2025年8月、プライバシー重視型暗号通貨として知られるMonero（モネロ）が、これまでにない深刻なセキュリティ問題に直面しています。

IOTA共同創設者セルゲイ・イヴァンチェグロ氏が率いるQubic社が、Moneroネットワークのハッシュレートの51%以上を支配したと発表し、ネットワークの分散性や安全性に対する懸念が一気に高まりました。本記事では、この事件の概要と詳細、そして今後の暗号通貨業界への影響について解説します。

Qubic社は2025年8月、Moneroブロックチェーンのハッシュレートの過半数を掌握したと発表しました。ハッシュレートとは、ブロックチェーンの取引検証に使われる計算能力の総量を指し、これを51%以上支配することで、取引履歴の改ざんや二重支払い、取引の検閲など、ネットワークの信頼性を根本から揺るがす行為が理論上可能となります。

Qubicはこの行動を「戦略的実験」と位置付け、経済的インセンティブと独自のマイニングモデルを駆使し、他のマイニングプールからマイナーを自社に引き寄せることに成功しました。その結果、わずか数カ月でハッシュレートシェアを2%未満から一気に51%以上へと拡大させました。

Moneroは従来、ASIC（特定用途向け集積回路）によるマイニングを抑制し、CPUによるマイニングを促進するRandomXアルゴリズムを採用してきました。これはネットワークの分散化を維持し、単一主体による支配を防ぐための設計でした。しかしQubicは、マイニング報酬をUSDT（米ドル連動型ステーブルコイン）に変換し、その資金で自社発行のQUBICトークンを購入・焼却する独自の仕組みを導入。この仕組みにより、他のマイナーに高い収益性を提示し、急速に勢力を拡大しました。

Ledger社CTOのシャルル・ギルメット氏は、「この攻撃の維持には1日あたり7,500万ドルものコストがかかる」と指摘し、ネットワークへの信頼失墜の危険性を警告しています。またBitMEXリサーチは「Qubic社はMoneroの全ブロック報酬独占を目指しているが、実現可能性は不透明」とコメントしています。
参考：Monero’s 51% Attack Problem: Inside Qubic’s Controversial Network Takeover

さらにQubicの過半数支配を阻止しようと、DDoS攻撃が行われ、周辺サービスの一部が1週間以上にわたり混乱しましたが、ネットワークの中核自体は維持されました。Qubic側は「Moneroを破壊する意図はなく、経済的インセンティブと協調的なマイニング戦略の実験」と説明しています。

参考：Qubic Performs 51% Monero Network Takeover Demonstration