてこの仕組みを実現しているのか、その技術的背景や今後の展望について紹介します。
また、Bittensorの仕組みは一見複雑に見えますが、本レポートでは数式を用いず、シンプルな形でそのメカニズムを解説し、その将来性を考察します。

AI開発における課題

従来の機械学習技術は、特定のニッチな分野にしか適用できず、広く評価されることが難しいという課題がありました。しかし、最近では、巨大なデータセットから学習することで多様なタスクに対応できる、LLM(大規模言語モデル)などの技術が登場し、AIの開発コストが大幅に上昇しています。結果として、こうした技術は大企業が独占する傾向にあり、一般的な用途向けのAIシステムが中心となっています。
Bittensorは、こうした現状に対して次の3つのタイプのAIシステムに対応することで、新しい価値創出の機会を提供します。
  1. 広範な目的に適用可能なもの
  2. 独自の価値を生み出すようなレガシーシステム
  3. 小規模でニッチな分野に適応可能なシステム
これらすべてのシステムに対して、適切な報酬が得られる仕組みを構築することを目指しています。
しかし、問題となるのは、機械学習のモデルやそのパラメータが一般に公開されてしまうと、そのモデルが誰でも利用できる状態になり、商業的な価値が失われることです。では、Bittensorはどのようにしてモデルを公開せずに、その性能を評価し、報酬を与える仕組みを実現しているのでしょうか?
次の章では、Bittensorの技術的な仕組みについて詳しく見ていきます。

Bittensorの仕組み

Bittensorのアーキテクチャ

https://docs.bittensor.com/learn/introduction



SubtensorとSubnet

  • SubtensorはBittensorの基盤となるブロックチェーンであり、AIタスクの結果を安全かつ透明に記録します。Subtensorは、ネットワーク上で競争市場を形成し、許可なしで参加できる分散型のインセンティブシステムを提供します。これにより、参加者は公平に評価され、不正行為や市場操作にも強い仕組みが実現されています。
  • SubnetはAIモデルを分散処理するための小規模なコミュニティであり、特定のAIタスク(例:テキスト生成や画像認識など)に特化しています。各サブネットは独自のインセンティブメカニズムを持ち、参加者はAIタスクを解決するために競い合います。これにより、サブネット内で最適なモデルが評価され、適切な報酬が与えられる市場が形成されます。

MinerとValidator

  • Minerはサブネット内でAIタスクを実行し、必要に応じてAIモデルを提供する役割を担います。Minerは、例えば画像認識や自然言語処理などの特定の課題に対してAIモデルを動かし、タスクを解決します。その成果に基づいて、TAOトークンという報酬を受け取ります。これにより、AIタスクの解決に貢献することでインセンティブが与えられる仕組みです。
  • Validatorは、Minerが提供したAIタスクの結果を評価する役割を果たします。彼らは、Minerが出力した結果の品質や精度を確認し、それに基づいて採点します。Validatorの評価に基づき、高品質な結果を提供したMinerにはTAOトークンが分配されます。Validatorの意見は、BittensorのYumaコンセンサスメカニズムを通じてネットワーク全体で集団的に取り入れられ、AIタスクの評価が透明かつ公平に行われます。

Yumaコンセンサス

  • Yumaコンセンサスは、Bittensorにおけるハイブリッドな合意形成アルゴリズムで、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)とPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を組み合わせた仕組みです。PoWは、Minerが計算リソースを提供することにより機能し、PoSはValidatorがステーキングしたTAOトークンに基づいて評価を行います。このハイブリッド構造により、ネットワークの分散性と安全性が確保されます。

TAOトークンによるインセンティブ設計

Bittensorでは、機械学習モデルが正しく動作し、正しく検証されていることを、インセンティブを通じて保証しています。従来のブロックチェーンでは、モデルを公開し、各ノードが実行することでその正確性を確認できますが、モデルのパラメータを公開すると、誰でもそのモデルを自由に利用できてしまいます。また、ノードにかかるコストや負担も大きくなるため、現実的ではありません。そこで、Bittensorでは、モデルによる出力をブロックチェーン外で評価し、インセンティブを活用して正しい出力が提供されていることを保証しています。
この仕組みは、主にSubnet内のMinerとValidatorが担う役割に基づいています。BittensorのYumaコンセンサスはステークと重みづけを用いて報酬を分配しますが、インセンティブ設計を考える際には、Yumaコンセンサスはブラックボックスとして捉え、Subnet内でのMinerとValidatorの動きに焦点を当てます。 
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