Web3の片鱗(4)|アテンションエコノミーと動機の単純化が産んだ「記憶の代替装置」~Web3サービスの短命さを克服する〜

目次

  • 前提
  • アテンションエコノミーと動機の単純化が産んだ「記憶の代替装置」
  • 余談ですが、次のサイクルまで「生き残っていない」「生き残っている」Web3プロジェクトとは
※「Web3の片鱗」シリーズはレポートではなく、Web3界隈の断片的な気づき(結論のない、so,what/だから何)を記したエッセイです。

今回の「Web3の片鱗(4)」では【資本と労働の一致を前提とするモデル】を前提にアテンションに焦点を当て、所謂アテンションエコノミーと今のWeb3のアテンションエコノミーの相違点に触れていきます。「ほとんどのWeb3プロジェクトは次のサイクルにはいない」といった定説に対する筆者の解釈を示し、また余談としてそれとは逆に「生き残る可能性があるWeb3プロジェクトとは何か」を後半で述べたいと思います。Web3事業の短命さを克服しようと考えるWeb3事業者や中長期投資を目的にWeb3サービスを探す投資家の方々の参考になれば幸いです。

前提

草創期の華為(ファーウェイ)は一種の海賊文化を取り入れて躍進を遂げたという話は、田濤著「最強の未公開企業 ファーウェイ: 冬は必ずやってくる」に詳しい点です。

華為の海賊文化とエクイティの代替としてトークンを用いるDAOには共通項があると筆者は認識しており、前者は株式を、後者はトークンを用いているものの、それらの流動性を用いて「資本家と労働者の境界を曖昧する」という点では類似しています。そうであるならばエクイティの代替としてトークンを用いるDAOもまた海賊文化、つまり山分け文化であると言っても過言ではないとも思います。

ただ、幾つかの点で相違点もあり、例えばパーミッションレス性という観点では、ヒトは土地に束縛されているわけでもなく仮想空間を自由に行き来ができ、加えてインターネットスケールで海賊を組成できるという点はDAOがもたらす新たな利点だと言えます。

ただその一方でその利点はインターネットスケールでの資本の流動性向上とも言えますから、より魅力的な、注目を喚起する報酬を謳う他所の共同体(海賊船)へ資本(ヒト、カネ)を容易に流してしまうという組織としての脆弱な側面を表しているようにも思います。資本の流動性向上は悪いことではない、はその通りなのかもしれませんが、その主張はその帰結を理解した上での主張か否かでその意味するところは変わります。

Earnが示すPMFとは

P2EゲームをはじめとするEarn(稼ぐ)を軸にしたWeb3を「資本家と労働者(ユーザー)の境界を曖昧する」ものと定義するならばそれらのProsConsは以下のように言い表せます。
  • Pros:イノベーションのジレンマを解消する
  • Cons:資金調達の成功をPMFと錯覚させる
Prosはイノベーションのジレンマを解消できることだと言えます。Web3をはじめとする黎明期のテクノロジーは「過度な期待」と「過度な幻滅」のサイクルを短期間で繰り返しますから、その未来の市場規模を予測することは困難であり、幻滅期には予想できない未来に対して赤字を垂れ流す覚悟を必要とします。

このような予測困難な事業は組織が大きくなり、信用とブランドを確立されるほどにそこに挑戦するインセンティブが相対的に低くなりますから、新たなイノベーションの採用は難しくなります。それに比べて DAOは海賊船のようなものですから、そこに宝がありそうだという情報で期待を煽り、資金を集めて船を漕ぎ出すことができるのはその利点だと言えるでしょう。
一方で「稼ぐ」という動機の単純化とアテンションエコノミーが融合した時、それは想定外の結果をもたらすこともあるのではないか、そのように感じることがあります。それは例えばPlay to Earn(稼ぐために遊ぶ)ゲームがアクティブユーザー数という数字の上ではPMF(プロダクトマーケットフィット)しているように見えても、実際はソーシャルゲーム以上に短命なプロダクトであることも度々で、果たして本当にゲームとしてPMFしているのか否かは不明です。

このことは、その数値がユーザー数ではなく投機家数をほぼ示すものであり、新たなゲームデザインとしてのPMFしたことを示すわけではなく、資金調達に成功した程度のことしか示していないことを暗示しているのではないかと筆者は感じています。

稼げることが人を夢中にさせることは確かですが、この点で誤解してはいけないことは多くのP2Eゲームはパチンコや賭博、その他継続的にユーザーを夢中にさせる「確率的なゲームではない」ということです。パチンコが飽きない日常のエンタメになり得るのは昨日はハズレでも今日はアタリがでるかもしれないと常に期待値を更新し続けるゲームだからです。P2Eゲームでの勝率はマクロ、ミクロレベルの外的要因に左右されますから確率よりもトレンドの影響をより強く受けます。この意味でクリプトパチンコと形容されるP2EゲームはBullで夢中になり、Bearで飽きるゲームですからパチンコとは別物であり、それゆえに日々のエンタメにはなり難いのです。この点にPay to Win(札束で殴る)要素があると確率的ゲームとしての面白さはさらに失われますから、この寿命の短命さに拍車をかけます。

ただ、このように「稼げる」をベースにしたWeb3のConsと見られる側面は本当にConsなのか否か、は短命を前提とするのであればConsとは言えません。それはただ以下のようにPMFしていることを表しているだけだと言えます。
  • プレイヤー間のヒエラルキーや外因のトレンドを読んでパイを奪い合うコンテンツ(リアルな情報サバイバルゲーム)としてPMFしている
以上の意味ではコミュニティ形成して徒党を組むのは談合的な一つの処世術ですし、ハッキングはチートではなく弱点をつく立派な戦術です。

しかし、もし「より持続可能な」「より秩序ある」を形容する生態系構築を目指すのであれば、その場合には以下の措置をとる必要はあるでしょう。
  1. 資本と労働の一致を前提とするモデル】の場合
    金銭的価値から非金銭的価値にユーザーの動機をシフトさせる

  2. 【資本と労働を緩やかに切り離したモデル】の場合
    金銭的な価値による資金調達と非金銭的価値によるゲームデザインをゆるやかに切り離した状態でWeb3サービスを構築する
1.はStepnが目指した手法と言えます。しかし、実用的価値(儲かる・役立つ)>感情的価値(共感、ポジティブな)>社会的価値(世の中にとってプラスな)という動機の序列を仮説として立てられるのであれば、より強い動機をより弱い動機にすり替えるのはなかなか容易ではありません。この点は今後のStepn、または今後のStepn後継モデルによる社会実験として模索される点でしょう。この点は「STEPNはどうすればよかったのか -Axieと比較し今後のGameFiに活かすケーススタディ-」をご参考ください。

2.はいわゆるPlay and Earn(遊びと稼ぎの両立)モデルを指し、例えばFree To Playモデルもその一つと言えます。この点は「Play to Earn(P2E)ゲームのビジネスモデルを考える|有料プレイモデルと無料プレイモデル「EmberSword」の特徴」をご参考ください。

1.【資本と労働の一致を前提とするモデル】の短命さを克服するには


アテンションという言葉は即時的なものを連想させますが、実際のアテンションエコノミーは段階的なアテンションを利用して粘りを演出し、中長期的な持続性を得ます。しかし、Web3に現れたアテンションエコノミーはそれとは少し違う、些か刹那的なアテンションであるように筆者には思える時があります。
今回の「Web3の片鱗(4)」では上記の1.【資本と労働の一致を前提とするモデル】を前提にアテンションに焦点を当て、所謂アテンションエコノミーと今のWeb3のアテンションエコノミーの相違点に触れていきます。「ほとんどのWeb3プロジェクトは次のサイクルにはいない」といった定説に対する筆者の解釈を示し、また余談としてそれとは逆に「生き残る可能性があるWeb3プロジェクトとは何か」を後半で述べたいと思います。

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